第654話 基地設置

 王さまがいる部屋を出る。


 と言うか、技術少佐たちいたね。すっかり忘れてました。


「ワリーな。アレの相手すんのが精一杯だったわ」


 アレを相手に余裕でいられるのは人間辞めたヤツぐらい。まだ人であるオレには荷が重いぜ。


「あ、いえ。と言うか、相手できるベー様が凄いと思いますよ。あの、禍々しい気配の中、平然としていられるんですから」


「人魚ってあんなに恐ろしい生き物だったんですね」


「ああ。おれ、人魚ってもっと夢がある生き物だと思ってたよ」


 それが現実とは言え、アレはねー。夢と希望もねー。ウルさんが天使に見えて来たわ。


「……申し訳ない。母は父に執着しているもので……」


 姫戦士が謝ってきた。


「まあ、それだけ王さまを愛しているってことだろう。イイんじゃねーの」


 オレには関係ねーし、関わる気もねー。でも、呪い返しはしっかりしておこう。あれは下手な人外よりタチがワリーよ。


「それより、姫戦士ってどのくらい権限持ってる? 王さまから名と土地をもらったんだが、どこをもらえるか聞いてねーんだよな。多分、ハルヤール将軍に丸投げだと思うんだがよ」


 あれでちゃんと内政しているのか謎だが、人魚の国は歴史がある。性格は横に置いとくとして、王の器は持っていた。帝国との戦争も負けずにやってきた。なので善政と呼べるだろう。


「ファルムは城主に与えらる名であり、開墾を許された意味もある。我が国内なら好きな場所、まあ、他の城主の間近でなければ好きなところに造っても構わない。だが、造るのは至難の技だろう。いろいろ凶悪な魚がいるからな」


 あーそう言やそんな話ハルヤール将軍から聞いたな。


 人魚はほとんどが狩猟生活で、自然になっているものを採取するから拠点を造るのは必須事項。そうしないと海では生きられないとか。


 言われてみれば確かにあんな魚がいる中、守る壁がなければ人魚の踊り食い。とっくの昔に滅んでいるわな。


「まあ土地は後だ。まず水竜機の拠点を造らねーとな。姫戦士。あの海老山をもらう。あ、深くは削らねーが、水竜機発着のために少しは削るからよろしくとハルヤール将軍に言っておいてくれや」


 多分、ハルヤール将軍はあそこをオレのために用意してたはず。違ったら使えるように調整してください、だ。


「技術少佐。水竜機の基地を造る。例のものを出してくれ」


「了解です!」


 と言うことで海老山へと向かうと、途中でミタさんと遭遇。なにやら人魚の兵士に抱えられていた。どったの?


「ベー様酷いです! わたしの装備は海仕様になってないんですよ!」


 結界で包んでやると、いきなり怒鳴ってきた。


「それでも来るミタさんのメイド道に敬礼!」


 まあ、メイド道がいかなるものかは知らんけど、その行動力には素直に賞賛しておくよ。


「んじゃ、いくぞ~」


 怒るミタさんを追加して海老山へと再出発。そして到着。海面へと出ると、まだ荷降ろしをしていた。


「婦人。まだ終わらんのか?」


「ええ。どうやら貝が足らないようで、今集めに行っているところです」


 貝? ああ、あのコンテナ貝ね。いや、箱貝か?


「そうかい。オレらは基地設置や海老山改造に入るから夕方には声をかけてくれ。オレも一旦帰るからよ」


 リュケルトにも会わなくちゃならんしな。


「わかりました。でも、声をかけても反応しないときは一人で帰りますからね」


「ミタさん、ドレミ、頼むな!」


 他人任せの我が人生。恥ずかしいなどありませぬ。


「まったく、ベー様は……。わかりました。お伝えします」


「お任せを」


 うちのメイドマジ優秀。お願いしますっ!


「技術少佐。オレは夕方には抜けるが、基地設置はするから進めてくれな」


「はい。お任せください」


 こちらも技術少佐任せ。とは言え、まずはオレがやらねば先には進めない。


 海老山の中心に進み、縦横五十メートルの穴を土魔法で掘り、無限鞄から手のひらに乗るくらいの鉄の箱を四つ、取り出した。


 これは水竜機の基地ユニット。格納ユニット。生活ユニット。実験ユニット。倉庫ユニットの四つ。小人族が造ったものを小さくして、掘った穴に合わせてデカくする。


 どこに造るかは決めてなかったので枠だけ。中身はないので小人族が使いやすいように改造してもらう。その機材や材料は持って来たしな。


「技術少佐。明日また来るようにはするが、オレがこれない場合はできることを進めててくれな」


「はい、わかりました。無理せずやってます」


 頼むと頷き、ずっとオレたちを見ていた姫戦士に顔を向けた。


「姫戦士。ハルヤール将軍にオレが一旦帰ることを伝えててくれや」


「畏まった。そう伝えよう」


 なにか感じるものがあったのか、神妙な顔で頷いた。


「ミタさん。サプルたちに帰ると伝えてくれ」


「畏まりました」


 すぐに転移したミタさん。つーか、転移バッチで追いかけてこればよかったんじゃねーの? それとも海の中には転移できんのか?


 まあ、それの検証は追々やるとして、ぱっぱと帰りますか。夕食の時間になるしな。


「んじゃ婦人。帰りますか」


 婦人の手を取り、我が家へと転移した。


赤ペン修正してて思う。校正する人、毎回違うのかな? それとも複数人でやっているのか? と。


前の巻で通じたのが今回は通じない。なにか流れが変わった。やっているとスゴく感じる。気のせいか……?

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