第十四話 エルフさんに事情を聞いてみた
「先ずは自己紹介からさせていただきます、私の名前はレイラ、レイラ・エル・ユグドラシルと申します」
「私の名前はヤオと言う」
ハイエルフは自らをレイラと、ダークエルフはヤオと名乗って優之介達に自己紹介した。
(((ん? エル・ユグドラシル……?)))
優之介、斬波、レミリアはレイラのミドルネームとファミリーネームを聞いて何か違和感を感じた。どこかで聞いたような……と記憶をたどった三人、一番早く思い出したレミリアがレイラにある疑問を投げかけた。
「あの~……レイラさんはララノアさんって方はご存知ですか?」
「私の知ってるララノアは冒険者ギルドのグランドマスターをしていて、私の従姉妹にあたる人物ですね。えっと……」
「あ、私はレミリア・ソヘルといいます、レミリアと呼んでください。そしてこちらがユウノスケさんとシバさんです」
「優之介です」
「斬波だ」
三人の予想通り、レイラはララノアの親戚だったようだ。しかし三人がララノアと会った時、彼女の耳がエルフ特有の尖った耳ではなかったことを指摘すると、レイラは「ララノアの魔法で幻を見せているのでしょうね」と答えた。優之介と斬波が「「エルフ耳でもいいのに……」」と呟くとレミリアのクラウディアの眼光が鋭くなったので、これ以上は何も言わなかった。いや、言えなかった。
優之介達が自己紹介をした流れでクラウディアも自己紹介をし、事情聴取に取り掛かった。
「簡単で良いので事情聴取をさせてもらいます。どういった経緯で亡霊盗賊団に捕らえられていたのでしょうか? ジャネットは『封印を解く為に誘拐した』と言っていましたが……」
「……先ずはあのドラゴンの悪行から説明しましょう。今から百五十年程前の事、あのドラゴンはここから北西にある魔族領域からこのエルの大森林にやって来たのです」
百五十年と言う年数に”程”を付けるくらい、エルフの寿命は現代におけるファンタジー知識通り相当長いようだ。
レイラの証言では、野郎二人が倒したワームドラゴンは百五十年前に何の前触れもなくエルの大森林に飛来し、木々や動植物を荒らして回った為、当時のエルフたちで追い払うか討伐しようとしたが歯が立たず、大掛かりな魔法で無理矢理封印するので手いっぱいだったらしい。
「あのドラゴンの封印を解くには私とヤオの血、そして大量の魔力が必要です。盗賊がどこでこの事を知ったのかはわかりませんが、あのドラゴンが再び暴れたらと思うと心臓に悪かったです。しかし、そちらのお二人がドラゴンを討伐してくださったので、私達エルフの心が再び安らぎを取り戻す事ができました。感謝いたします」
「私からも礼を言わせて欲しい、本当にありがとう。本当ならば我々で解決しなければならない問題なのだが助けられてしまった、感謝してもしきれない」
レイラとヤオが再び立ち上がって優之介達に頭を下げた。優之介達は小恥かしく照れながらも二人に対し頭を上げるように言うと、リビングの隅で話を聞いていたアインまでもが頭を下げて感謝を述べた。
「私からも礼を言わせてください、ドラゴンの討伐してくださった上に素材の提供まで……これで他の里も潤うでしょう」
「長老までよしてください、私は王国近衛騎士として当然の事をしたまでです。と、言いたいところだがドラゴン討伐はそちらのユウノスケとシバです。私は何もしていません」
「レイラ様とヤオ様から大多数の盗賊を相手に一騎当千の如く、族をなぎ払ったと伺っております。そのような事はおっしゃらずに、もっと自分を誇ってください」
「い、いやしかし……」
「そこは素直に賞賛を受け取れヨー」
「謙虚すぎるのも卑屈デスヨー」
「…………」(―キッ!)
アインの感謝に対しクラウディアは謙虚な姿勢を取るが、優之介と斬波が棒読みで野次を飛ばすのでクラウディアは野郎二人を鋭い眼光で睨みつけ威嚇する。
やぶ蛇をつついた優之介と斬波はふざけ半分でアインの家から飛び出し、そのまま逃げてしまった。
「はぁ……私の憧れたドラゴンスレイヤーとはかけ離れているな…………」
「あ、あははは……。でも、あれで良いんです♪」
―コンコン―
「ユウノスケさんとシバさんが出て行かれましたので何事かと思えば、お話はもうお済みですか?」
優之介と斬波がアインの家から出て行くのと入れ替わるようにカインが家に入って来た。
クラウディアは呆れ、レミリアとレイラ、ヤオは苦笑いし、アインはにこにこ笑顔でいるこの不思議な空間にカインは首をかしげつつも本来の用事を済ませる事にした。
「……? 何があったかは存じ上げませんが、宴会の準備が出来ましたのでお招きに上がった次第ですが…………」
「はっはっは、そうだな。クラウディア副団長、騎士様のお勤めはここまでにして宴会に参加してくださりませんか?」
「まぁある程度の事情はわかったので勤めはこれにて終了ですが、これから宴会ですか?」
クラウディアがそう言うと扉の外からエルフ達の歓声が上がった。優之介と斬波、二人のドラゴンスレイヤーの登場で里の広場は盛り上がっているらしい。
「……やれやれ、あの二人がハメを外しすぎないか見張る必要がありそうだな」
容姿端麗の騎士は少しだけ苦笑いし、銀髪を揺らしながら宴会場へと足を運んだのだった。
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