第1028話 バッターアウト

 未来的潜水艦と未来的戦艦が戦っている。


 そう。そこは、ファンタジーな世界からSFな世界へと変わっていた。


 ビームみたいなものが尽きることなく乱舞し、ミサイルが雨のように降り注いでいる。


 ──オレはどんな世界に転生したのよ! 誰か教えて!!


 とか叫びたいが、もはやそんなことを言えるような空気ではねー。ってか、こんな殺伐とした空気はノーサンキューだわ!


 オレの考えた最強のスローライフには戦闘の文字はない。が、降りかかる火の粉は絶対零度で振り払う主義。一切の妥協はねーのだ。


 殺戮阿で打った炸裂型結界球は、乱舞するビームに撃ち抜かれたが、それは想定内。お前の敵が来たことを教えてやったまでだ。


 轟牙の今のサイズは二メートル。敵の目がどんなものかは知らないが、炸裂型結界球の爆発は見えてんだろう。節穴なら殺戮技が一つ、炸裂拳を食らわしてやるわ。


 が、敵はモコモコビームを撃ったときからこちらを警戒した。


 誰かは知らんが、こちらに向けてくる明確なまでの殺意と敵意は強者のそれだ。勘に近いまでのレーダーでオレを認識したのだろう。


 そうなるよう、炸裂型結界球を打ったんだからな。


 とは言え、全砲塔をこちらに向けるのは勘弁してください。さすがに股間がキュッとします。


 全砲塔がキラリと煌めき、たぶん、波動砲の光ってこんなんなんだろうな~とか言うくらいピッかてる。


「結界十枚張り!」


 前方に能力限界までのヘキサゴン結界を十枚創り出した──その直後、太陽が爆発したんじゃないかと思うくらいの光がオレの視界を奪い去った。


 一瞬にしてヘキサゴン結界が八枚まで破られ、不味い! と思った同時にさらに十枚を張る。


 だが、光は収まらず、十九枚まで破られた。なんつー威力だよ!!


 最後の一枚が辛うじて光を遮ってくれた──が、オレの考えるな、感じろが緊急警報を最大で鳴らした。


「──転移バッチ発動!」


 で、ブララ島へと転移する。


「──クソ! 強すぎんだろうが!!」


 なんて怒る暇はなし。考えるな、感じろに任せて二十四数えて転移バッチを発動。もとの位置に転移した。


 転移元に爆煙が残っているところを見ると、ミサイルを射って来たのだろう。容赦ねーな!


 未来的戦艦から注がれる殺意と敵意からまだオレに集中している。


 意識を向けてもらうようにしてはいるが、オレは戦いをおもしろいと思う癖はねーし、とっとと終わらせたい質だ。去ってくれと切に願う。


 だが、あの未来的戦艦に乗ってるヤツか、指揮しているヤツは確実に戦いを楽しむタイプだ。賭けてもイイ。自分が満足するまで止まらないだろう。


「ならば、付き合ってやるよ!」


 オレは試合は全力で楽しむタイプ。お前にドデカい一発──いや、七回コールドにしてやんよ!


「まずは殺戮技が一つ、ジャイロボール!」


 五トンのものを持っても平気な体とは言え、あの未来的戦艦の装甲を破れるとは思えねー。だから、逆に包み込んでやるわ。


 空飛ぶ結界の上で投球を構え、能力最大で投げ放った。


 大リーグワンを撃ち落とそうとミサイルをアホみたいに射ち出すが、オレのジャイロボールは予測不可能。ミサイルで射ち落とせると思うなよ!


 ミサイルが雨霰とジャイロボールに襲いかかるが、一発も当たらないし、爆風でも軌道は逸らされない。まるで生き物かのように未来的戦艦にストライク。


「おっしゃー! オレ天才!」


 なんて喜んでいる場合ではない。未来的戦艦に近づかねば!


 ジャイロボールから生み出される結界では未来的戦艦の一部しか覆えない。いや、やろうと思えばすべてを覆えるが、強度が薄くなる。それでは目的が果たせないのだ。


 当たったことに動揺したのか、攻撃が止んだ。


 与えられた隙はありがとうの精神で突かせてもらうと、さらにジャイロボールを投げる。


 そして、ツーストライク。さらに未来的戦艦を包み込む範囲を増やした。


 先ほどより弱いビームを躱しながら第三球。その結果を見ることなくビームが直撃。意識が飛びそうなくらいの衝撃に襲われた。


 だが、必死に意識を繋ぎ止め、荒れる空飛ぶ結界を正常に戻す──と、また未来的戦艦の砲塔が輝いた。


「ケッ! 同じ攻撃が二度も通じるかよ!」


 S級村人をナメんじゃねーぜ。


 視界いっぱいに光が占める。


 が、すぐに光が弾け、爆発音が轟き、掠めるようにビームが通りすぎていった。


「ストライク! バッターアウト! さあ、オレたちのターンだ、ガンガンいこうぜ!」


 誰かに向けて拳を突き出しながら落下していった。

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