第37話 夜空の雑念と城外戦

セリス達三人が起こした大爆発と同時に、一ノ瀬達五人はバレット王国の周囲に拡がる森で、ロゼッタは風魔法を放った。一ノ瀬達はその爆風に乗り、満月の空高くまであがった。




「やっぱりこの作戦どうかしてるよーー!?」




国内で飛行する魔族や国の兵士たちより遥かに高く、眼下には王国を一望できるなか、散々嫌がっていたリムが泣きながら夜空で叫んでいた。




空中への上昇が終え五人は空から落ちるように下降を始めるなか、ロゼッタがリムに喋りかけた。








「今さら何を言っても始まらないわ!貴女達の国を救うわよ!!」








ロゼッタの言葉を聞き流す様に、エリアスは降下による恐怖から瞳の光を失い、念仏を唱える様に独り言を発していた。




「飛行魔法を覚えてさえいれば、飛行魔法を覚えてさえいれば、飛行魔法を覚えてさえいれば 、、、」






「この状況を鑑みると、今まで経験した幾多の戦地の方がまだまともだな。」


滅多に弱音を吐かないアテナも、エリアス同様に心を失ったように呟いた。そんな中作戦の立案者である一ノ瀬は、予想以上の上昇により、声を裏返しながら着地に対しロゼッタに不安を漏らしていた。










「ロゼ!?これ着地まで考えて俺達を巻き上げたんだよな!?」




「ロゼッタさん!?大丈夫ですよね!?これ大丈夫なんですよねー!?」






一ノ瀬とリムの言葉が聞こえて無いのか、ロゼッタは下降を楽しんでいるようにも見えた。








「よっしゃー!国取りじゃー!!」








未だ心を失ったアテナとエリアスを他所に、一ノ瀬とリムはロゼッタに叫んだ。




「「話しを聞けーーーーー!!!!!」」












一ノ瀬達が夜空から降下してるなか、国内にいた三人は徐々に増えていく敵を圧倒しながら2つ目の門に向け進んでいた。








「退屈。かつての巨人族は防御力に長けていたはずだが、些か守りが衰えておるのか?」






「この場所は城から最も離れたばしょだ。おそらく、あの門の向こう側に力ある者達を集結させているのだ。」






「では、城門まであまり魔力を消費させないようにするのが無難ですね。早急にあの門に向かいましょう!」








セリス達は、手早く魔法で進路上の敵を投げ払い、道中戦いの死傷者を横目に城門に続く2つ目の門にたどり着いた。そこには粉々になった扉が宙ぶらりんになり、門にかろうじて付いている2つの扉があり、その先の光景は、今しがた通った町並みより豪華な造りの建物が無惨な姿を晒しており、先程よりも明らかに激しい戦闘が繰り広げられていた。その光景をみていたベルトレは一同に語りかけた。








「情勢は、バレット王国の兵が劣勢のようだな。周辺諸国も加わってはいるが、魔族軍と巨人族が圧倒している状況から察するに、三者三様の争いのようだな。それ以外にこの戦闘に別の組織の者達も加わっている風に見えるが?」








ベルトレにクラインが続けた。




「あの紋章は、この辺りの者達で結成されている他種族による裏の組織のものですね。」








クラインの発言にセリスは疑問を投げ掛けた。




「ソナタは何故あの組織の事を知っておるのだ?裏の組織であれば公なものではないだろうに?」










クラインは背後の敵に魔法を放ちながら答えた。






「私は、あの組織に助けられ、この国より逃げることができたのです。組織の名は【解放軍】。周辺諸国の民から貴族まで幅広く集った者達です。活動の目的は、王国に捕縛される罪無き自国民の解放です。」








クラインの話しの最中、城門側の魔族がこちらに気付き出し、とたんに魔法が嵐の如く放たれた。その時セリスはかつてゴーレムとなったレインとの戦いで見せたものより一際巨大な獅子の顔の付いた黄金の盾を出現させた。ゆっくりとした挙動で獅子は大きく口をひらき、無数に放たれた魔法を流れ込むように吸い込んでいった。


それと同時に獅子の盾の上方には、雌獅子の顔の付いた銀の盾が出現し、大きく開かれた口から先程獅子の口に吸い込まれた無数の魔法が魔族と巨人達に向け放たれた。












「ふむ。やはり先程の者達とはレベルが違うようであるな。ほとんどの者が今の攻撃に耐えるとは。久しぶりの戦だ!心おきなく楽しませてもらおう!」








そう口にしたセリスは、二人に視線を向けた。






「ということで、あの魔族達はわらわが相手する。他の者等はソナタ達が抑えよ!その間にわらわが魔族を退ければ進路がひらくであろう。」








勝手に仕切るセリスに多少の不服を懐いたベルトレだったが、今の戦力差から同意した。








「二人共、ここはまだ決戦の地ではありません。ですから、先に待つ玉座に進む為、倒れる様な事が無いように!」










クラインの言葉を皮切りに、三人は目の前の戦地に踏み込んでいった。




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