第1387話 衝撃的事実!?

 外に出ると、雪がちらほらと降っていた。


「馬車でいくか」


 のんびり歩いていくと集落まで一時間はかかる。


 馬小屋──ってか、厩舎と呼んだほうがイイくらい立派に建て代えられてんな。自分がいなかった長さを感じるぜ。


「よう、リファエル。元気にしてたか?」


 誰だテメー? 不審者か? とか言わない馬でよかった。ただ、無反応なのはちょっと悲しいけど!


 リファエルを出して、南の大陸で作った荷車を取りつける。


「さあ、乗れ」


 うちの村ではワンダーワンドは乗杖禁止だ。


「ここに来たときを思い出すわね」


 オレは思い出せないが、なんか思い出に残るようなことあったっけ?


「リファエル、いくぞ」


 出発進行~茄子のお新香~。


 時速三キロくらいで集落へと向かった。


「オレ、村人してんな」


「馬車に乗ってるだけで?」


 そうだな。最近、馬車でないものばかりに乗ってたからな。馬車に乗るだけで村人感が出てくるぜ。


 山部落のだれとも会わずに山を下りてしばらく進むと、バンたちと遭遇した。


 誰? と思う方は最初からオレの華麗なるスローなライフの物語を読み直してくださいませ。


「誰に言ってるんですか?」


 オレの華麗なるスローなライフの物語を楽しみにしてくれる大きな友達にさ。


「よっ。これから仕事帰りか?」


 時刻的に午後三時くらいです。


「ああ。ってか、べーって村を出たんじゃなかったのか?」


「おいおい、オレはこの村で生きて、この村で死ぬことを誓った男だぜ。出ていけと言われても居座ってやるさ」


「お前が言うとまったく説得力がないよな」


 わかってもらえないこの悲しさよ。寂しぃ~っ!


「ま、まあ、オレはボブラ村を愛する男。村が平和であるよう陰日向にガンバってんだよ」


「そうだな。お前がいないと平和だと言われてるよ」


 ん? あれ? なんか意味違くね? それだとオレが騒がしくしてるように聞こえるんですけど?


「まあ、べーは好きにやればイイさ。じゃあな」


 と、バンたちが去っていく。


 なんだろう、この寂しさは。誰よりもガンバっているのに認められない。オレに足りないのは承認欲求が低いのだろうか?


「べー様は、自分がよければ他がどう思おうと気にしないですからね」


「やってることは自己主張が激しいけどね」


 幽霊とメルヘンの漫才なんか求めちゃいねーんだよ。他でやってろや。


 集落に入ると、ここも静かなものだ。外を歩いているヤツが誰もいねー。


「どこに向かってるの?」


「オババのところだよ」


 確か前に会ったの秋だったはず。なんで会ったんだっけな?


「領主さんの奥さんがキノコ病にかかってたときですよ」


 あ、ああ。あのときか。希に珍しい病気より濃い出来事がありすぎて忘れていたわ。いや、思い出したくない出来事だけどよ!


 薬所に到着する。


「ん? なんだ?」


 薬所からなんか凄まじい魔力が感じるんだけど、なんなんだ?


「こ、これって!?」


「か、館長の魔力よ! なんでいるの?!」


 あ、叡知の魔女さんの魔力だ、これ! 


 魔女さんがいっぱいいると魔力渦が起きて判別できなくなるが、魔力がないところで感じると叡知の魔女さんの魔力の凄まじさがよくわかる。この圧力、ご隠居さんレベルだな……。


 リファエルを木に繋ぎ、薬所へと入る。


「お、ニーブ。久しぶりだな」


 こいつとは一年振りくらいだな。


 ちなみにニーブはオレより年上だが、弟子としてはオレの下になります。


「本当にね。定期的に師匠に顔を見せに来なさいよね」


「オババならあと百年くらい死なんだろう」


 理由はないが、オババなら百年先でも生きている生命力を持っている気がする。


「叡知の魔女さん、なんでここに?」


 奥にいくと、叡知の魔女さんとオババがお茶を酌み交わしていた。老人会か?


「懐かしい友と昔話だ」


 ん? 友? え? オババと叡知の魔女さんが?


「オババ?」


「まさかお前がララと知り合うとはな。縁とは不思議だよ」


 あ、叡知の魔女、ララだった。ララちゃんと被るやん。改名しろや。


「あー。あのとき訊いたの、こう言うことだったのか」


 魔力回復薬のとき、驚いていた理由はオババが友だちだと気がついたからか。


「ん? 友ってことは、オババ、魔女だったの?」


 つまり、そう言うこと?


「バイオレッタ・ライジス。本当ならわたしの代わりに大図書館の館長をする女だった者だ」


 ………………。


 …………。


 ……。


「──オババ、名前あったんだ!?」


 ここに来て衝撃的事実をぶち込んで来やがった。


「いや、驚くとこ違うでしょ!」


 オレには名前があったことがびっくらポンである。

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