第38話 隣のJKさん

「それじゃあ、俺たちは帰るからな」


「はい!また、機会があれば皆さんで集まりましょう!」


「……ハルお姉ちゃん、バイバイ」


 私はお二人をアパートの外で見送りました。


 最初は駅まで送っていこうとしたのですが、「帰り道は分かるから」とカズさんに断られてしまったのです。


 さすがにカズさんたちが必要ないと言っているのに、無理に私がついて行く必要もないとそこで退いたのでした。


 それにしても、カズさんが大学受験で毎日はログインできないとなると、ワカナちゃんと二人だけ。


 ワカナちゃんと一緒にゲームができるのは嬉しいことなのですが、前衛のカズさんが抜けると、受けられるクエストも少なくなってきます。


 やはり、私たちのパーティは三人で一つなのです。それが二人になると、戦力は3分の2どころか半減する感じがします……


 カズさんが抜けた分をコーイチさんに埋めてもらうという手もありますが、あの決闘のこともあって空気はよくありませんし……


 第一、コーイチさんがパーティに入ったところで、連携が取れるとも思えません!


 とはいえ、二人というのも心細いのです……


 そんな解決の糸口すら見つからないことに頭を悩ませながら、アパートの階段を上がると、私の部屋の前に一人の女子高生が居たのでした。


 もしかすると、部屋を間違えたのかもしれません。


 私はとりあえず、声をかけてみることにしました。


「あの……何か私の部屋に御用でしょうか?」


「あ、えっと、用と言えば用なんですけど……」


 何やら話しづらそうにしておられる女子高生さん。


「えっと、こんなところで立ち話も何ですし、上がっていってください」


 私はひとまず、部屋に上がるようにすすめました。


 ……とはいえ、さすがの女子高生さんも遠慮している感じでしたが。


 ですが、自分の中で納得してくれたのか、「お邪魔します……!」とお辞儀をしてくださいました。


 その丁寧なお辞儀を流し見ながら、ササッと部屋のカギを開けて、中に入っていただきました。


「えっと、私はこの部屋に住んでいる戸倉千晴といいます。あなたのお名前は?」


「私は長谷川茜はせがわあかねといいます。この左隣の部屋に住んでます」


 ……まさかのお隣さんでした。


「お隣さんがどうして私の部屋の前におられたのですか?もしかして、部屋のカギを忘れたのですか?」


 私が尋ねると、茜さんは首を横に振りました。


「えっと、さっき部屋でゴロゴロしていたらSdnGの話が聞こえてきて、私も混ざりたいなと思っただけなんです」


 戸惑いながらも茜さんは理由を話してくださいました。


 どうやら、私たちの声が丸聞こえだったらしく、何だか申し訳なかったです。


「それで、おこがましいお願いになるんですが……私とSdnGを一緒にやってもらえないでしょうか!」


 ……突然の茜さんの大きめの声にビックリしてしまった私なのでした。

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