第1145話 お洒落マスター
とは言え、いつ出会うかはわからねーのがオレの出会い運。一分後か一時間後か、それとも今日か明日か、正解な時間などわかりようもないのだから慌ててもしかたがねー。成るように成るでやるしかねーのだ。
「そう言や、服って受注制なのか?」
服に興味なかったから気にもしなかったが、この時代に既製品とかねーはず。大体がオーダーメイドか中古だ。まあ、貴族相手の商売だから中古はねーと思うけどよ。
「ううん。いろんなサイズが用意されてるわよ。試着とかできるようになってるし」
と教えてくださったのはメルヘンさん。なんで知ってんのよ?
「レイライたちとお店を回ったから」
誰よ、レイライって? ほんと、君はオレの知らないところで友達つくりまくるよね。どんな極意使ってんのよ?
「ラフな服も売ってんのか?」
「んー。わたしたちからしたら完全にドレスだけど、貴族にしたらラフなドレスは売ってたわよ」
誰のなにから目線かは知らんが、一般ピープルの服はないってことね。
「でも、小物は充実してたかな? ブローチとか髪留めとか。可愛い手袋や帽子があったわ」
ほんと、君は自由なメルヘンだよ……。
「結構豊富なのな。ってか、お洒落を披露する場なんてあんのか? 貴族のお嬢さまだぞ」
貴族の習わしや決まり、礼儀等は勉強したが、女子のことはまったく知らねーのだ。関係ねーと思って情報収集しなかったのだ。
……男にとって女の社会は奇々怪々。いや、アンタッチャブル。軽々しく触れてはいけないのだ……。
「それが結構あるらしいわよ。いろんな社交クラブってのがあって、そこで見せ合うんですって」
……それはまた、ドロドロなもんが満ちてそうだな……。
「帝都ではベー様がお作りになった簪が人気になっていると聞いておりますよ」
帝都で? と疑問に思ったが、サプルが広めたのだろう。お洒落グッズを持たせてるからな。
「意外と帝国って女に優しいのな」
前世の昔なら女は道具とかなのに。さすがファンタジーな世界だぜ。
「恋愛は自由にできないみたいだけどね」
メルヘンに恋愛とかわかんのか? 羽妖精に男がいるとか聞いたことねーが。
まあ、オレも恋愛がわかるかと言われたらわかんねーと答えざるを得ねーが、この時代で恋愛するのは大変だろう。ましてや身分制がある世界(国)では苦難でしかねーな。
昼食が終わり、残ったものは無限鞄へと仕舞い、飲み物はミタさんの配下にお任せ。では、買い物を再開しますかね。
「どこから回る?」
「そうだな。装飾品からいくか。値段とかデザインを知りたいし」
装飾品にも流行り廃りがあり、値段もピンキリだが、帝国産というだけで他の国では人気がある。ましてや他の大陸に持っていくには最良の貢ぎ物となるだろうよ。
「ベーってそう言うの好きよね。自分がつけるわけじゃないのに」
「オレは作るのが好きなの」
職人になるほど情熱はねーが、作ることには心踊るのだ。
「じゃあ、見るだけなの?」
「いや、買う。装飾品はあって困ることはねーし、転売できるからな」
将を射んと欲すればまず馬を射よ。権力者に取り入ろうとしたら奥さまから射止めるのが早い。その弾(装飾品)はいくらあっても困らねーのだよ。
「プリッつあん、気に入ったものを選んでくれ」
悔しいが、お洒落マスターなメルヘンのセンスに間違いはねー。きっとイイものを選び出すことだろうよ。
「うん、任せなさい! いいのを選んであげるわ!」
お願いしやっす!
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