第318話 あーコーヒーウメー

 そんなわけでマ〇ダムタイム。あーコーヒーウメー。


「なんでだよっ!」


「なにがだよ?」


 なんだい急に叫んだりして? なんかの発作か?


 コーヒーカップをテーブルに置き、叫ぶマームルじいさんに首を傾げて見せた。


「いや、意味わからんって顔してるが、それはこっちだからな。いきなり魔法でテーブルを創ったと思ったら鞄からお茶を取り出して飲み出すとか意味わからんわ!」


「休みたいときに休み、飲みたいときに飲む。これがオレの人生だ」


 好きなときに好きなことをする、オレが決めたオレルールだ。


「……ほんと、自由なヤツだ……」


「まーな。真似したきゃ真似してイイぞ」


「できるか! お前のように自由に生きられるなんて冒険者でもできんわ!」


 だろうな。なんの計画もなく、ただ、自由だけを求めているだけでは好きなようには生きられない。ましてや弱肉強食な時代で好きなように生きたいのなら力を持たなければならない。生きるとはこれ、日々の努力なり、ってな。


「まあ、そう興奮すんなっての。ほら、座りな」


 マームルじいさんと、金魚のフンばりについてくる二人のじいさんにも席を創ってやった。


 座る三人に白茶(会長さんの家に泊まったとき、娘さんにお願いして大量に淹れてもらったんだよ)を配った。


「……サプルの腕の良さはいつものごとくとして、こんなド田舎で白茶がさも当然のように出てくるとはな。陛下ですらたまにしか口にしないものなのに……」


 ほ~ん。結構広まってんだな、白茶って。


「なら、売ってやろうか? 数日前に王都いってたから大量にあんだよ」


 チャンターさんとは長い付き合いになる。樽の一つでもあれば超余裕で来年まで持つ。どうせ飲むのはサプルくらいだしな。


「……そこに突っ込むべきことが大量にあり過ぎて逆に突っ込めないわ……」


「非常識にもほどがあるな」


「ホラと思えない事実があるから頭が痛いよ……」


 三人のじーさまががっくりと項垂れる。そのまま死ぬなよ。


「ところで、カーベン商会って知ってるかい?」


 じーさまらが復活したところで先程の男が口にした商会の名前をマームルじいさんに尋ねた。


「あ、ああ。それほど大きな商会ではないが、手広くやっている商会だ。なにか引っ掛かるのか? 先程も怪訝な顔をしていたが?」


「顔に出てたか?」


 だったらオレも修行が足りねーな。出しちゃダメなところでだしっちまうなんてよ。


「あ、いや、普通にはしていたさ。ただ、わしの目にはそう見えただけだ」


 さすが、としか言いようがねーな。まず敵にしちゃダメなじーさまだぜ。


「たぶん、だが、ありゃ商会連合が雇ったウラのもんだな」


 三人のじーさまは、表情は険しくしたものの、騒ぎ出すことはなかった。つーことは、ある程度は情報を持ってるってことか。


「まあ、それはどうでもイイんだよ。オレの邪魔をするなら排除するだけだし、もう手は打ったしな。あとは、マームルじいさんにお任せだ」


 オレに友好を示すならこちらに迷惑はかけんなよと目で言っておく。


「で、だ。マームルじいさんは、バーボンド・バジバドルの名は知ってるよな?」


 つい最近、カムラ王国に行ってたし、アーベリアン王国の大商人でマームルじいさんみたいな立場だ、知らない訳がないだろうよ。


「ああ。バーボンド殿とは何度も会っているが……それが?」


「カムラから帰る途中、海竜とぶつかってうちの村に避難してきたんだよ。まあ、そのときに縁ができてな、友達になったんだわ」


「うん。お前スッゴいバカだわ」


 なんかスッゴい笑顔で悪口言われた!


「なんだよ、それは! あのバーボンドどのと友達になるとか意味わからんわ! 陛下ですら一目置き、アーベリアンの盾と呼ばれる大商人だぞ! なんで友達になれるんだよ!」


「フィーリング?」


「知らねーよ! ふざけんなよ、このクソガキが!」


「アハハ! マームルじいさん、イイキレっぷりだな。あと五十年は死なねーぜ」


 なんだろうな。できる商人は突っ込みもキレっぷりもアッパレ過ぎて気持ちイイぜよ。


「……ほんと、このクソガキはよ……」


「落ち着け、マームル。お前らしくないぞ」


「沈着冷静なお前さんの売りだろうが」


「このクソガキを相手にして沈着冷静でなんていられるか! 胃に穴開くわ!」


「胃を痛めると体にワリーから気を付けろよ」


「お前が原因なんだよ!」


 打てば響くような突っ込み、マジごっつあんです。あ、プリッつあん、どうしたんだろうな? いや、どうでもイイっか。


「まあ、冗談はこのくらいにしてだ。バーボンド、会長さんと知り合いなら話は早い」


「見ただろう? こいつはいつもこんな感じだ。真面目に付き合ってたら胃に穴が開くどけろか、怒りで憤死するわ」


「えーと、オレの話、聞いてくんないかな?」


 こっちはマジメな話してんだぞ。


「……いいか。こいつと付き合っていくのなら感情は殺すな。遠慮はするな。バカを言ったら即座に突っ込め。だいたいこいつは──」


 なにやら感情爆発。うっぷんを吐き出し始めた。


 まあ、ストレスは吐き出すのが一番。溜め込むな、だ。


 あーコーヒーウメー。

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