第354話 潜水艦派
「……意味がわからないのですが?」
「まあ、そうだろうな。言ってるオレも意味わからんがな」
プリッつあんの生態すら謎なのに、その能力まで把握しろとか無茶言うなだ。
「……ベー……」
非難の目を見せるカーチェさん。
「そんな目になるのは当然だし、理解も出来るが、オレもよくわかんねーんだよ」
難しい理論などオレには不要──と言うか今生のオレの性格では無理。あれば出来る。やれば出来る。考えるな、感じろで生きてきたんだからよ。
「まあ、説明より見せたほうが早いだろう」
収納鞄から壺を出してカーチェの前に置く。
「プリッつあんに寄生……じゃなくて、共存関係? になったらしくてプリッつあんの能力が使えるようになったんだよ。こんな風にな」
壺に向けて大きくなれと念じると、二十センチの壺が一メートルくらいになり、そこで念じるのを止めた。
「……つくづく非常識ですね、ベーは……」
「いや、これ、プリッつあんの能力だからな」
「どんな小さな能力を得てもベーが持ったことで非常識になるのです」
キッパリと言い切るカーチェさん。なぜに?
「ま、まあ、なんでもイイよ。で、だ。つまり……なに一派だ、それ?」
パソコンに夢中なメルヘンズをアゴで差した。
「潜水艦派です」
うん。オレの方こそ意味わからんわ。なんだよ、その潜水艦派って?
「……要するにその潜水艦派は、潜水艦を操縦、または扱える体があればイイ訳だろ?」
「はい。つまり、ベーがターナたちを大きくする、と」
「それが良いか悪いかはオレは知らねーし、どちらとも言う気もねー。選ぶのはそこの潜水艦派だ」
大きくなりたいのなら協力するし、なりたくないのならそれまでだ。オレはどっちでも構わねーよ。
「ターナたち、ちょっと来てください」
これだけオレらがしゃべり、ついでに大食い大会をそこでやってるのに、まるでアウト・オブ・眼中でいたメルヘンズがカーチェの言葉でこちらを振り返り、文句も言わずにやってきた。
どんな教育したん!?
思わずうちのアホな子との教育格差に、ちょっと泣けてきた。
「お呼びでしょうか、副長」
ピシッと敬礼するメルヘンズ。ほんと、あの自由奔放だったメルヘンがどう教育したらこうなんの?! 謎すぎてオレには理解できねーな、こん畜生がよっ!
「ベーが、君たちの体を大きくする能力を持ってるそうだ。大きくなるか、そのままでいるか選びなさい」
とのカーチェの問いに、メルヘンズが一斉にオレを見た。
「お願いします。わたしたちを大きくしてください!」
一派の代表だろう、三編みメルヘンの言葉に、他のメルヘンも同じく願った。
「わかった。なら大きくしてやるよ。ただ、潜水艦にあったサイズ──身長がわからんからまずは適当に大きくする。不都合がある場合はあとで調整してやる。んじゃ、お前からな」
他のメルヘンズより一歩前に出てるので三編みメルヘンから大きくしてやった。
「……こんなもんかな?」
多分、一メートル六十センチくらいになった三編みさん。なんかスゲーリアル感があんな……。
「えーと、どんな感じだ? 動き辛いとか、感覚が変だとか、あるか?」
オレの考えるな、感じろセンサー的には違和感は見て取れねーがよ。
「……い、いえ、これといったものはありませんが、体が重く感じます……」
まあ、つまり、問題ねーってことだと受け止めておくよ。
なんで、他のメルヘンズを大きくしてやる。
「……なんと言うか、進化論にケンカ売ったような気持ちでいっぱいだな……」
なんかエリナと同類になった感じで吐血しそうだが、生命は神秘ってことで誤魔化そう。うん。
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