第159話 バレンタインチョコを渡しましょう!①

「……ハルお姉ちゃん、そろそろチョコを渡した方が良いんじゃ……?」


「あっ、そうでした……!すっかり忘れていたのですよ。ワカナちゃん、ありがとうなのです!」


 私は隣のルビアちゃんやユーカさん、マサミさんにもその話をして、チョコを渡すこととなったのです。


「じゃあ、まずはアタシからね!これがテツの分で……これがマサル。それで、ケースケの分!」


 マサミさんからのチョコレートはどれも大きめでしたが、ケースケさんの分だけは一際大きなチョコレートなのでした。


「マサミ、ありがとう」


「味は去年よりも上手くできたから大丈夫……だと思う!」


「そ、そうか。だったら、味わいながら食べさせて貰います……!」


 ケースケさんはどこか不安げな表情をなさっておられるのが気がかりでしたが、マサミさんの去年のチョコレートというのも気になってしまうのですよ。


「それじゃあ、次はユーカの番だね!」


「なっ、また勝手なことを……!」


 マサミさんに指名されたユーカさんはため息をつきながらも、チョコレートの入った袋を手にされたのでした。


「えっとだな……これがテツの分だ。それでもって、こっちがケースケさんで、こっちがマサル君の分だ」


 ユーカさんのチョコレートはマサミさんのチョコレートと比べれば小さいですが、これくらいの大きさの方が食べやすそうなのです。もしかすると、ユーカさんはその辺りも配慮してチョコレートを用意していたのかもしれません。


「ユーカ、毎年ありがとう。いつも通り、ホワイトデーは期待していてくれ」


「今年こそは自重してくれ。毎年毎年あれだけのお返しを貰っても困るんだ……!」


「そう言って毎年全部食べてるじゃないか。それまたおいしそうに」


「なっ、確かに甘いものは好きだがあれだけの量を食べ切った後の私の気苦労も知らないで……!」


 テツさんがからかったこともあり、ユーカさんも色々と言い返しておられますが、そうしてイチャイチャしておられる時のユーカさんは可愛らしくて、テツさんがからかってしまうのも分かるような気がするのです。


 また、ユーカさんがテツさんに言い返しておられる時、マサミさんはニヤニヤしながらそれを見物しておられましたが、テツさんに便乗してからかわないだけまだマシな気がしたのでした。


「それじゃあ、次は私の番かな?」


 テツさんとユーカさんの言い合いが終わるのを待っていてはいつまでもチョコを渡すのが進まないので、ルビアちゃんにチョコを渡してもらうようにお願いしたのでした。

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