第11話
土曜日の朝。
今日は笠原、武藤、園中、そして早川とテーマパークに行くという約束の日である。
「あっつ。この気温で一日か」
右手で目への直射日光を避けて、空を見上げた。
空はいつも通りの青空がどこまでも続いていた。
俺はキッチリ集合の15分前に駅前に着き、笠原たちを待っていた。だというのに、真夏の太陽は、容赦なく俺を照りつける。
もうすぐ夏休みだ。特に何をするわけでもない長期休暇だが、学校に行くための労力を使わなくていい分楽なことには違いない。
休日だからか、人通りは結構あった。
「あ! 青野! 先に来てたんだ」
俺の次に来たのは、髪が少し短くなった笠原だった。その隣には、武藤もいた。一緒にここまで来たのだろうか。
「笠原、暑い」
「知ってる。……園中は? あと、早川さんも」
集合時間まで、あと10分ある。今の時間に来ていなくても、別におかしいところは何も無い。
「よ、青野。今日は来てくれてありがとな」
武藤は俺に、ぎこちない笑顔でそう言った。
「ああ、俺がここに来ることによって、早川まで巻き込まれたんだ。早川にも後で来たら、感謝を伝えといてくれ」
「おん、分かった」
早川が来ることになった経緯を一切話さず、武藤のせいにする。なんなら笠原とも言えるし、俺は悪くない。……いや、俺が悪いのか。
「すみません、遅れました……」
額に汗を滴らせながら、走ってやってきたのは、白い清楚なワンピースに身を包み、長い茶髪をハーフアップにした早川だった。
「そんなに焦らなくていいのに。園中もまだだしさ」
息を切らせた早川に、笠原が優しく言う。本当に早川は、なんで遅れてきたと思ったのか。
「す、すみません。行きに飲み物とかを買うために、コンビニに寄ったので、焦ってきちゃいました」
「そうなんだ。それにしても今日の早川さん、むちゃくちゃ可愛いね! 何その髪型。すごい似合ってる! 私もそうしようかな」
急にテンションの上がった笠原が、早川を褒めまくる。
「んで、園中は?」
俺が、まだこの場にいない園中を話題に挙げる。
すると武藤が、
「園中ならもう少しで来る。オレ、さっきLINEしたから」
笑顔で言う武藤。その笑顔は俺ではなく、笠原に向けられていた。
俺はその様子を見て、突っ立ったままの早川に近づいた。
「本当にごめんな、早川。ホントは来たくなかっただろ」
「え? い、いやそんなこと、ない……けど」
「まぁ、少なくとも俺は来たくなかったよ。……そんでさ、武藤、今日笠原に告るらしいぞ。俺たちがタイミングを見計らって、武藤と笠原を二人きりにするんだとさ。タイミングは園中に聞けばわかる」
「————」
早川は何も言わず、頷いた。
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