第514話 町でも創るか
そうと決まったら迅速に動くのが我が家のスーパー幼女サプルちゃん。
テーブルやら椅子やらを出してきて、料理を並べる。その時間、たったの二十秒。メイドのねーちゃんら、自信喪失しなきゃイイがな……。
見れば何人かの顔がひきつっており、残りは表情に変化はなかった。
ダークエルフも長命な種族。全員二十代に見えるが、その態度から年齢は高いと見る。
……まあ、エルフにも微妙な年代と言うか、気になるお年頃って言うんだか、察しなければならない年齢がある。なので深く考えるのは止めておこう……。
「さあ、席について」
我が家で真の支配者たるサプルの命令により、目つきのワリー執事やダークエルフのメイド隊が席についた。
「んじゃ、再度、いただきます」
親父殿の音頭に皆も再度いただきますと応えた。
「そー言や、こちらの食いもんとか大丈夫なんか?」
種族以前に、食文化が違う。食えるものや食えないものがある。
例えばエルフ。この種族はあまり獣肉は食わないが、鳥肉は普通に食べたり、意外なことに魚が好物だったりする。
例えば人魚。この種族は魚を食うと思われがちだが、魚は一切口にせず、海竜の肉や海草、果物(ファンタジーな海には果物が生るんだよ)を食べたりする。ちなみに、地上のものも普通に食えたりするんだぜ。
あいにくとダークエルフの生態、いや、魔族の生態なんて知らねーが、食えねーもんとかあったりするんじゃねーのか?
「ああ、それなら大丈夫だよ。ちょっと言い方はアレだけど、魔族は雑食だから。まあ、さすがにゲテモノ系や毒系は食わないけど、この家で出てるものは平気だよ。あ、でも、魔族にも好き嫌いはあるよ」
と、カイナ。
確かにカイナ(ってお前、何種族なん?)も出されたものはなんでも食ってたっけ。
「まあ、その辺はサプルに任せたらいいさ。おれたちではなんともできんしな」
親父殿の言う通り。この家の食はサプルが握ってんだからよ。
そんなこんなで嬉しい楽しい夕食が終了。大人たちは暖炉の前に集まり酒を交わし合い、女子供は食後のデザートを楽しむ。そのどちらも入らないオレはゆったりまったりマンダ〇タイム。あーコーヒーうめー!
「あ、そーだ。あんちゃんの弟子」
つーか、あんちゃんに弟子を紹介する段取りしてたのに、それをコーリンに伝えるの忘れとったわ。
「あの子たちならアバールさんが引き取っていったよ」
と、オカン。
「あんちゃんにもあいつらにもワリーことしたな」
「ふふ。どうせあんたのことだから忘れてたんだろうと苦笑して、連れて行ったよ」
「そうか。まあ、あんちゃんの弟子はあんちゃんに任せるか。口出すのもワリーしな」
それぞれの領分は守らねーとな。
「あ、これもそー言やだが、ドワーフのおっちゃんの嫁さん、なにしてる?」
「ロノさんかい? 昼間はサプルに料理を習いにきてるよ」
ロノさん? って、ドワーフのおっちゃんの嫁さん、そんな名前だったんだ。へー。
「本当に料理好きなんだな、あの嫁さん」
「ちゃんとロノさんとお呼び。ご近所さんなんだから」
「忘れなかったらな。なあ、サプル。空き部屋って何部屋空いてる?」
ゼルフィングの館は一応、三階建ての三十以上部屋がある。これだけ家族が増えても埋まることはねーだろうが、家のことはサプルに聞くのが一番手っ取り早く、正確なんだよ。
「六部屋は空いてるよ。片付ければ八部屋かな」
「結構埋まってんだな」
そんなに人、いたっけ?
「うん。通いの人もいるから」
「通い?」
なんじゃいそりゃ?
「隣りのあんちゃんのところで働いている人や広場にできたお店で働いている人を泊めてるの。住むところないって言うから」
なにやら人口増加が起きてるよーですよ。
「住むとこ、な~。そーゆーヤツら多いのか?」
「今はまだなんとかなってるけど、早く対策考えないとダメかもね。移住者、日に日に増えてるからさ」
と、カイナ。なんか他人事だな、お前……。
「いっそのこと、町でも創るか?」
これ以上の人口増加はオレの暮らしに影響が出てくるし、村にも迷惑がかかってくる。カイナの言う通り、早目早目の対策が今後の苦労を左右しかねんからな。
「町って、村を町にするの?」
「いや、ルンタがいる湖の近くにだよ。あそこなら水にも困らんし、人も寄りつかない。それに、ジオフロント計画の拠点もつくらなくちゃならんしな」
あの汚物がジオフロント計画に積極的なら地下につくるんだが、あの様子ではまったく進んでねーだろう。なら、まずは地上に拠点をつくる方が早道だ。
「カイナ。青年団、まだホテルにいるか?」
「うん、いるよ」
「つーか、あいつらなにしてんの?」
まあ、放置してるオレのセリフじゃありませんがね。
「種族間交流したり、港の町造りしたり、勉強会したり、結構充実した日々を送ってたね」
ほ~ん。いろいろやってるみてーだな。
「なあ、カイナ。魔族で建築とかできるヤツ、いる?」
「そーだね。確かいたと思うよ。ごめん。アダガたちに任せてるからよくは知らないや」
「それこそお前はなにやってんだよ」
「ん~、いろいろ?」
なんで疑問系なんだよ。まあ、なんでもイイけどよ。
「イイよ。オレがアダガさんに聞くから。サリネ、また家を作ってもらいてーんだが、大丈夫か?」
「全然問題なしさ。もう手慣れてきて一日もあれば一家は作れるようになったよ」
「じゃあよ、この館より小さいのでイイんで宿屋を作ってくんねーかな。なるべく村に合うようによ」
「了解。カイナさんから雑誌をもらったから、ちょっと考えてみるよ」
ギロっとカイナを睨むと、さっと目を反らしやがった。この腐れ魔王が……!
「ま、まあ、頼むわ」
もう好きにしろだ。
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