第212話 一足先に
ユーカさんとテツさんのご実家である神奈川へやって来てから、明日で一週間。すなわち、今日は4月2日の金曜日になるのですよ。
私たちは日曜日にテツさんのご実家にお邪魔してからというモノ、午前はSdnGでレベル上げ、午後からは神奈川観光といった一日を過ごし続けているのです!
そんな神奈川観光をしながら皆さんとSdnGを思う存分することができる日々は最高に楽しく、時間もあっという間に過ぎていくのでした。そして、今日はカズさんが大学の入学式に間に合うよう大阪に帰らなくてはならない日がやってきました。
カズさんは12時前の新幹線で帰られるそうなので、10時半には旅館を出られるのだそう。ちなみに、カズさんはテツさんが駅まで送っていってくれることになっています。
「……カズ兄、気をつけて帰ってね」
「ああ、分かってるよ。それに、来た道を戻るだけだから迷うこともないし大丈夫だ」
少し心配そうな表情をしておられるワカナちゃんの頭にポンッと手を置きながら話すカズさん。ワカナちゃんへ向けられているカズさんの笑顔はお兄ちゃんという感じがして、見ている私の心までも温かくなるものでした。
「それじゃあ、またな」
手をひらひらと振りながらテツさんの車へと消えるカズさんの後姿を見送った後、私たちは離れへと戻ったのでした。
「それにしても、カズさんが帰ると、この部屋もずいぶん広くなったように感じます……」
「……確かに。でも、1人あたりが使える面積が1.5倍だと思うと、当然のような気もする」
ワカナちゃんの言葉は説得力があり、『使える面積が1.5倍』という言葉で広く感じることそのものが腑に落ちたのです。
「そういえば、ワカナちゃんはカズさんの入学式は見に行かれないのですか?」
「……うん。カズ兄が来るなって言うから、それ以上は行きたいとは言えなかった」
ワカナちゃんの寂しそうな瞳。本心では行きたかったということがありありと伝わってきます。おそらく、カズさんも意地悪で来るなと言ったわけではないでしょうし、それ以上は何も聞くようなことはしませんでした。
「ワカナちゃん、今日は何をしたいとかありますか?」
「……特には」
「そうですか……」
少し会話が途切れた時、突如としてワカナちゃんのスマホからピロンッ!という着信音がバイブレーションと共に響いたのです!
「……もしもし、コーイチ?うん、うん……分かった。うん、それじゃあまたね」
1分とかからずに終了した電話。どうやらかけてきた相手はコーイチさんのようですが、一体どのようなご用件だったのでしょうか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます