第345話 超コエーです

「ジ~ゴく~ん、遊びっましょ~!」


 バン! と扉が開かれ、金槌を持ったジーゴが出てきた。まるで扉の裏にいたかのような速さであった。ワープか?


「──ほんと、ふざけんなよ、テメー! その嫌がらせ止めろや!」


「あれ? この呼びかけ気に入ったんじゃなかったっけ?」


 前にきたときやたら喜んでいた記憶があるから恥を忍んでサービスしたのによ……。


「いや、寂しい顔になるのが意味わかんねーよ!」


「ダハハハ!」


「だからって笑うのも意味わかんねーわ!」


「ジーゴの突っ込みマジサイコー」


 なんかもうゾクゾクくるよ。


「止めなさい!」


 と、カイナのチョップがオレの脳天に直撃した。


「ったく、調子にノリ過ぎ。ベーの悪いクセ? だよ」


 なんで疑問系なんだよとか言い返したいが、これ以上はクセになりそうだから止めておいた。


「つーことで武器買いに来た」


「なにが、つーことでだよ! ほんと、お前は疫病神だな!」


「おいおい、友達に疫病神はねーだろう。一緒に釣りにいって遊んだ仲なのによ」


 それ、ヒドくね?


「楽しく遊んでたのはテメーと師匠たちだけだ! こっちは死を覚悟して現実逃避してたわ!」


 あれ? そうだっけ? ジーゴも……あれ? ジーゴいたっけか? 誘いにきたのは記憶にあるんだが、釣りしてる姿がまったく記憶にねーな。


「ジーゴ、釣り行ったよな?」


「ほんと、二度とくんな、疫病神が!」


 バン! と、扉を閉められた。


「機嫌ワリーな。浮気でもバレたか?」


 バン! と、また扉が開き、顔を真っ赤にさせたジーゴが飛び出てジャジャジャーン。あ、出てきたって意味ね。


「してねーよ! おれを殺す気か!」


 あーやっぱ尻に敷かれてんだ。見た目は偏屈そうなガンコ親父なのにな。可哀想に……。


「ガンバ。きっとイイことあるって!」


 君に幸あれと切に願うよ。


「お前と知り合ったときからおれにいいことなんて微塵もねーわ! つーか、可哀想な目で見んな!」


 また、バン! と扉を閉めてしまった。


「やれやれ、困ったもんだ」


「うん。ベーがね」


 カイナのセリフに一同が頷いた。あれ? オレなの?


 さっきから周り皆全て敵状態。今更味方なんていらないもん!


 クルっと回れ右して扉に手をかけるが、鍵でもかかってるのか、びくともしなかった。


「おーい、ジーゴくぅ~ん。開けてよ~」


 呼びかけるが、まったく反応ナッシング。どーすっぺ?


「まったく、しょうがないわね」


 と、頭の上の住人さんが飛び立ち、ヤレヤレと言いながら降下してきた。なんですのん、いったい?


「わたしがかけ合ってくるわよ」


 とか言って消失──いや、一センチくらいのサイズになり、扉の隙間から中に入って行った。


「えーと、どーゆーこと?」


「よくわからないけど、プリッちゃんに任せたら。なにか考えがあるんだろうからね」


 あの寄生──じゃなく、共存体にも心があり意思がある。やると言うなら任せるだけだ。


 で、待つことしばし。固く閉じていた扉が開いた。


「ったく、しょうがねーな。プリの頼みだ、入れてやるよ」


「ありがとう、ジーゴ」


 なんだろう。飼い犬が他人になついているのを見るようなこの感覚は?


「……えーと、こーのロ──ぷげっ!」


 またもカイナのチョップで言葉を遮られた。


「ベー。いい子だからしばらく黙ってよーね」


「……ハイ……」


 さすが伝説の魔王の体を持つ男。笑顔が超コエーです。

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