いってらっしゃい。帰ってくんなよ！！

１１話 愛情に飢えてる

「犬飼……」

「何？」

「………いや、なんでもない」

「何よ。気になるじゃん」

　そんな途中で切っちゃって」

「いいや。まだ今度言うわ！」

「分かった。良い内容だと期待して楽しみにしとく」

「嘘だろ！？　期待すんなよ！」

　笑顔を浮かべた坂上。

「……」

　これは何か隠してるな。

「何隠してるの」

「は？」

「だから、何隠してるのって。何か私に相談したいことあるんでしょ」

「……やっぱ、犬飼に適わねぇわ」

「どうしたの？」

「俺さ、彼女いたじゃん」

「うん。どの彼女？」

「ぅ」

「最新のあの彼女？」

「そう」

「何？　また言い寄られてるの？」

「……」

「え。まさかの図星？」

「そうだよ！！」

「あー。それで私に相談したい、と」

「そう。アイツ、浮気したくせにその彼氏と別れたらまた俺に言い寄ってくるってどんだけ飢えてるんだよ……」

「女ってそんなものよ」

「え？」

「男がいなくなったら別の男を探す。愛情に飢えてるの」

　これは女にしか分からない。

　彼氏がほしい。

　愛してくれる人がほしい。

　彼氏なんて本当に必要な時に対処してくれないのにね。

「飢えてる、か」

「そうよ。女が彼氏を作る理由なんて大半がそれよ。学生の時なんて特に」

　結婚を視野にいれてない遊び。

　大人になればなるほど恋愛に本気になる。

　子供の恋愛なんて遊びよ、遊び。

「犬飼がさ」

「ん？」

「犬飼が彼氏を作らない理由って、それ？」

「それって？」

「遊び？　っていうか、なんというか……」

「まあ、そうね。必要、助けを求めた時に対処してくれない男なんている意味がないわよ。未成年の男なんて特にね」

　自分の利益しか考えず、自己中心的に行動する。

「坂上と上川はそんな男じゃないって信用してるから」

　私は席を立った。

「ごめん。今日は一人で帰らせて」

「分かった」

　頭を冷やす。

　人に考えをぶつけたくない。

　人は人それぞれ、価値観が違う。

　今の私は自分の価値観を押し付ける気しかしない。

　だから、頭を冷やすの。