第1242話 党

 ヤンキー退治はカイナーズに任せ、メイドさんたちに炊き出しをお願いし、その間にオレはザイライヤーを診て回る。


 とは言え、五体満足なのが生き残っただけに病気な者はいない。野生で生きてるからか、治癒力も高く抵抗力も高い。薬師、いらねーじゃん。


 ……回復薬は大人気だけどな……。


「さすがに材料がなくなって来たな」


 誰かコピー能力持ってるヤツいねーかね? 錬金の指輪と魔力の指輪で短縮できるようになったが、材料集めはどうにもならんからな~。


「魔女さんたちに採取させるか?」


 魔女さんたちに回復薬作りを教えなくちゃならんし、それなら採取から教えるのもイイかもな。


「長さん。薬草の採取ができるヤツを何人か貸してくれ」


 薬師のばーさんの年齢を考えると、自ら採取に出ることはねーはずだ。


「……それは構わんが、今から採取にいくのか? なにか凄い音がしてるが……」


 あん? 音? あ、ああ。銃撃音や爆発音が響いてますな。なんかもう当たり前すぎて気にもならんかったよ。


 ……いや、銃撃音や爆発音に慣れる人生もどうかと思うけどな……。


「なに、すぐ終わるよ。この世でもっとも強い集団だから」


 カイナーズにかかれば大暴走などよいゲームでしかねー。野蛮人の血の気を抜くにもイイしな。


「それまで食って寝て鋭気を養え。その分は働いてもらうからよ」


 薬草採取は体力と手間がかかるもの。どんなに飲み食いしようが微々たる損失でしかないわ。


「ミタさん。魔女さんたちはまだトカゲさんたちのところにいるのかい?」


 ほんと、放置してばかりでスンマセン!


「はい。フィールドワークをしております」


 フィールドワークって、そんな言葉、誰が教えたんだよ? 丸投げしたいから誰か教えてよ。


「カイナーズの調査隊が教えていましたね」


 ほんと、なんでもいるな、カイナーズって! 


「なら、その調査隊も一緒に魔女さんたちを連れて来てくれや」


「畏まりました。リナイ。お願いしますね」


 控えていたメイドに指示を出すミタさん。ってか、いつもいる三人組のメイドの他にもメイドさんがいっぱいいるな。


 ……武装してるのは見えないことにする……。


 オレはジャッド村の長さんのところへ向かい、勇者ちゃんの情報をいただきますかね。ってか長さん、どこや~?


 村のもんに尋ねたら、お家で休んでいるとのこと。まあ、ヤンキーに囲まれて気が気じゃない日々だったのだから疲れも溜まっていよう。


「でしたら、あとにしてあげたらいいじゃないですか」


「今訊いておかないと絶対忘れる自信がある」


 出会い運に任せればイイのだが、情報があるなら仕入れておきたい。勇者ちゃんってなんか、オレの出会い運をすり抜ける感じがするんだよな。


「長さん。休んでるとこ済まないが、ピンク髪の少女のことを教えてくれや」


 お家の中には主要メンバーな感じのご老体たちがいました。


「勇者と名乗っていた娘か?」


「そうそう。その勇者ちゃんだ」


 ってかオレ、勇者ちゃんの名前知りませんわ~。まあ、聞いたところでオレの中で勇者ちゃんは決定だがよ。


「グランドバルにいったよ。かれこれ一月前になるかかの?」


「グランドバル? それは町かい?」


「隣の党が支配している地だ。ちなみにここはサイルアン党が治めている」


 党? 派閥統治なのか?


「ここって、帝国傘下なのかい?」


 ラーシュの国は帝国で、いくつもの国を傘下にしていると書いてあったが、党とかは書かれてなかった。他所の国と書いてあったし。


「そうだとは聞いているが、わしらにはよくわからん。上に従っているだけだからな」


 まあ、末端の者からしたら村がすべて。三十キロ先など別世界だ。ましてやこんなジャングルに住んでたらわかるはずもねーか。


「よくわからんが、そのグランドバルとやらは遠いのかい?」


「歩いて二日くらいだな」


 あれ? 意外と近い? 一日三十キロ歩いたとしても六十キロなんて近所やろ。まあ、それはちょっと言いすぎかもしれんけどよ。


「勇者たちは、そのとき食料は足りてたかい?」


「大丈夫とは言っていたな」


 まあ、女騎士さんにも収納鞄や予備の収納ポーチも渡してある。無茶しなければ半年は余裕なはずだ。


 しかし、なんで徒歩移動なんだ? ルククに乗っていればラーシュのところにいけるはずなんだがな? なんかトラブルに見舞われてルククとはぐれたのか?


 無鉄砲な勇者ちゃんだし、あり得そうだ。いかなきゃ! で、ルククから飛び降りている光景が目に浮かぶぜ。


「ミタさん。周辺の地図とかある?」


 カイナーズなら航空写真とか撮ってそうだ。


「地図はまだですが、周辺には探索隊を出しているそうですから三日もあればできると思います」


 三日か。まあ、よさげな時間だな。


「明日から薬草採取をするから魔女さんたちに服とか装備を用意してくれ」


 どんなかはミタさんにマルッとサクッとお任せします。


「畏まりました。用意します」


 もう夕方だし、明日のために早く寝るかと、ゼロワン改+キャンピングカーを出した。

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