第6話 あと3時間33分…
「やめてくれ…」
突然、榊原が突然、頭を抱えた。
「先生、どうしたの? 」
「いやだ! いやだ! くそ! 絶対にいやだ!!!」
――ゴンゴンゴン――
突然、大声で叫びながら、黒板に頭をぶつける榊原。オメガは驚いて、榊原に駆け寄ると、榊原の肩を両手で掴んで止めた。
「先生、止めて!! 」
オメガは、激しく榊原の肩を揺らした。
「オメガさん…僕、こわいんだ」
「何が? 」
「明日の研究授業が…また、緊張してどもって失敗してしまいそうで…そうなったら僕はもう終わりだ。教育実習は僕の必要単位なんだ…失敗したら卒業できない。卒業制作の映画のメガホンも握れない…もう、すべてがおしまいだ」
榊原は思い詰めた表情をしていた。視線もどこを見ているのか分からない。オメガは榊原を、このままにしておくのは危ない感じがして一生懸命に励ました。
「先生、大丈夫よ。私がついてるから、大丈夫よ! 」
「オメガさん…」
「私が、先生の研究授業、うまくいくように、授業の練習に付き合ってあげる。だから、あきらめないで」
榊原の顔はオメガに向いたが、まだ視線はオメガに向けられていない。オメガは思いっきりの笑顔で話しかけた。
「だから元気出して頑張って練習しましょう。やる前に諦めるなんて、もったいないですよ。取りたい映画もあるんでしょう。先生、夢を諦めるんですか? 」
「夢…」
「そうですよ、夢! 映画監督になるんでしょう!」
「映画監督…」
「そう! そのために、卒業制作の映画を作って、自分の力を試すんでしょう! こんなところであきらめて、いいんですか! 」
オメガの言葉が聞きながら榊原の視線がオメガの顔に向けられていく。
「だから、頑張りましょう! 私も協力しますから!」
「分かった…頑張るよ」
「そうよ。それでこそ先生だわ。じゃあ、練習しましょう!」
オメガは教卓からラジオを持つと、教壇から2列目の席に着いた。ラジオは横の机の上に置いた。榊原が教壇に立つと、オメガが号令をかけた。
「起立! 礼! よろしくお願い…」
そのとき、突然!
――ピカー! ――
閃光とともに雷鳴がなった。
――ズカーン、ドン!! ――
「イヤー!! 」
オメガは、逃れるように椅子を押しのけて、机の下に隠れた。
「どうしたんだ、オメガさん、雷が、こわいか…」
また、雷鳴がした。
――ゴロゴロ――
「オメガさん、大丈夫だよ。雷は教室の中まで、入ってこないから…」
――ザーザー…――
突然、オメガのラジオから雑音がなりだした。そして、その雑音は、しだいに大きく、まるで、化け物のうなり声のように変わっていった。
――ウォウォウォウォ…ウォ! ウォ!!――
「何? 何だ、これは? 」
――ウォ…片子(かたこ)…片子…――
「私は片子じゃない。オメガ、オメガなの」
――ウォ…片子…人間を、殺せ…――
「この放送は何なんだ、オメガさん」
「知らない!!」
オメガは机の下で震えている。
――ウォ…片子…殺せ、にっくき人間を…殺せ…――
「イヤ! イヤよ!! 」
――殺して、その人間の肉を食うんだ…片子!!!――
――ズカーン、ドンドン!! ――
激しい雷鳴が閃光とともに、
「キャアアアアアアアア!」
オメガの絶叫が教室に響いた…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます