第248話 心の友よ
貿易商、なかなかどうして侮れねーな。
いったい誰が買うんだかわからんが、各地から集められたものが積み重ねられていた。
「陶器製品まであんだな」
この国では滅多に見れねーから窯の技術が発展してねーと思ったが、別のところには窯があんだ。しかも白磁に青磁、赤磁器までありやがった。赤なんてどー造んだよ?! ファンタジースゲーな!
「いや、お前が知ってるのがおかしいんだからな。磁器は国家管理の国の事業だからな。この国じゃなけりゃ縛り首だからな」
「まあ、人が生み出したものなら人が真似できないことはない。見本があれば創意工夫でなんとかなるもんさ」
と言うことで納得してくださいな。
「とは言え、釉薬や配合とかはさすがにわからんな。土じゃねーのも混ざってるわ」
赤磁のカップを手に取って感じ取るが、よくわからんものが混ざっているのがわかった。
「サプルの土産に買ってくか」
サプルも見本があれば再現させる才能があるからな。
「会長さん。これ買ってもイイか?」
「それは買い手がいるんで別のでいいか?」
「構わんよ。見本にするもんだからな」
ついでに陶磁器製品も頂いた。
他にも珍しい布や服、香木に美容に使うと言う花の油、木材に塗る釉薬や紙、インクやペンと言った文房具品。乾燥豆や野菜の塩漬け樽。革製品、木工製品、金属製品と、扱う品が多いこと多いこと。見本なのに収納鞄の一つが満杯になってしまった。
まあ、収納鞄は沢山あるので問題はないのだが、管理がメンドクセー。誰か管理する者を雇わねーと訳わかんなくなるぜ。
二つ目の収納鞄が満杯になりかけた頃、なにやら魔力を帯びた頑丈そうな箱が積まれた場所にきた。
明らかに建物も頑丈で、ここに入るとき剣を腰に差した屈強な男が二人いたことを思い出した。
「入っちゃ不味かったかい?」
なんも言われなかったから問題はねーとは思うが、念のため会長さんに確認した。
「わしの許可があれば構わんさ」
そりゃまた重要なところにお邪魔したよーだ。
「……魔道具、かい?」
「やはりわかるか」
「なんとなく、な」
魔石が入ってないようなので魔力が薄いが、その横に積み重ねられた小箱からは魔力の存在が感じ取れたから魔道具だと判断したまでだ。
「王都で魔道具が出回っているとは聞いてたが、この状況を見ると、そんなに一般的になってねーんだな」
あんちゃんや隊商の人からはちょっと裕福な家なら一つは魔道具があるって聞いたんだがな?
「ここにあるのは特殊な魔道具だ。卸すのも貴族か商家だよ」
「……防衛用、か」
会長さんちを囲むように魔力の壁があるからなんだろうとは思ってたが、結界の魔道具だったわけか。ファンタジーマジスゲーな。
「なんでそれだけでわかんだよ」
「自分の命は自分で守る。それが当然の時代だ、魔道具に頼るのも無理はねーだろう」
うちだって結界を張ってある。手段は違えど人の発想なんてそうは変わらんさ。
「まあ、オレには関係ねーか」
自由自在に使える結界術。物理的精神的魔術的その他もろもろシャットアウト。タケルのビーム砲でも防いで見せるわ!
「……お前んちは王城より難攻不落な感じだな……」
「魔王が攻めてきても落とされねー自信はあるな」
つーか魔王の城より厳重だぜ。
「いやもう村人がどうこうじゃなくなってるよな! なにを目指してんだよ」
「豊かな老後だが?」
アリとキリギリスで言やぁ、オレは超アリ派だ。備えは小さい頃からコツコツとだぜ。
「あれだけ豊かで優雅な生活してんのに、あれ以上って想像できんわ!」
「老後なんてオレにもわかんねーよ。わかんねーから備えんだよ。それより、一般的に出回ってる魔道具はねーのかい?」
「あるにはあるが、お前にいらんだろう?」
「物は使い様扱い様ってな、なんか違うことに使えるかも知れんからな、あるんなら見せてくれや」
「わかったよ。こっちだ」
と、連れてかれたのは会長さんの娘がいた店だった。
さっき見たときはわからんかったが、レジカウンター的なところの後ろに飾ってあった。
「ふ~ん。生活関連のが多いんだな」
コンロ的なものや冷蔵庫的(缶ジュース四本くらいしか入らないサイズ)なもの、ランプ的なもの、冷暖房器的なもの、あとよくわかんねーものがあった。
「まーな。ここら辺が売れ筋だ」
まあ、そんなもんか。汎用性がねーもんな。
「王都に魔道具職人っていんのかい?」
「ああ。工房が四つある。特殊品を作るのは一つだけだ」
「……なるほど。そこはオレでも利用できんのかい?」
「……わしの紹介なら可能だ」
その答えにニンマリする。
会長さんはひきつる。
「クク。ありがとよ、心の友よ」
「……損して得取れ、か。拒めねーのが悪辣だな。わかったよ。紹介するよ……」
毎度あり。
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