第927話 ココノ屋
いろいろ突っ込みたいが、オレは値切りはしない主義だし、言い値で買ったのはこちら。文句を言ったら負けなので、黙ってキビダンゴを口にした。
「……旨いな……」
駄菓子屋のキビダンゴって、こんなに旨かったっけ? これはもう、銀貨一枚出しても惜しくはねーぞ。
「串カステラちょうだい」
「五メダルだよ」
それには、どう突っ込んだらイイんだ? と、存在を消したコンシェルジュさんに目で問うた。
いたんだ! って突っ込みはいらないから。カード買いしてんだからコンシェルジュさんがいるに決まってんだろうが。
……周りに誰もいないようにすごせるオレ、かっけぇぇぇ……!
「アホじゃない」
誰が言ったかは君の想像に任せよう。オレはノーコメントです。
「……ゲームセンターに両替機がありまして、ゲームセンターとココノ屋でしかメダルは使えません。値段が値段なので」
駄菓子、一個五億円なら殺戮阿吽を出して暴れるが、コンシェルジュさんの口調からして駄菓子の単価が安すぎて円では対処し切れないんだろうよ。
その両替機へ行くと、十円でメダル三十枚に両替されるようだ。
……画期的なのかアホなのかよーわからんな……。
「つーか、あのやりとりはなんだったんだよ?」
歴史上類を見ないくらい五億円を消費した瞬間だったぞ。
「申し訳ございません。ココノ様は天の邪鬼な方なので」
天の邪鬼なタヌキ。想像できんわ。
「……様、ね。カイナーズではひとかどの存在なのかい?」
コンシェルジュさんの口振りやあの存在感(姿は除く)で、ひとかどの存在とはわかるが、姿形と先程のやりとりで正しく見れなくなったわ。
「魔王ハルハマに仕えていた大幹部で、創造具現化と言う特殊能力を持った方です」
カイナみたいな能力か?
「まあ、あの通りの方なので、カイナ様も扱いに困っています」
カイナが困るってどんだけだよ!? 人格破綻者なのか?
「……なるほど。隔離されてるわけか……」
オレの呟きに肯定も否定もしないコンシェルジュさんは。それはもう肯定してるのと同じだよ。
そんなヤツと関わりたくないが、どうもオレの考えるな、感じろが興味を抱いている。
それがなにかはわからないが、あの駄菓子の旨さは気に入った。オヤツに買っていくか。
コンシェルジュさんに一万円を十円玉に両替してもらい、メダル両替機に投入した。
「さすがに量がスゲーな。コンシェルジュさん。なんか入れ物ない?」
「これをお使いください」
と、バケツを渡された。なぜに!?
ま、まあ、大量に入るし、持ち運びも便利だしと、両替したメダルをバケツに流し込む。
「メダルをバケツに流し込むとか、初体験だわ」
十円玉を連続で投入してるから受け皿からメダルが溢れ、持ってるのもメンドクセーので下に置いた。
「あ、ベー。メダルもらうね!」
バケツ一つでは足りなく、新たなバケツにメダルを流していると、ルンタ(今さらですが、人化してますね)が現れてバケツを持ち去っていった。
「まだやってんのかよ。飽きねーヤツらだ」
パチンコもそうだけど、よく飽きずに何時間もやってられるよな。前世で開店から閉店までやってるヤツが結構いたっけ。
好きなことは好きなだけやれだが、ギャンブルには自重が大切。依存になる前に強制終了させるか。
昼までにはまだ時間はあるし、ミタさんのほうの買い物(なにを買ってるかは知らん。別行動しますとしか聞いてないんでな)が終わってない。駄菓子を買いながら待ちますか。
駄菓子屋に戻り、駄菓子を大人買い──してるのだが、なぜか一向に駄菓子がなくならない。カイナーズマジックか!?
「こんなものか」
自分が食う分なんだし、足りなくなったらまた買いに来ればイイさ。
先程の椅子に座り、えびみりん焼きをパクつく。うん、これには炭酸ジュースだな。
「ばーさん、ラムネある?」
「四メダルだよ」
最初で最大限にぼったくる。このばーさんタヌキ、なかなかやるな。
なにに感心してんだよとは自分でも思うが、隔離されるだけの強かさとズル賢さに、なんか興味が出て来た。
四メダル払い、ラムネをいただいた。
「これも旨いな」
やはり、確実に前世のラムネとは違う。旨さが倍増している。
考えるな、感じろが働いてないから危ないものは含まれてはいないだろうが、どうすれば旨さが倍増するんだ?
「錬金術師なのかい、ばーさんは?」
「ただの駄菓子屋の婆だよ」
そこには触れるな、と言うよりは昔の自分は捨てたって感じかな?
「ここは、居心地イイかい?」
「穏やかでいいところだよ。変わった客も来るしね」
「そりゃなによりだ」
ちなみに、変な客にオレは含まれてないよね?
「筆頭じゃない」
ここにいるのはオレ、コンシェルジュさん、ばーさんタヌキ、以上デス!
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