第168話、盗賊が潜伏する森
森に差し掛かったところで、浮遊バイクを停めてやれば、伏せていた盗賊どもが自分たちから出てきた。
弓持ちの盗賊から矢が放たれたが、浮遊バイクもトレーラーも防御魔法を装備しており、初弾はすべて無効化した。
ヒャッハーしながら、突っ込んできたのは二十人くらいか。倍以上の数で攻めれば何とかなると踏んだのかもしれない。
だがすでに所在がバレていた盗賊たちは、ソウヤたちの元にたどり着く前に先制攻撃を受けるのである。
ジンとソフィアのアイスブラストが三十以上の氷柱となって、突進してきた連中を含め、後衛の弓兵を貫き、その数を一気に減らした。
向かってきた盗賊らは、戦力が半減したが突っ込む勢いのままなおも迫った。そこをライヤーが長銃による射撃で、うまく狙撃した。魔法銃ということだが、何だかSFのブラスターとか光線銃みたいだった。
距離が近かったこともあり、ソウヤたち前衛組にも生き残り盗賊が武器を振り上げてきた。
ミストもガルもバイクを降りて応戦。戦闘狂のドラゴン娘は嬉々として盗賊を竜爪槍で貫き、切り裂いた。一方のガルは風のように駆けて、流れるように三人の急所だけ斬って倒した。
「おおーっ!」
声を張り上げて挑んできた盗賊のナイフを、ソウヤは斬鉄で受け止め、開いた左手で相手にタッチ。
「収納」
時間制止のアイテムボックスへようこそ。ソウヤは盗賊退治の証拠のため、今回はアイテムボックスに敵を収納しておこうと考えていた。
これは、暗殺組織ウェヌスとの戦いで、獣人の呪いをかけられたガルの仲間たちを殺さず無力化するために手当たり次第にアイテムボックスに放り込んだことがヒントになった。
時間制止のアイテムボックス内なら、捕まえた盗賊たちの拘束場所や食事など気にしなくもいい。どんどん捕まえても荷物にならないので、積極活用。後始末は、バッサンの町の者たちに任せようという魂胆である。
意外に馬鹿にできないのだ、捕虜を連れて行くというのは。これも生き物も入るアイテムボックス様々である。
・ ・ ・
間もなく前哨戦は終了した。こちらに損害はなし。盗賊十四名死亡、負傷十二名と無傷の三名をアイテムボックスに放り込んだ。
数人が逃げたようだが、ジンが使い魔を追加して追跡している。捕らえた盗賊からアジトの場所を聞き出すより、逃げた奴の後を追うほうが早い。
が、すでに先に放っていた使い魔が、クラブ山の麓に盗賊団のアジトと思われる広場とその先の洞窟を発見した。
先の隊商襲撃で得た戦利品の馬車のほか、捕虜とされた女性数名を使い魔は捉えた。
「捕虜がいたか」
隊商の生存者がいたのは幸い。気をつけないといけないのはその救助。捕虜を人質にされると厄介この上ない。
「その時は、私が何とかしよう」
ジンが言った。
「そういう人質をとられた時の対処法は心得ている」
「そいつは頼もしいね」
ソウヤは少し気が楽になった。盗賊団との戦い自体はどうということはないが、やはり人質を盾にされた場合は、どうにも手が出しづらい。
「まずは人質を救出する方向で行こうと思う。何か意見は?」
「異議なし」
老魔術師が頷けば、ガルも無言で同意した。
「ミストは?」
「ワタシは敵さえ倒せればそれでいいわ」
「旦那、ちょっといいか?」
「なんだ、ライヤー?」
「人質を助け出すのは、あらかた盗賊を片付けた後のほうがよくないか?」
「というと?」
「助けたら、今度はそれを守らにゃいかんだろ? 盗賊が多い状況だと、守っている余裕がなくないか? こっちはたったの七人だぜ」
「大丈夫」
ソウヤは相好を崩した。
「救助した捕虜もアイテムボックスに入れる」
アイテムボックス内なら、ソウヤさえ無事なら人質に危害は及ばない。
「あー、盗賊たちを放り込んだアレか」
ライヤーはその場面を思い出した。
「その、アイテムボックス? 中で盗賊とかちあったりは……?」
「時間が止まっているところに入れれば、その間は何もできないから心配ない」
「そいつは凄ぇ」
古代文明研究家は笑みを浮かべた。
「それにしても、あんたら皆つぇーな!」
「君の銃の腕もな」
ジンがライヤーを褒めた。
「百発百中だったんじゃないか?」
「まあ、こいつがおれの武器だからな」
彼の腕前は、確かなものがある。ソウヤもそれは感じていた。後は特に出番がなかったフィーアだが……。
ミストが口を開いた。
「方針が決まったなら、先に行きましょう。連中に時間をあげることはないわ」
「そうだな。変な策を考えられる前に、とっとと始末しよう」
白銀の翼は行動に移った。敵の拠点と思われる洞窟を目指して。
ソフィアがジンから教わった使い魔の魔法を使って白い鳥を作り出した。それを上空に飛ばして、こちらがきちんとアジト方向へ向かっているかナビゲートさせる。
なお、森には盗賊の警戒網があって、所々に隠された見張り所があった。弓やクロスボウで武装した盗賊が潜んでいたが、ガルの地形を読み取るスキルとミストの気配察知で、ことごとく潰すことになった。
そうこうしているうちに、アジトにソウヤたちの進撃の報告が伝わったようで動きが見られた。
敵アジト上空で監視しているジンの使い魔からの報告によれば、盗賊たちが集まって迎え撃つ準備を始めたらしい。
敵の動きが筒抜けというのは、対策を考える余裕もあっていい。ソウヤは構わず、前進を続ける。
何てことはない。盗賊たちが集まるならば、そのまま正面から『踏みつぶす』だけである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます