第1031話 待機

 徐々に距離が開き、波に隠れてきたので、潜望鏡のようなものを結界で創り、未来的戦艦とカイナーズを見ていた。


「カイナの指揮じゃねーな」


 未来的戦艦の死角に入り、砲弾を浴びせる戦艦の動きが、カイナの性格にあってないように思えた。


 アレは全体を見て指揮をするタイプではなく、最前線に立って、突貫! とか叫びながら突っ込むタイプだ。


 そうなると、あの戦闘機にカイナが乗ってそうだ。


 サプルのようにアホな動きはしてないが、人だったら確実に気絶している動きをしている。


「あいつもよくわからん拘りを持つよな。神に近いくらいの力を持ってんのによ」


 体一つで未来的戦艦にも勝てるのに、前世の武器でしか戦わない。まあ、他のことには使うけどよ。


 前世の戦闘機では勝てないとわかっているのに、それでも戦闘機での戦いを止めない。ただ、ミサイルは力を使って尽きないようにはしているようだが……。


「ん?」


 なんか視界の下になにか映ったと、潜望鏡結界を下に向けると、小型の船が数十と未来的戦艦に向かっているのがわかった。


「え? 乗り込む気か!?」


 そのまさかで乗り込みやがった。メチャクチャだな!


 牽制のために戦闘機群は未来的戦艦の周りを飛ぶが、戦艦からの攻撃は止んだ。


 ミサイルや砲弾が当たってもびっくともしないのに、浸入なんて可能なのか? と思って倍率を高めたら、いろはが見えた。


 いや、そこまでしろとは言っ……たっぽい、か? ま、まあ、いろはなら問題なかろう。


 その読み通り、いろはさんが換気口っぽいところからにゅるっと浸入。特殊部隊のような格好をしたヤツらを招き入れた。


 未来的戦艦は、複数人で操っているようで、徐々にビームが止んでいく。


「詰んだな」


 敵がどんなかは知らんが、操るものなら中のヤツらを封じたら動かない。もう勝利は覆らないだろうよ。


 あとはカイナに任せ──と潜望鏡結界から目を離そうとした瞬間、未来的戦艦の艦橋が爆発。その中からなにかが発射された。


 すわ、大陸弾道弾か!? と思ったが、なんか未来的飛行機っぽい。


 空を旋回していた戦闘機や戦艦がミサイルを発射させるが、未来的飛行機の速度に追いつかない。白い雲を生み出しながら空の彼方へと消えていってしまった。


「……逃げるか……」


 どんなものにも脱出機構をつけるのは基本だが、それを発動させるのは人の判断。一つだけしか発動しないってことがそれを証明している。自動だったら他にもあるはずだし、救命艇なり出るはずだしな。


「自分だけ助かるために逃げたら脅威でもねーが、なにかを守るためなら脅威でしかねーぜ」


 考えるな、感じろ的に後者だろうな。


 まあ、それならそれで構わんか。こちらもそのほうが助かるしよ。


 空の彼方へと消えた未来的飛行機から未来的戦艦に目を戻した。


「……消えない、か……」


 これで消えてくれたら万々歳なのだが、そう都合よくないか。


「今度は艦隊でやって来そうだな」


 敵の能力は謎だが、恐らくエリナ系の能力だろう。しかも、無尽蔵なエネルギーを持つとか反則だわ。


「まあ、それもタケル次第か」


 今度こそ潜望鏡的から目を離した。


「ベー様! 島が見えてきました!」


 とのミタさんの声に、潜水艦からクルーザーへと移った。


 船首に立ち、島を眺める。


 結構、デカい島のようで、視界からはみ出しており、南国の諸島ってよりアジアの諸島って感じだった。


「海賊とかいそうな雰囲気だな」


 切り立った崖や柱のような岩島などの陰から今にも海賊船が出て来そうだ。


 まあ、出て来たら即沈めちゃいますけどね。


「とりあえず、潜水艦が入れそうな入り江か接岸できる場所を探そう」


 落ち着ける場所なら文句は言わねーよ。


 ミタさんに任せ、また潜水艦へと戻った。いつ中から出て来るかわからんし、腹減ってんなら料理を出してやりたいからな。


 潜水艦の甲板にテーブルと椅子を出してマ○ダムタイムと洒落込んだ。


 ん~。コーヒーうめ~。

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