1-58 テスト
───時は進み、一触即発の修練場にて
銀髪の騎士はダリルの顔を睨み付けながら返答を待つ。それが発する怒りのオーラからは口答えすら許されない雰囲気を醸し出していたが、
「その通りだが何か問題があるか?」
この男はヌケヌケと言い放ったッッ!!
「貴様まぁ····! よくもこの私の前で言い切りおったなあ!?」
まさに一触即発、二人の激突は不可避かと思われたが、
「·····落ち着けガナード『特級騎士』。そしてダリル、お前もそんな好戦的な態度をとるな」
ストレリチアが二人の仲裁に乗り出した。だが、ガナードの敵意は彼女にも向けられる。
「これはこれは、ストレリチア『剣聖』殿ではありませんか····· 私はこの男と話しているッッ! 関係ない貴女はでしゃばらないで欲しいですな」
「ストレリチア『団長』だ、一応な····· だから関係ないわけではない。隊員の勝手な行動を自制させるのも団長の務めだからな····」
この発言は火に油だった。ガナードはストレリチア相手に捲し立てる。
「団長であるならば何故貴女は黙っているのだ!! この男は栄光ある我らグランオルドルから戦場を奪おうとしいるだぞ!」
「····単純だ。この件は国防会議にて決定したこと、それに従うだけだ」
「今まで自由気ままに独断専行を繰り返してきた剣聖殿とは思えぬ発言ですな····! 例え国防会議の決定したことであっても私は従えません!」
「ならばお前はどうするのだ、ガナード?」
「こやつに決闘を申し込みます! そしてグランオルドルこそが此度の戦の先陣に相応しいことを証明するだけです!」
その言葉を待っていたと言わんばかりにストレリチアは口角を上げてほくそ笑むが、バレないよう手元で隠す。
「····お前の気持ち良く分かった。だが、それを証明するにはそれ相応の『証人』が必要だと思わないか?」
「····それはどういう意味で?」
「大臣及び国王陛下が拝見される御前峰試合で決着をつけろと言うのだ。それならば後で誰も文句は言わないだろ?」
「なっ!?」
ガナードは意外な提案に一瞬絶句するが、
「····良いでしょう。もとよりそのつもりであります····!」
「その意義や良し。御前試合は『三日後』故に二人とも準備をしておけよ。ダリルもいいな?」
「······俺も一向に構わん」
「よしそれじゃあ、これにて解散──」
「ちょっと待ちな」
ストレリチアの発言を遮るガナードの取り巻きの一人のドレッドヘアーの男、その男は前へ出てガナードの横に並び立つ。
「ストレリチア『剣聖』、幾らなんでも無茶じゃありませんかね? いきなり俺達『五星侠』トップの実力を持つガナードさんと、どこの馬の骨かもわからん男を御前試合させるなんてね」
「何か意見があるようだな、ドレファス。言ってみろ」
「なぁに、ちょっとテストしてみたいだけですよ。同じ拳闘士である俺と試合してもらってね」
「だ、そうだがどうするダリル?」
問い掛けるストレリチア、ダリルの答えは決まっていた。
「願ってもない、『鋼拳』と手合わせ出来るとはな·····」
『鋼拳』のドレファス特級騎士···· それはグランオルドルの最精鋭『五星侠』の一人であり、ドレファスはこの中でも異彩を放っていた。剣や槍などの武器を使う者がほとんどの中、この男が使う武器はそう!! 拳のみッッ!! ステゴロであるのだッッ!!
素手というハンデでありながらこの男は何故17歳という若さでグランオルドルの剣聖に次ぐ地位である特級騎士にまで登り詰められのだろうか?
答えは男の使う魔法! そう火魔法と土魔法の複合術式である『鋼魔法』であるッッ!!
この魔法の恩恵により、この男は身体強化魔法に加え鋼魔法により自身を硬質化させることによりあらゆる攻撃を耐えきり、そしてまさに鋼と化した拳によりあらゆる敵を打ち砕くのであるッッ!!
「嬉しいねえ、お前みたいな勘違い野郎にも知ってもらえていたなんてな。だが、その『鋼拳』てのはあまりすきじゃねぇんだよな····」
「ほう、では何て呼ばれたいんだ?」
ドレファスは右手の拳を強く握り、力強く語り始める。
「金剛だ···· 俺の拳に破壊出来ないものなんてねぇ。あのS級モンスター、オリハルコンドラゴンですら俺の打撃に耐えきれなかったんだ。だから『金剛拳』と呼ばれるべきだと思わねぇか?」
ドレファスは絶対の自信を持っていた、己の魔法に、己の肉体に····
今はまだ及ばないが、いずれは特級騎士トップクラスの実力を持つガナードは勿論、剣聖ストレリチアをも越える野心を持ちながら····· だが!!
「·····そんな実力を伴わない異名に拘ってどうする? 先ずは『鋼拳』に見合うだけの実力をつけることだな」
この男は真っ向からドレファスの自信を否定したッッ!!
「言うじゃねえかホラ吹き野郎がぁ····· 構えな格の違いを教えてやるよ·····!」──
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