第1496話 べーニズム
「──ってことしている場合じゃねーんだよ!」
オレ、ここに来たのエルクセプルを売りに来たんじゃねーか! 競り、始まるんだよな? なにやってんだ、オレは!
「今さらなにを。いつものことじゃないですか」
ハイ、今さらですね。ごめんなさい。
脇道寄り道行き止まりな人生、どんとこい! な生き様をしているが、今回はうちの運営資金を稼ぐため。守るべく優先順位を忘れんな、オレよ。
「おじゃ魔女まじめさん。あとは頼むわ」
「お、おじゃ魔女? え?」
そんな戸惑いは己で解決してもらうとして、騎士のねーちゃんを探した。
屋敷の中に入り、嫁さんがいた部屋に向かったら闇夜の光のメンバーが揃っていた。いつの間に帰ってたん?
「べー様が脇道に逸れてたときですね」
ハイ、二度目のごめんなさい。気づきませんでした。
「ねーちゃん。あとは色っぽい魔女さんと話し合って進めてくれ。オレは競りにいってくるからよ」
そしてそのまま帰って来なかったら三度目のごめんなさいをさせていただきます。
「ちょ、放り出されても困るわよ!」
「わからんことは色っぽい魔女さんに訊け。主導権は大図書館に渡してあるんだからな」
「渡されたと言うより放り投げられたと思うのだけれど?」
色っぽい魔女さん、ちょっと出て来ないでくださいよ。話がややこしくなるからさ~。
「そこは意見の相違だな」
「あなた以外は放り投げたと総意してるわよ」
委員長さん。あなたもお黙りくださいませ。
「いずれ大図書館が仕切るんだから創意工夫でやれ。失敗しそうになったらオレが受け継ぐからよ」
先生を起こす準備しておくかな?
「ご主人様を起こすとか、命知らずはべー様だけでしょうね」
興味深いこと言えば起きるよ、あの先生なら。どうせエルクセプルのことを知ったら割り込んでくる未来しか見えねーな。
「ハァー。わかったわ。こちらで恙無く進めるわ。大図書館の名に傷をつけられないしね」
「矜持は大切だが、すべてを抱え込むなよ。無理と感じたらオレに言え。挽回できる人脈も技術もあるんだからよ」
「他人任せでなにをドヤってるんですか?」
皆の力はオレの力。オレの力はオレの力だ。
「なんの主義ですか?」
オレの主義です。
「つーことでよろしくな」
アデューと屋敷を飛び出して町へと向かった。
「べー! 待って!」
呼ばれて振り返ったらアリテラと斥候のねーちゃんが走って来た。なによ?
「見張りでしょうね。べー様がどこかにいかないように」
監視かい。まあ、監視をつけられてもしょうがないけどね!
「残ってなくてイイのか?」
「トコラとサライラが残れば問題ないわ。冒険者組合に報告もあるからね」
「好きにしな」
オレは他人の自由を阻害する主義はねー。イイように操ったりはするけど。
ねーちゃんたちを連れて町に戻り、適当に歩いてたら市会の代表と名乗った男と出くわした。オレの出会い運、ナイスです。
「よかった。市会がどこかわからんかったからよ」
「……無防備ですよ。もうあなたの存在は広まっているんですから」
「オレは必要とあれば目立つことも厭わねーぜ」
目立ちたくないなら目立たないように隠遁生活してるし、好き勝手生きてたら嫌でも目立つことくらいわかってる。エルクセプルを売ると決めたときから危険なことも想定してるさ。
出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれねー。やるヤツはアホ。気にする必要もねー雑魚だ。注意するのは取り込もうとするタヌキだよ。
「ザーネルさんを翻弄させるだけはありますね」
「ザーネル? 誰や?」
「わたしだよ! いい加減名前を覚えてくれ!」
後ろからチョップを食らわす巨乳なねーちゃん。出会い運さん、働きすぎよ。
「ねーちゃんの特徴ったらそのデカい胸か変態なところだけだからな」
と言ったらまたチョップを食らわしてきた。オレの周り、凶暴な女ばかりだな!
「自業自得って知ってます?」
暇になったら辞書で調べてみます。
「ハァー。まったく、連絡したのになにをやってるんだ。もう始まってるぞ」
「代表さんがやるんじゃねーんだ」
「わたしは市会の代表で、競り役ではありませんよ」
まあ、言われてみればそうだわな。考えなしでした。
「金はすぐに入るのかい?」
「競りが終わってから数日過ぎてからだ。べーが出したものがものだからな。出品者から渡してもらう。もちろん、市会も立ち会う。だからちゃんとわかるところにいてくれ」
「メンドクセーんだな」
「面倒なものを出したんだから面倒がらず最後まで責任を持って!」
ハイハイ。わかりましたよ。
しょうがないと、巨乳なねーちゃんに首根っこつかまれて競りが行われる場所へと連行されました。
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