第138話 罪悪感と装飾品

 そうして1月9日、土曜日。私たち9人はテツさんの工房ではなく、マサルさんのお店に集まっていました。


「こうして揃ってみると、やっぱり俺たちのパーティもずいぶんと人数が増えたもんだな」


「……確かに。あと1人増えれば10人になる。そうなれば私たちもクランを結成できる」


 カズさんとワカナちゃんが隣でそんなことを話しているのですが、私が入った時には3人だけだったことを思えば、人数は今や3倍。ずいぶんと規模も大きくなりました。


「皆さん!まずは第9回イベント、おつかれさまでした!今日はおつかれさま会をするためと、どっちが多くポイントを稼げるかの勝負のことで話をしようと思います!」


「げっ、そういや競争しようって言い出したの、俺だったな……今の今まで、すっかり忘れてた……」


「カズ、自分の都合の悪いことを忘れるとは、情けないな。どうせ、勝ったらそのことしか話さないだろうに」


「……ぐっ、返す言葉もない……」


 カズさんにユーカさんから辛辣な言葉が投げられますが、そういうユーカさんも負けた側なのですよ……?


「それと、オレとハル、ワカナの分のアクセサリーはこれにした」


 テツさんがそうおっしゃって、店のカウンターに並べたのは竜の鱗3つと、赤色のピアス2つ、キラキラと光の粒子を纏う指輪。そして、銀色の十字架でした。


「これは左から順にワイバーンのウロコと武神のピアス、守護者の指輪、聖騎士の十字架だ。どれもかなりの値段がするからな。どうせ代金は出してもらえるわけだし、高いのを選ばせてもらった」


 テツさんは少し悪い顔をしておられましたが、それを聞いたカズさんとユーカさん。ルビアちゃんとお父さんの顔が真っ青になったのを見るだけで、値段が高いのは十二分に伝わってきました……


「ハルにはワイバーンのウロコと武神のピアス。ワカナにも同じものを。オレは残りの3つを装備させてもらう」


 こうして、テツさんから装飾品を受け取ったのですが、何やら罪悪感で心の中がモヤモヤしてしまう私なのでした……


「あの、テツさん。皆さんにはどれほどの金額を……」


「ああ。それは言ってしまったら面白くないだろう?」


 片目をつむり、口元をニコリと緩ませるテツさん。何も教えてくれないのが、余計に恐ろしく感じられます……


「……ハルお姉ちゃん。ここはカズ兄たちに装飾品を送って貰ったと思って、素直に受け取ろう?」


「そ、そうですね……!ワカナちゃんの言う通りです!ここは素直に受け取ることにするのですよ!」


 ……こうして私は自分に言い聞かせながら、拭いきれない罪悪感と共に頂いた装飾品を装備したのでした。

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