5.ゆかり(2)

あ~あ やだやだ!


満員電車ってなんかおやじ臭くてやだ。


やっぱりちょっと頑張って女性専用車両まで行けば良かったかな?


押されちゃうし・・・・。


って あれ?


あんまり押されてない?


後ろの男は相変わらず中に入っていかないので、前のおやじ?


やだ、何か硬直してんじゃないの?


微妙に周りと距離をとってるというか(満員電車だから隙間を空けるのは無理だけど)、直立のまま動かないというか。


さっきまで、ごそごそと動いていたのに、電車が揺れても揺れに合わせて大きく動かない。


まさに微妙な感覚で直立してるって感じ。


何だろう?


必要以上に押してこないのはうれしいけど、なんか不気味!


このおやじ潔癖症?


さっき結構押してきたのでそんなことないか?


風貌的に潔癖症ってのは似合わないし。


あれれ? 何か気になってきた。


やだやだ、こんなおやじ気にしたくない。


でも・・・。


扉が開いた。


あたしの後ろの男が降りるようなので一度車外に出た。


ゲームをやっている男は扉の脇から動かない。まあ、しょうがないけど結構邪魔。


ひととおり降りる人が済んだので、再度車内へ。


こんどは少し奥の方へ入って自分の位置を確保することができた。


気にしたくないけど気になるおやじは、あたしの方へは来ないで少し離れた位置へするりと潜り込んでいる。


本当にするりと潜り込んでいるという表現がぴったりのように隙間へ入り込んだっていうように見えた。


何なの。あれって。


まあ、これであのおやじを気にしないで済むよね。


今日の仕事の段取りを確認しようっと・・・。


あれれれ? やっぱり気になる。


何か、目で追ってる。


やっぱり直立してるよ。あのおやじ。


何で・・・?

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