第25話 ノア、地下闘技場デビュー戦

 ノア・バッドリッチは自らの意思で奴隷に堕ちた。


 その理由は、そう遠くない未来。 断罪として性奴隷に堕とされる運命に抵抗するためである。


 ノアは転生者――――つまりは、精神だけ異界からやってきた訪問者。


 生前、成人男性だった彼は少女へ転生したのだ。 


 少女の肉体へ成人男性の魂。 


 「体に少女! 頭脳は大人! その名前はノア・バッドリッチ!」


 さて……


 だが、彼女はこの場所が、ただの異界という場所ではないと理解している。


 ここはエロげーの世界。 より詳しく言えば、生前の彼が遊んでいたゲーム『どきどき純愛凌辱シリーズ 魔法学園のエッチな私たち』の世界だ。


 なぜ、この世界がエロげーの設定と同じなのか?


 もしも、この世に神と言われる上位存在がいるならば――――


 「どうして、こうなった!」と問い詰めたい。


 例え神様が相手だって小一時間は問い詰めたいとノアは誓っている。


――――とにかく、


そのゲームでは、ノア・バッドリッチと言う名前の少女は悪役なのである。


~魔法学園のエッチな私たち~ とあるように、15才(このゲーム内に登場するキャラクターは全員18才以上です)となった時に魔法学園に入学する。


 そこで登場する主人公やヒロインたちと敵対していく。


 魔法学園という全体的に倫理感の低い場所。 貴族令嬢という選民意識。


 さらには真に邪悪なる意思たち。


 それらが兼ねそろえられて空間でノアは容易く、禁忌に万進して闇へ堕ちていく。


 その最後はエロげーらしく性奴隷として、あんな事やこんな事をされてしまう。


 純愛的なゲームの割にエロがハード路線であり、ノアの凌辱シーンにもかなりバリエーションが用意されていて、メーカーの力の入れ所が見て取れる。


 まぁ、これはそんな未来を変えようと、ノアが奮闘する話だ。


 今、彼女が自ら意思で奴隷に堕ちたのは、闘技者として実力を見せつける事で、もしもゲーム通りに奴隷堕ちしても性奴隷以外の価値を示すためである。 


 いやいや、運命を変えるなら、もっと冴えたやり方があるのではないか?


 そう思う人も多いだろう。


 だが、生前の彼――――ノアは極度の格闘技オタクであり、


 そして、あの日――――少女は運命と出会った。


 運命の名前は八極拳の達人である李書文。 彼はこの世界でエルフの女性に転生していた。


 武道武術の達人が女性やエルフに生まれ変わっている……なるほど、エロげーの世界的だ!


 書文に師事した幼少期のノアは、メキメキと実力をつけ、さらに大冒険と言え出来事を数多く体験した。


 さらに、書文以外の転生者である達人たちに武を授かり――――


 しかし、そんな幸福な幼少期も長くは続かない。


 書文には夢があった。


 一振りの剣、それに魔法。


 この世界の冒険者たちが、仲間たちと共に巨大な怪物に立ち向かっていく姿。


 書文の考えは――――


 所詮は自分1人だけ。 自分が強くあればいいという究極の我儘。


 それとは真逆である冒険者たちに心を奪われる何かがあった。


 自分には持ってない眩しい何か……


 それを目指し、書文はノアの元から旅立って行った。


 いつかの再会を約束して――――


 ノア・バッドリッチ15才、負けれない理由が増えた。


 だから、戦う。 


 運命に打ち勝ち、師匠との再会を果たし、そして自分も――――


 そんなノアの地下闘技場デビュー戦。


 地下闘技場。


 奴隷たちを戦わせようという悪趣味とも言えるイベントだが、ノアには都合が良い。


 闘技者として登録した日に、対戦相手が振り分けられ戦う。


 デビュー戦の奴隷なんかに準備期間なんて与えられない。


 闘技場の立つノア。 その姿は普段と変わらない。


 いつも通りのドレス姿。


 違うのは頭部の傷……もはや見えないほどに薄い傷ではあるが、感情が高ぶると痣のようにクッキリと浮かび上がる。それを隠すためにハチマキを巻いている。


 それと乱雑に拳に巻かれた包帯バンテージ



 そして、デビュー戦の相手が姿を現した。

 

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