第23話 宮廷魔術師
お父様との決別から、ユーノス様が上手く取り計らってくださったので、私はそのまま魔術学院で最終学年まで学ぶ事が出来た。
あれからユーノス様が私の後見人になって下さった事で、万事、父の思う様には行かなくなったのだ。
その為の細かい手続きは直接ユーノス様がヴィエルジュ伯爵家とやりとりして下さったようで、私にとっては今後、実家の伯爵家とは関わらなくても良くなってほっとした。
お母様とマリーンお姉様とは手紙のやりをして、学校の長い休暇には二人の住んで居る荘園の屋敷に遊びに行った。お母様はのんびりと暮らしながらも福祉活動には熱心に参加されている様子だ。
お母様には今が一番幸せだと言われていた。
私は宮廷魔術師の数少ない治癒師として働く事が決まっていた。
宮廷魔術師になってしまえば、公的にも父が私にどうこう言える立場ではなくなる。
それ程、宮廷魔術師は国では重要な役目を担っている。
「シタンは、本当に宮廷魔術師で良いのだな。なってしまえば隣国との国境警備にも出向く事になるが・・・」
「ユーノス様と同じ場所で務めを果たせる事を誇りに思います。やっと、宮廷魔術師になれる場所に届きました。私の夢だったんです。もちろん国境にも行きます!」
城の中の魔術師の職場は、魔術師の塔と呼ばれていて、外壁が赤レンガの巨大な塔だった。屋根は尖った形をしていて緑色だ。
私以外に治癒師は三人しか居ないそうだ。二人は男性、一人は女性で、ミンユさんという。彼女は既婚者だった。
同じ魔術師同士での結婚だそうで、子供が出来ても親に見てもらいながら、働いているそうだ。
いいなあ、そういうの。憧れる。治癒師の中で私より3つ年上の先輩になる男性が一治癒師の中では番若い。
やっと一人治癒師が増えてとても嬉しいと言われた。
治癒師の仕事は主に城の兵士の治癒を行うが、貴族が国にお金を払い、支援を要請して来た時にも派遣される。
但し、魔力量が一定の量から下がると仕事は終わる。特に治癒師は人数が少ないので、命を守る為に魔力量が下がると魔法を使えなくするストッパーの様な役割をする魔道具の装身具を身に着けている。
魔力量が戻るまで治療行為は行えない。
治癒師が少ないのは、今までそうした配慮が足りていなかったせいもあると言われた。
なるほど、そうかもしれない。
そして、見習いとして職場の仕事に就いて一年半。ついに北の国境に行く事になった。
三年の見習い期間が終わると、宮廷魔術師になれる。
国境の小競り合いは続いていた。時折、此方側の様子を見る為なのか砲撃されたりするのだが、ユーノス様が作られた魔道具でその殆どが防げていた。
ただ、その魔道具に使う魔石は国境付近の魔物の棲む山の魔獣から取れるものなので、それを手に入れる事が大変だった。
国境警備をする魔術師と騎士達にはその魔獣を狩るという仕事もあった。
魔獣を狩りながら、隣国との戦闘もあるのだ。
その辺境へ、なんと今回、第三王子が参加する事になったという。王族というと、嫌な予感しかしない。
ただ第三王子の事は、小説にはほとんど載っていなかった。
第三王子は妾妃腹なので、第一王子と第二王子の様に正妃様のお子ではない。
上の二人とは異なり、完全に格差を付けられた育てられ方をされている。
こんな辺境に王子が来るなんて、ちょっと考えられなかった。
途中で第三王子付きの近衛を連れての合流になるそうだ。
そういえば第二王子殿下は二年位前に公爵家の令嬢と婚約されたので、それを知った時、私は心の中で花火を盛大に打ち上げたのよね。ホントは踊り出したいくらいだった。
一抹の不安があるとはいえ、初めての国境への遠征なので、緊張しながらの参加となった。
大きな騎馬の軍団が北の砦まで遠征に行く。魔術師だけでなく、入れ替わりの騎士も行くのだから大所帯だ。
次に入れ替わりの隊が来るまで、半年の任務がある。
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