第250話 それは重畳
「ベー。いったいなんの呼び出しなんだ?」
通信機で呼んだ親父さんがやってきた。
「ワリーな、呼び出したりして」
アブリクトにいっているところを呼び戻したのだ。
「それは構わんのだが、まさか天下のバーボンドの店に呼び出されるとはな、つーか、ベーの呼び出しできたと告げただけで、勝手にどうぞとか、お前はいったいなにをしたんだよ?」
「さあ?」
なんなんだろうな、いったい。
「……その真からわかってねぇ顔でなんかわかったよ……」
そりゃ重畳。オレにもわかるように説明してくれたら更に重畳だがな。まあ、なんか頭痛が酷そうだからスルーするがな。
「まあ、時間はまだあるし、一息つきな」
カップを出してコーヒーを注いでやる。
「悪いな」
そう言ってカップに口をつける親父さん。
「……これは、前と違うな……」
さすが違いのわかる男。分けてやれねーのが心苦しいぜ。
「旨いだろう?」
これがなにからできてるかは謎だが、味は前世とまったく同じ。インスタントで出せる最高の味だと自負してるぜ。
「悪くはねぇな」
「そりゃ重畳。飲んでくれてありがとよ」
味をわかる者と飲める最高の一杯。マン〇ムだね~。
「……ところで、そこのご老体は、どちらさんで?」
おや? 親父さんにもわからんのか? ってことはマフィアよりなんだ、ご隠居さんらは。
「まあ、自己紹介は会長さんらが集まったら纏めてやるよ。それでイイだろう?」
「客の礼儀さ。ベーに任せるさね」
親父さんが訝しげな目を向けてくるが、構わずマ〇ダムタイム。あーコーヒーウメー!
腹がコーヒーでタプタプになった頃、会長さんが戻ってきた。
「お邪魔させてるよ」
「……お前はちょっと目を離しただけで、どんどん物語を進めるよな。芝居なら金返せと叫んでいるところだぞ」
へー。こんな時代にも芝居なんてものあんだ。今度暇ができたら覗いてみるか。
「人生なんて急転直下さ。あるがままの今を見よ、だ」
「お前の今すら見えねーよ、わしにはよ」
会長さんの言葉に三人がまったくだと頷いた。なに、その同調は?
「まあ、それは良い。用意ができた。きてくれ」
「この二人もなんだが、構わんかい?」
「好きにしろ。まあ、片方は知ってるが、お前関連なら拒みはしねーよ」
それは信頼の証と汲んでおくよ。
会長さんに連れてこられたのは会議室のような殺風景な部屋だった。
部屋の中央には大きな円卓があり、なんとも人生経験豊富そうな老人たちが着席していた。
「なんか大層な名前がついてそうな集まりだな」
まるで黒幕どもの悪巧み、って感じで笑えてくるぜ。
オレの軽口に黒幕どもがこちらに目を向けた。
ちびりそうな眼力だが、後ろにいるご隠居さんに比べたらまだまだ青臭い。が、怖いのは断然こっちの方だがな……。
「空いてる席に座ってくれ」
と言うので席に座る。ちなみに左は会長さん。右は親父さんにご隠居さんです。
全員が座ると、隣の部屋に続くと思われるドアから女中さん的な女の人らが盆に飲み物を乗せて出てきた。
……蒸留酒、だな……。
琥珀色からしてそうだろう。まだ持ってたことに驚きだよ。
ガラスのコップに丸氷と蒸留酒が注がれ、オレ以外の全てに配られた。
「皆、急の呼び出しにも関わらず集まってくれたことに感謝する。詫びとして最後の蒸留酒を配らしてもらう」
非難はないようで、会長さんに呼ばれた七人の老人たちが小さく頷いた。多分、構わん的な感じだろう。
「商売繁盛に」
と、コップを掲げた。
会長さんの音頭に七人の老人たちもコップを掲げた。
親父さんとご隠居さんは形だけコップをつかんだ。
オレは見てるだけ。お腹タップタプなんで出された茶はお断りしました。
「それと、蒸留酒をわけてくれたヴィベルファクフィニーに」
と、会長さんがオレを見、七人の老人たちが軽い動揺を見せるも、凄まじい眼力を向けてきた。
無視するのもワリーんで、頷き一つして応えた。
「乾杯!」
会長さんの音頭に七人の老人が乾杯と応えた。
……さて。どうなることやら……。
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