6
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空間を転移しながらヴァルドにたどり着いたルーチェは、直接ヴァルド城内につながる経路の一つ手前、もう一ヶ所だけ経由する方法を選ぶ。
「そこ」に降り立った時、目の前にあったのは──予想通りの、円状に焼け焦げ消失した、更地だった。
衝撃を免れた樹の枝に引っ掛かった小さな小さな紫の布を、そっと手に取る。
「馬鹿ね」
きらきらと光る小さな欠片は、自分と繋がっていた、紅い飾り玉なのだろう。
あの子の淡い紫の髪に、融和していた紅い色。
「──それで良かったの? シア……あんたは、怖がりなくせに」
ルーチェは、手のひらの布切れを、乾いた土に埋めた。
「あんたは、ここに、生きていたわ。ちゃんと、ね」
別れを告げるように、土の表面に指先で触れる。
まだ、やらなければならない仕事が、たくさんある。
その前に、どうしてだか、ここに寄りたかった。
何かを振り払うように頭を振って、ルーチェはゆっくりと立ち上がる。
強く微笑み、ヴァルド最上階を目指して、転移の指標を定めた。
「──さて、と」
くるりと、槍が回転する。
迷いなく振るわれた移転の合図に、どこからか、きらきらした声が降った。
(ありがとう)
その声に振り返ることなく、ルーチェは転移空間へと足を踏み入れる。
苦い笑みが、浮かんでいた。
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