第1274話 特別賞の賞品は……

 闘技場の真ん中にテーブルと椅子を置いてマン○ムタイム。


 マ○ダムタイムなんだよ? と、平成生まれのご新規さんに突っ込まれるオレ、ヴィベルファクフィニー・ゼルフィング。十一歳の男の子です。


「急になんの自己紹介ですか?」


 オレの人生を観賞するイマジナリーフレンドへの自己紹介さ。フッ。


「……この人、本当に理解できない……」


 大丈夫。オレのイマジナリーフレンドは理解してくれるさ。し、してくれるよね? オレはそう信じるからねっ!


「そんなことより特別賞をなににするかだよ!」


「いや、わたしに逆ギレされても……」


 イマジナリーブレーンなんだからイイ案出してよ!


「あちらの世界の言葉で言われてもわかりませんよ。わざとなんですか?」


 思考するときは元の世界の言語や経験を頼るからそうなるんです。


「前世の知識があるのも面倒ですね」


 まったくだよ。


 いやまあ、前世の知識があることで助けられたことも多々あるが、前世に捕らわれすぎて奇人変人扱いされる欠点もある。


「奇人変人なのはベー様の本質ですよね? タケル様は至極まっとうですし」


 タケルは前世の体のまま転生だからだよ! 別の個体に生まれてたら奇人変人になってました。あと、あの腐女と比べるのは絶対に止めてくださいませ!


「……まあ、よくも悪くもベー様ですしね……」


 なんの納得の仕方だよ。いや、オレはオレだからどうでもイイけどよ。


「それより特別賞だよ。なににしたらイイんだよ?」


「考えて特別賞とか言ったんじゃないですか?」


 あのときはネタ武器を考えてたんだよ。なのに、千人規模で競争しやがて。こっちのことも考えやがれってんだ。


「ネタ武器でよろしいのでは?」


「特別賞とか言っちまったからな、同じじゃ芸がねーだろう」


 変な拘りなのは理解している。が、それを疎かにしたらオレじゃねー。拘ってこそのオレである。キリッ!


「それで悩んでいたら元も子もないじゃないですか」


 はい。まったくもってその通りでございます。


「どうすっかな~?」


 野蛮人なシープリット族が武器や名誉以外になにをやったら喜ぶんやろな? 


 カイナーズにいれば大抵のものは手に入るだろうし、住むところもあるはずだ。


「勲章でもやるか?」


「カイナーズにも勲章はありますよ」


 と、静かに控えていたミタさんが声を出した。


 いたんだ!? とかは面倒だからサラッと流してもらうよ。あと、ミタさんの他にもメイドさんはいますから。


「さらに言うならベー様を見張るように武装メイドさんも配置されてますね」


 もうオレには一人になることも許されんのか?


「気を許したら一人になるからの配置だと思いますけどね」


 君はプリッつあんの代わりか! オレに突っ込み担当はいらねーんだよ!


「そう言えば、プリッシュ様たち遅いですね? なにかあったんでしょうか?」


「なにかあったら呼びに来るよ」


 どうせメイドもついてるだろうし、ドレミの分離体もついている。タケルたちを襲ったヤツでもなければ立ち塞がることもできんよ。


「ドレミ。プリッつあんは?」


「嵐を避けるために無人島に停泊しています」


「停泊? なんで?」


 嵐になったら雲の上に出ればイイじゃん。浮遊石なら雲の上までいけるし、結界で気圧調整できるようにしてあるぞ。


「サリエラー号がついて来てますので待避したそうです」


「なんだ、赤毛のねーちゃん、ついて来たのか」


 ラーシュのところにいったら呼ぼうとしてたのにな。せっかちなねーちゃんだよ。


「ベー様が放置しすぎるからでしょうが」


「天の時、地の利、人の和ってな、物事にはタイミングがあるんだよ」


「だからあちらの言葉で言われてもわからないんですって」


 心を読めるんだから意味も読めろよ。万能幽霊なんだからよ。


「ベー様の深い思考なんて覗いたら奇人変人になるどころか廃人になりますよ」


 幽霊を廃人にするオレの思考、どんだけだよ? ってか、幽霊って廃人になんのかよ? なったとしてもそれ、フォログラフと変わらんとちゃう?


「……ベー様って、本当に意味不明です……」


 オレも幽霊がなに考えているか意味不明だけどな!


 ……つーか、オレの周り意味不明なのばっかりだけどな……。


「あ、プリッつあんで思いついた。アレにするか」


 喜ばれるかはわからんが、名誉にはなるはずだ。まあ、不満そうにしてたらネタ武器を渡せばイイさ。


「ミタさん。ちょっと──」


 考えていることを話すと、ちょっと考えてからスマッグを出してどこかにかけた。通じんの?


「……はい。はい。そうです。どうでしょうか? はい。そうですか。ありがとうございます。では、お願いします」


 スマッグをポケットに戻し、オレを見てにっこり笑った。


「式典部が全面的に協力してくださるそうです」


「それはなにより。ご苦労さんな」


 できるメイドとカイナーズホームに感謝です。

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