第722話 しまらねーな
と言うことで、マスドライバーはカイナに丸投げ。ガンバって宇宙を目指してください。
「カイナ、たまには帰って来いよ」
「うん。ある程度軌道に乗せたら帰るよ。ジオ・フロントも途中だしさ」
と、挨拶し、青鬼っ娘さんの運転で空母へと戻った。
「オレは部屋を片付けて岩さんに報告したら帰るが、プリッつあんとミタさんはどうする?」
なんか店とかやってたよね。どうなってるかは知らんけどさ。
「今教育中だから、あと二日くらいはいるかな?」
なにやらすっかり商売人になってるメルヘンさん。もうオレの頭の上から旅立ちなよ。
「わたしも二日くらいしたら帰ります。それくらいで頼まれていた手伝いが終わりますので」
万能なミタさんだし、いろいろ頼まれてんだろう。司令官さんの話では、カイナーズの名誉部長(どんな地位かは知らん)らしいからな。
「まあ、日にちはそれぞれに任せるよ。あと、乙女騎士さんとか、あと、誰かいたような気もしないではねーが、ミタさんに任せるわ」
小人族の連中は、シーカイナーズと合同演習(?)するとか言ってたから司令官さんに任せた。イイようにやってくれ。
「運転ありがとな」
青鬼っ娘さんに挨拶して借りてる部屋へと向かった。
まあ、借りてる部屋なので、荷物はそんなにねーが、造りかけのヴィベルファクフィニー号(機関部なしの側だけね)があるだけだ。
分解できるようにしてあるので、パーツ分けして無限鞄に仕舞った。
「そう言や、機関部できてっかな?」
ヴィアンサプレシア号の機関部を頼むとき、もう一台頼むと言っておいた。あの短期間で一台造ったんだからもうできてんだろうよ。
「ドレミ。いくぞ」
あの二人に比べたら存在感は薄いと思われがちだが、オレの中では一番存在感がある。まあ、あの二人には内緒だけどね。
頭の上の住人が不在なので、特別に頭の上に乗せてやる。
「はい」
と、猫型ドレミが頭の上に飛び乗った。
オレの頭からなにか出ているのか、ドレミが嬉しそうに喉を鳴らしている。
……なんだろうな。最近、ドレミに感情が生まれ、いや、出て来てる感じがするな……。
スライムに感情? とか違和感全開だが、元が元なだけになんでもありだ。感情どころか神になってもオレは驚かねーぜ。
頭の上のドレミの喉をわしゃわしゃしてやってから転移バッチで我が家へと帰った。
「ん? 夜か」
館の前に転移すると、辺りは真っ暗になっていた。
上に目を向けると、綺麗な星空が広がっていたが、月は見えなかった。
……午前三時か……。
タケルからもらった腕時計型通信機は、その地域の時刻になるように設定してあるんだとさ。これも万能なやっちゃ。
「時差のことまで考えてなかったわ」
なんかいろいろスルーしなくちゃならないことが多すぎて時差まで頭が回らなかったぜ。
まあ、アダガさんから魔大陸は遠いと聞いてたし、十日近く船旅してたんだから時差が出てもしょうがねーか。
「今から寝れんし、ちょっと散歩でもしてくるか」
まあ、ド田舎なので光源は星空しかねーし、景色は見れねーが、まったく見えねーってわけじゃねー。
それに、十一年生きて来た村である。星明かりさえあれば充分歩ける。村人ナメんなよ、だ。
今の時間に起きてるヤツはいねーと思うが、万が一いたら厄介なので結界迷彩発動。我は闇と化す。
こんな時間に出歩いてるなんて不審者と見られても文句は言えねーし、平和な村を騒がせるのも申し訳ねー。気遣いのできる村人は、誰にも知られずこそっとやるもんだ。
山を下り、集落を抜けて港へと出た。
会長さんの船をつけた岸壁に、土魔法でテーブルと椅子を創り、コーヒーを飲みながら日の出を待つ。
しばらくして陽が海面に現れた。
それをなんとはなしに眺め、太陽の光を全身に浴びた。
「……さて、今日はどんな楽しいことがあるかな……?」
なにか、オレの背後でエンドロールが流れ、最後に幕が閉じそうな雰囲気だが、『なんの最終回よ!』とか突っ込んでくれる者はなし。
「帰ろ」
片付けて我が家へと戻った。
……なんつーか、オレの人生、突っ込みするヤツがいねーとしまらねーな……。
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