第5話
その動画を見た秋斗はしばらく、呆然としていた。それをCGだと否定するコメントは少なく、多くの人が実際にソレを見たか、自身の身の回りに起きた異常を考えると信じたくはないが一概に否定はできない、と感じているようだった。
「こりゃあ…………電波通じてるのもいつまでかわからんなぁ……あとはガス、電気、水道か。店も空いてないだろうから飯の問題もあるよなぁ……」
冷蔵庫にあるのはあと3食分くらいか?
缶詰、スパゲティ、米なんかも合わせれば1週間は飢えをしのげるだろう。それまでに新たな食料を調達する必要があるな……
「ん?」
ふと、気になるツイートを見つけた。それに書かれていることは、
『”ステータス”を見ようと念じればステータスを見ることが出来る』
それから、
『モンスターの死体はドロップアイテムを落とす』
『モンスターは死体がそのまま残る』
ステータス、か。さすが日本人、オタク系の適性と順応性が高いなぁ。言われて見れば、どうして1度も「ステータス!」ってやらなかったのか不思議に思う。
それから、ドロップアイテム。
これは様々な資源になりうる可能性を秘めている。肉を落とすものもいれば剣などの武器や爪、牙といったものを落とすものもいるようだ。
気になるのは死体が消えてアイテムが残る奴と死体がそのまま残る奴がいるらしいという点だが……
食料になるモンスターが居るなら、何とかしてそれを狩れば飢えをしのげる。水も、川や雨水を沸かせば飲めるだろう。
問題は電気とガスだな、と呟いて、早速”ステータス”を試すことにする。
「ステータス!」
声に出す必要は無いとあったが、イマイチイメージが掴めないので、最初は声に出す事にした。1度”ステータス”とやらを見れば次からは声に出す必要は無いだろう。
=====
黒木 秋斗
人間
魔王
Lv.3
HP:550
MP:150
筋力 120
防御 120
知力 250
俊敏 132
器用 140
魔法抵抗 50
【種族スキル】
【職業スキル】
迷宮生成
迷宮管理Ⅲ
迷宮操作Ⅲ
意思疎通Ⅲ
【特殊スキル】
【スキル】
称号:
▼ログ
=====
「へぇ……」
『ステータス板をタップすることで、大まかな詳細が分かります』
そこで140字に達したようだ。”続き↓↓”の文字に従い、添付されている写真……メモ帳アプリのスクリーンショットを開くと、ステータス板の各欄の簡単な説明や、周囲の人で判明している職業やスキルの大まかな効果なんかが書かれていた。
「結構どしどし情報を出してるな……」
なかなか使えそうな奴だ、とフォローボタンを押す。
…………まぁ、電波や充電、そして何より発信源の人間がいつまで生きているか分からない現状、下手すれば明日にも使えなくなる可能性はある訳だが。
ユーザー名アキヒロ、プロフィール無し、昨日以前のツイートはゲームアプリや漫画アプリ関連のものが幾つかだけ。
これではどんな人間なのか全く分からない。
「よし、1つずつ検証だな」
情報はありがたいが、まるっと鵜呑みにするわけにはいかない。悪意ある嘘、勘違い、検証不足。昨日の死闘を考えれば、今の世の中、ほんの些細なことで死にかねない。
時間があるなら、情報はできる限り多く、できる限り正確に集める必要がある。アキヒロが善意で情報をばらまいているとして、それが”全て”かは分からない。
アキヒロも知らないコンテンツもあるだろうし、もしかすると、重要な情報を秘匿しているかもしれない。
1つずつ確かめていこう。
黒木 秋斗
タップすると、”名前”と書かれた半透明のウィンドウが現れる。 自明だった。
人間
種族。
「そういえばいつの間にか魔王になってんだよな……」
魔王
職業。
魔物の王。職業ダンジョンマスターから稀に昇格。寿命なし、老化無効。
職業効果
【威風堂々】振る舞いは洗練される。覇気を備える。
【存在強化】各種ステータスに補正。
【眷属強化】自身のレベルに応じて配下のステータスに補正。
【魔物の王】魔王は全ての眷属のステータスの1割分自身のステータスが上昇する。眷属からスキルを1つ奪うことが出来る。スキルとステータスのどちらか一方のみ。変更可。
(※同時に借りられるスキルの上限は[log₂(レベル)]。魔王は通常スキルを獲得できない)
これはチートだ。
ステータスの上乗せ……いや待て、寿命なし?老化無効?
見なかったことにしよう。現状あんまり関係ないしね。
米印から続く対数表記に、現実でlog使うやついるんだと感心するが、その内容はあまり良くない。
要するに、眷属から貰うスキルの枠を1つ増やすにはレベルを倍にしなければいけないのだ。
変更可能なので実質無限みたいなものだが、同時に使えるスキルの数はかなり制限されるだろう。
HP~魔法抵抗まではそのままの説明しか載っていなかった。
種族スキルは、特定種族でのみ解禁されるスキル。職業スキルも同様。
【迷宮生成】
迷宮を生成する。
【迷宮管理】
DPを消費して『ショップ』での売買が可能。
DPを消費して迷宮をカスタマイズできる。
【迷宮操作】
迷宮を操作する。迷宮管理をサポートする。
【
主人の疑問に答える。
称号
行動を評価する。称号には様々な効果が付与される。
▼ログ
【『”ダンジョンコア”使い』ジョブを獲得します】
【ERROR】
【ダンジョンコア使いは一覧にありません】
【類似職業を検索】
【職業『ダンジョンマスター』を獲得します】
【職業『ダンジョンマスター』を昇格します】
【職業『魔王』を獲得します】
【各種ステータスが増大します】
【身体に異常を検知しました】
【HPを全回復します】
【スキル『
=====
”ログ”は、どうやらアナウンスの履歴を表示してくれるようだ。半透明の板を上にスクロールしていくと、1番上には
【地球世界が魔素の汚染を受けています】
【ダンジョンが出現します】
【モンスターが出現します】
と書いてあった。
ああ……やっぱり世界中にモンスターが溢れていそうだな。
物流も人の移動も大幅に制限されるだろう。
外が危険なのだから、生産活動も行えない。
建物内でも、ウチみたいな”ダンジョン化”による、建物内での直湧きの危険がある。
人間達がこの環境に順応するまでに。
レベルアップやスキルでモンスターと戦う術を得るまでに。
人類はそれまでに何割減るだろう。
敵はいくらでも居るが、物資は無い。
ふと、【迷宮管理】の説明を思い出す。
「ショップ機能……」
どう考えても何かを売り買いする機能だろう。
食料や生活必需品も売られているかもしれない。
購入にはDPが必要。
しかし、DPは他にも多くの使い道がある。
食料ばかりに割いてもいられない。
だが、DPが多く入れば……
「食料の対価としてDP稼ぎを補助させるか……?」
税率10割くらいで。
手に入るだけマシだよね?
砂漠のど真ん中で彷徨う人にはコップ1杯だけの水が100万の金より貴重だろう。
そもそもショップ機能が俺しか使えないなら、いくらピンはねしたってバレないって。
そうと決まれば、早速始めよう。
まずは、このダンジョン化した家を俺のダンジョンに作りかえる。
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