1-33 ダリルは二度勘違いされる
王都に到着したダリル達はマリー以外は王宮の客間へ通されていた。
「マリーの交渉は上手くいってるかね~ ダリル?」
「·····マリーは約束は守る奴だ。あいつを信じて待とう」
客間には腕を組ながら窓の外を眺めるダリル、ソファーに寝転ぶプルム、そして椅子に座り眠りかけのベロニカの三人がいた。
彼らは魔王との接触のあと、急ぎランヌを出発し徹夜の移動でここ王都に到着したのである。
そして三人はマリーがいままさに交渉している王との面会を待っていた。
「休みのところを失礼する」
ドアをノックして入ってきた威厳溢れるナイスミドルの顔をみるやいなや、ベロニカは閉じかけた両瞼を全力で開き直立不動になって姿勢を整えた。
「べ、ベルモント騎士団長殿! 不肖このベロニカ、ただいま戻りましたッ!!」
「そこまでかしこまらなくて良いぞベロニカ、それよりも大義であった。任務の道中でマリー様をよくお救いになったな、お前には別途褒賞を与えるつもりゆえに、楽しみに待っておれ」
「は、はははぁぁぁぁ!! ありがたきお言葉ぁぁぁ!!」
90度きっちりにお辞儀するベロニカを横目にベルモントは男二人に目を向ける。
「お主らもマリー様を救ったこと感謝するぞ。特にダリルとやら噂を聞いておるぞ! あのゾルトラを打ち倒したと聞いたが本当か?」
ダリルはベルモントに目を向けると以外にも丁寧な言葉で喋り始めた。
「·····いえ、奴との決着はこの王都で決めると互いに約束している故、まだ勝敗はついておりません」
「ほう、以外と謙虚な奴なのだなお主は。して、勝機の方は?」
「無論、ありですッッ!!」
その返答に大いに気を良くしたベルモントは大声で笑い始めた。
「ハッハッハッ、剛毅! 実に剛毅だぞ! お主こそ闘神マルウスの再来かも知れんな!」
「勿体なきお言葉であります」
再び大声で笑い出したベルモントは再びベロニカの方に目を向ける。
「ところでベロニカ! 一応聞くがもう一人の『ダリル』とやらはどうした?」
ベルモントの当然の疑問、瞬時に察したベロニカはフォローに入る。
「······団長閣下、同一人物でございます·····」
「? どういう意味だベロニカ?」
「いえ、なので同一人物なのです···· あの性犯罪容疑者のダリルとここにいるダリルさんは····」
「·····ベロニカよ、お主もつまらん冗談を言うようになったな。この芸術的までに鍛えられ肉体を持ち百戦錬磨の面構えをしているこの武人と!! あの手配書に書かれているこの世の全ての気弱さをかき集めたような顔つきで、か弱き乙女を襲った卑劣極まりない悪漢と同一人物のはずがあるわけないだろうッッ!!!」
ベルモントは自分がベロニカにおちょくられていると考え語気を強め言いはなった。
しかしッッッ!! ベロニカとプルム、そして男ダリルのマジな目を見てベルモントは戦慄し、己の名誉をとして問いかけたッッッ!!
「·····一応聞くがお主はあのダリルと──」
「あのダリルと同一人物でございます閣下····」
「···········」
場を支配するは、気まずい沈黙ッッッ!!!
ベルモントも(言い過ぎなければ良かった···)と思ったが、後の祭りッッッ!!
だがこの沈黙は意外な人物の第一声で早くも破られたッッッ!!
「でもあの事件は冤罪なのですよね! ダリルさん」
「·····ああ、そうだな」
そうベロニカであるッッ!! 彼女は先を読んだのだ、過去の自分がそうだったように! だから彼女はフォロー出来たのだ、あの時の尋常ではない焦りを覚えているが故にッッ!!
ベロニカのパスを受け取ったベルモントもやっと口を開けたッッ!
「そ、そうであるか! 私もお主の冤罪を憲兵隊どもに強く主張する故、安心しろ!!」
「ありがとうございます、閣下····」
気まずい空気を打破したと感じたベルモントはこほんと咳払いをし本題に入り始める。
「私がここに来たのは礼を言いに来ただけではない。陛下との面会の件だが、マリー様の恩人故に陛下本人も会いたいと仰っているがお主達は平民ゆえ一対一の対話となると我々の体裁が整わない··· なので複数の政府重鎮が同席の謁見という形としたいのだが、宜しいか?」
「無論、問題ありません閣下」
「よし! ではもう少々時間が掛かる故、ここで待っておれ。準備が出来たら衛兵に呼びに行かせる」
そう言うとベルモントはそそくさと客間をあとにし、残されたプルムとベロニカは目を丸くしてダリルを見つめていた。
「·····なんだお前達、その表情は·····」
「いや~ いつものダリルさんだともっと、ねえ?」
「ああ、あの慇懃無礼な相棒がスラスラ敬語で話すなんて、ねえ?」
「俺が敬語を話しちゃ悪いのかッッッ!! ·····それに昔から尊敬しているからな、元『剣聖』ベルモントのことは」───
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