第20話 魔法教室
あの後、4人と一匹で昼食を取りながら、今後について話した。
琥珀さんと一緒に白音ちゃんとシャルルちゃんに明日から、琥珀さんに用心棒をしてもらいつつ、俺を鍛えてもらうことを説明して、その間は二人からは目が離れるため、温泉施設から出ないように伝えた。
伝言役にスライムが一緒にいるとも言った。
しかし、
「わたしたちもなにか手伝いたい」
と白音ちゃんが言い出した。
シャルルちゃんは
「琥珀さんと魔王のお兄さんだけに迷惑をかけるのはイヤです」
とボードに書いて見せてきた。
二人ともダンジョンの防衛や外に出ての戦闘に参加したいという。
俺としては女の子に戦闘してもらうわけにはいかないし、琥珀さんに至っては娘の安全が第一なところがある。
なので二人がかりで説得したのだが、折れてはくれなかった。
なので、白音ちゃんとシャルルちゃんも協力する方向で話が進んだ、その結果
「魔王のお兄さんが使える魔法はありますか?」
目の前にジャージを着たシャルルちゃんがボードを持って立っている。
ここは平原エリアで温泉施設の外、広いエリアがまだ手付かずで身体を動かすのにはちょうど良い。
そこに、俺とシャルルちゃんとスライムがいる。
結局、話し合いの結果。
琥珀さんはお昼までは俺と娘二人の武術訓練を指導しお昼からは用心棒としてダンジョン周りのパトロールをする。
琥珀さんがダンジョン周りのパトロールをしている間、シャルルちゃんが俺とスライムに魔法を教え、白音ちゃんは料理をする。
二人も琥珀さんに武術の指導を受けることになったのは、俺と同様にまだレベルが低かったからだ。
白音ちゃんは武術の才能があるが、シャルルちゃんは本来後衛のステータスをしている。
しかし、声が出せないと魔法が使えない、もしくは威力が落ちるため、体術でカバーしたいという。
防衛等の戦闘への参加は琥珀さんが出す課題をクリアできてからだ。
他にも、シャルルちゃんと白音ちゃんの特技を活かしたいという事で、魔法の先生と料理人をしてもらうことになった。
シャルルちゃんの種族であるヴァンパイアは魔法に優れた種族で、ヴァンパイアの実の母親から魔法について色々教わったらしい。
知識だけならば琥珀さんより詳しいとのこと。
詳しいのは基礎5属性の魔法についてなので、〈レベルストッパー〉について新しい情報はなかった(というより、琥珀さんの情報元がシャルルちゃんだった)。
白音ちゃんは元々三人旅の料理担当をしていたらしい。
琥珀さんに簡単な料理を教えてもらうと楽しくなり、あとは好きこそ物の上手なれ、といった感じで琥珀さんを越えていったそうだ。
で、今はシャルルちゃんに魔法を教わっている。
今日は初日という事で琥珀さんが遠い所から様子を見ている。
「スキルとしては〈ゴーレムマスター〉と〈ストレージ〉〈観察〉〈鑑定〉を持ってる、〈ゴーレムマスター〉は使ったこと無いけど」
〈ゴーレムマスター〉を使うためには魔石が必要で、まだ入手できていない。
〈レベルストッパー〉も一応魔法だが、今のところ使えないスキル筆頭だ。
それに持っているスキルのほとんどが戦闘用じゃない。
「〈ゴーレムマスター〉以外は生活魔法です」
とシャルルちゃんはボードに書いた。
「それにスキルで魔法を使うと不便ですよ」
「どういうこと?」
シャルルちゃんは分かりやすく説明してくれた。
神様から魔法の使い方として一度覚えた魔法はスキルのように名前を口にするだけで使えると聞いていた。
それはこの世界の人間が魔法の使用法を簡略化したものだった。
本来は自分の魔力を意識的にコントロールして属性を変換し、発動後の効果をイメージする事で魔力が魔法としての効力を発揮する。
漫画やアニメのように、詠唱をする事で、魔力の変換や、魔法の効果のイメージをハッキリさせて魔法の安定化を図っている。
スキルによって魔法を簡略化すると魔力の変換が甘いため威力が落ちる上に、コントロールしづらく、応用も利かないらしい。
それに簡略化で慣れてしまうと、意識的に魔力をコントロールするコツが掴みづらくなるという。
スキルは中級魔法までは属性ごとの初級魔法スキル、中級魔法スキルとまとまった形で存在し、スキル効果としてはその属性に魔力を変換しやすくなるものだと言う、それにより変換する際のロスが減り威力が増すという効果につながる。
そこを勘違いして、属性魔法の威力が上がるという効果と認識されているという。
上級魔法は魔法別にスキルの形を取り、スキルによるサポートも重複するのでさらに使いやすくなる。
簡略化せずに魔法を使うなら無詠唱で魔法を使う事ができるそれで相手にギリギリまで気づかれずに魔法を使うことができるのだと。
しかし、なれるまでは難しくスキルのサポートを受けられないデメリットがある。
スキルと魔法の関係の説明の後は実際に魔法を見せてくれることになった。
「簡単な魔法は、魔力を属性に変換して手元に集めて投げる、ボール系」
と書いたボードを見せた後、シャルルちゃんは魔力を水属性に変換し手元に集めた、そしてそれを誰もいない平原に投げた。
〈魔眼〉が無ければいきなりシャルルちゃんの手元に水の玉が現れたように見えただろう。
「今のが水属性の初級魔法の一つ、ウォーターボール」
「魔法のうまい人は水の玉を大きくしたり、密度を上げたり形を変えて威力をあげる人もいる」
「それに手を使わずに魔力のコントロールだけで飛ばすこともできます」
シャルルちゃんはそう言うとボードを持ったまま、さっきより大きな水の玉を生み出し、槍の形に変えてから飛ばした。
着水した地面には穴が空いていた。
「他にも、元になるものを魔力で包む事で魔力の消費を押さえることもできますよ」
と書いたボードを見せた後、神泉ポットから水を出し、それを魔力でまとめてから、形を針のように細くしてから飛ばした、その水は土に半分ほど刺さった後、ただの水に戻った。
「スキルで魔法を生み出すと最初みたいにしか使えない」
「大きさも一定で形も変えれない、使い手の能力次第で密度は変わるけどそれだけ」
「なにかを媒体にして魔力を節約することもできない」
さっきの魔法をスキルで使ったときの違いも具体的に教えてくれる。
確かに簡略化してしまうとだいぶ魔法の幅が狭まってしまうな。
「次は魔王のお兄さんが魔法を使ってみましょう」
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