第95話 崖の上にて

「ハルさん、カズさん!今すぐ、回復を……!」


 ルビアちゃんの治癒魔法で私とカズさんの体力ゲージは瞬く間に全回復しました。とはいえ、ここまでルビアちゃんは治癒魔法を使いすぎていることもあって、魔力ゲージが7割近く減っていました。


「ルビア、これを使うといい」


「あっ、魔力回復薬マジックポーション……!助かります!」


 ルビアちゃんにテツさんが魔力回復薬マジックポーションを差し入れておられます。もしかすると、先ほどの戦いで連携しているうちに打ち解けたのかもしれません。


 といっても、ユーカさんだけはあまり良い顔をしてはおられませんでしたが。


「……ユーカ、テツを取られて寂しいのは分かるけど、今はそんな場合じゃない」


「なっ……!ワカナ!私は別にそのようなことは……!」


 ユーカさんが顔を真っ赤にしてワカナちゃんに反論しておられますが、ワカナちゃんはどこ吹く風といったご様子でした。


「それはそうとワカナ、アヤのクランはどうしている?」


「……追っては来ないみたい。アキって人がクランの前衛の人たちに力上昇魔法を使って、その後はあちこちに移動していった」


「あの、アキさんという方は……?」


「えっと、私とテツさんが戦った鞭を使う女性プレイヤーの方です」


 ルビアちゃんがすかさず説明を挟んでくださいました。ありがたいです。


 そこからはそれぞれが戦ったプレイヤーの名前や、武器や魔法から戦闘スタイルまで色々なことを話し合いました。


「にしても、あの感じだと全員累計ステータス的には1万2,3千って感じか」


「だろうな。オレも戦った感触的にはそれくらいだと思う」


 カズさんの言葉にテツさんも同意しておられました。私もキヨさんとはステータス的にそこまでの差は感じませんでしたので、それくらいな気がします。


 ともあれ、私たちが今現在獲得しているポイントはケースケさんたちを倒してゲットした90ポイントを足して、合計3660ポイント。


 この分ですと、3位に入るのは厳しいかもしれません……!


 そんな時、アヤさんたちと戦った方とは真逆の方で、大爆発が起こりました。


 何事かと思えば、いつぞやの銀色の装備で固めたプレイヤーさんです。しかも、累計ステータスが1万越えのプレイヤー50名ほどに囲まれています……!


「あれが第5回の時にハルたちが遭遇したってヤツか?」


「はい、一瞬でやられてしまいましたが」


「アイツはヤス……“銀閃の悪魔”って呼ばれてる、SdnG最強のプレイヤーだ」


 SdnG最強のプレイヤー……!?カズさんはサラっとおっしゃられましたが、そんな最強のプレイヤーの方と知らず知らずのうちに戦っていたと……!


 ……まさかの事実、発覚です。

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