第117話 両親とSdnG

 私たちはSdnGへとログインし、ログインしてすぐの広場で待ち合わせました。


「千晴、ここにいたか」


 そんな声と共に後ろから肩を叩いたのは真紅の大斧と鎧兜に身を包み、鏡のような大盾を持った大男のプレイヤーでした。種族は角が生えていることから、鬼人族オーガでしょうか?


「あっ、お父さん。ここではリアルの名前は……!」


「おっと、そうだったな。こっちでは『ハル』か。ほぼそのままだな」


「そういうお父さんは……そのままじゃないですか!」


 お父さんの本名は戸倉克広なのですが、プレイヤー名は『カツヒロ』なのです。人のこと言えたモノじゃないです!


 といっても、ワカナちゃんもユーカさんも名前のままなので、何とも言えないですが。


「あら、ふたりともここに居たのね」


「あっ、お母さん。お父さんが……」


 そう言って私がお母さんのプレイヤー名を見ると、『ヨーコ』となっていました。本名は戸倉陽子なので、お父さん同様そのままです……


 そんなお母さんは猫耳と尻尾が生えているのは驚かされました……!


「家族そろって本名とプレイヤー名がほぼ同じとはな……!」


 お父さんは豪快に笑っているのですが、その間に昔から両親揃ってゲームは本名でしていたのを思い出す私なのでした。


「ハルは職業は魔法剣士マジックナイトにしたのか?」


「はい、一番戦いやすそうな職業だと思ったのです」


「まぁ、確かにそうだな。ちなみに俺は盾使いシールダーにしたぞ。最初は戦士にしようかと思っていたんだが、こっちの方が面白そうだと思ってな」


 盾使いシールダーは戦士と同じ前衛職ですが、戦士に比べて耐久などの防御面で優秀なのです。


「ワタシは商人マーチャントにしたわ。お父さんと違って、あんまりバトルとかは好きじゃないから」


 私としても、お母さんはモンスターやプレイヤーとのバトルは向いてなさそうなので、非戦闘職の方が性に合っているような気がします。


「そういえば、千晴……じゃなくてハル。次の第9回のイベントはどうするんだ?」


「次のイベントもパーティのみんなと一緒に出るつもりですが……」


「ならば、俺もそのパーティに入れてくれないか?もちろん、ヨーコも一緒に」


 お父さんの独断かと思い、お母さんの表情を窺ってみますとニコニコ笑顔でコクリと頷いておられたので、独断ではないようなのです。


「とりあえず、私からカズさん……パーティリーダーの人に許可を取ってからでもいいですか?」


「ああ、もちろんだ」


「ええ、良い返事を期待しているわね」


 私はSdnGをログアウトしたらカズさんにメッセージをすることに決めて、家族3人で仲良く町を散策したりしてからキッチリ1時間でログアウトしたのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る