第1196話 フラグを全力で振るのがベー

 フ◯ーチェを美味しくいただき店を出た。


「……種族は違えど女の香りはキツいわ……」


 あ、別に嫌悪とか非難してるわけじゃないよ。ただオレにはキツいってだけ。女の香りが大好きな人は喫茶店岬に是非ともお越しくださいませ。


 いけねーよ!


 なんて突っ込みは聞きませんのであしからず。


「おーい! お前らいくぞ~!」


 なにやら客に餌をもらっている珍獣ども。ブルー島のマスコットになったか?


 餌付けされてこなければここに放置──ではなくそれぞれの意志を尊重してやったのに、珍獣どもがやって来てしまった。


 ……なんでオレはこんな珍獣に好かれるんだろうな……。


 おっと。同類だから? なんて言ったら泣くからな。言葉には気をつけてくれよな。


 目的地に向かって歩いていると、迷彩ズボンにTシャツを着た青鬼の少女とメイド服を着た赤鬼の少女がベンチに腰かけて楽しくおしゃべりしていた。


 ……赤鬼と青鬼を見ると泣いた赤鬼を思い出すな……。


「ん? あの青鬼っ娘さん、どこかで見たような……?」


「──魔大陸のシーカイナーズにいた娘ですよ。確かタエコ、と言ったはずですよ」


 と、レイコさんが出現して教えてくれた。


 本当にこの幽霊は突然出て来るよな。いやまあ、完全に忘れてるオレが言っちゃダメだから黙ってるけど!


「あ、ベー様!」


 二人がオレに気がつき、慌てて腰を上げて九十度に近いお辞儀をした。オレ、恐れられてる?


「休みなんだからそんな大仰なことしなくてイイよ」


 仕事とプライベートを分けてこそ立派な社会人だぜ。オレはまだ子どもなので仕事もプライベートも一緒にしちゃいますけどね!


「はい、すみません」


 謝ったのは赤鬼っ娘のほう。青鬼っ娘さんはなぜか敬礼している。なんでや?


「まあ、休みは楽しくすごせや。んじゃ」


 雇い主がいたんでは気がやすまらないだろうと、さっさと退散することにした。


「あ、あの、ベー様はどちらにいかれるんですか?」


 と、なにか慌てた様子の赤鬼っ娘さん。なんやねん、いったい?


「ちょっと外にな。こいつらが肉食いたいって言うからよ」


 肉を持って来なかったことにギンコが足に噛みついてるが、オレのズボンは竜に噛られても大丈夫な仕様である。さらに五トンを持っても平気な体なので甘噛みにも劣るぜ。


「あ、あの、それをミタレッティー様とかにおっしゃいましたか……?」


「いや、言ってねーけど?」


 すぐ帰って来るし、いちいち言う必要もねーだろうが。


「タエコ、ベー様についていて! 絶対よ!」


 と叫ぶと、どこかへと駆けていってしまった。だからなんやねん?


「え、あ、な、なんなの!?」


 わからないのは青鬼っ娘さんも同じらしく右往左往していた。


「変な友達だな」


 まあ、友達に変なとは失礼な物言いだが、そうとしか言いようがないんだからしょうがない。どうオブラートに包んでイイかわからねーよ。


「あれ、絶対ベー様がなにかやらかすと思って報告に駆けていったんですよ」


 なんとも失礼なことを言う幽霊ですこと。ただ下に降りるだけじゃねーか。それでどうやらかすんだよ?


「転移結界門を設置したらすぐに帰って来るよ」


「そうならないのがベー様じゃないですか」


 いやまあ、そうならないことは確かに多いですよ。でも、だからと言って毎回ではねーですたい。今回はなにもないってオレの勘が言ってるたい。


「別について来なくてもイイからな。休日を楽しんでろ」


 青鬼っ娘さんの休日を潰すのは忍びねーからな。


「い、いえ! ついていきます! なにかあったらミカホシ様に怒られます!」


 ミカホシ? 誰や? 


「まあ、そう言うなら勝手にしな」


 青鬼が真っ青とかなんの冗談かと思うが、今にも漏らしちゃいそうな勢いだ。そうなられても困るので同行を許すことにした。


「せっかくの休日なのに可哀想」


 トラブルメーカー扱いされてるオレのほうが可哀想だと思うんですけど。とは言わないでおく。なんかフラグを立てそうで怖いから……。

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