第243話 神のみぞ知る

「なあ、ベー。今日はゆっくりしていけるのか?」


「ああ。今日は会長さんに時間を取ったからな、ゆっくりして行けるぜ」


 王都にきた理由の半分は会長さんに会いにきたこと。余裕を見て三日は取ってあるぜ。


「なら、今日は泊まっていけ。歓迎するぞ」


「あー泊まり、な……」


「なんか予定があるのか?」


「あ、いや、予定と言うか、ちょっと面倒見なくちゃならんガキどもを抱えててな、まあ、保護者がいるし、これも勉強でやらせるのもイイか。ああ、今日はお世話になるよ」


「そう言やぁ、バリーから聞いたがなにかスラム街の子供を集めてなにかしてるんだって?」


 バリー? あ、船長さんか。すっかり忘れてたわ。


「ああ。王都の沖に無人島群があんの知ってるだろう?」


「それは知ってるが、それが?」


「そこを貿易都市にするために改造してる」


 まあ、隠すことでもねーんで教えてやった。


「はぁ!?」


 驚くってことはどう言うことかわかるってこと。さすが大商人だな。


「マジか?」


 お、とうとうマジの使い方を覚えたか。やるね、会長さん。


「マジだよ。人魚の方からも突っつかれてな、いろいろ条件を解決できたから造ることにしたんだよ」


 人魚から見てあの港は辺境過ぎて不便でしかねーし、なによりうるさくなるのが嫌なんでな、なるべく発展させたくねーんだよ。


「……はぁ~。斜め上どころか天空を駆け抜けてんな、お前は。村人が貿易都市造るとかありえねーよ……」


「別にオレが造るわけじゃねーよ。やるのは親父さん……あれ? 親父さん、名前なんったっけ?」


 ナではなくカでもなかったな。あれ?


「ブラーニーだろう」


 なぜか会頭さんからのフォローが入る。よくわからんが、ごっつあんです。


「ブラーニーの親父に全てを任せた。オレは構想と金と人を用意しただけさ」


「いや、その三つが難問だろうがよ!」


「人魚から真珠を沢山もらって帝国で捌いてもらってるから金はあるし、構想はタダだ。それこそ人なんて王都にゴロゴロしてる。なんも難しくはねーよ。苦労すんのは、それをやるヤツらさ」


 他人任せの脳内妄想。オレに優しい仕様になってます、だ。


「アハハ! やっぱベーはおもしろいわ! 難問を難問とは思わねーその飛び抜けっぷり。まったく、敵わねーよ、お前にはよ」


「まあ、バカ野郎度で言えば誰にも負けねー自信はあるがな」


 まともに相手したら天下の大商人に敵わねーが、バカなことさせたらオレは最強だぜ。いやまあ、自慢にはならんけどね……。


「だな。ベーは最強だわ。アハハ!」


 そう笑い飛ばせる会長さんも最強の分類だぜ。なんせこんなガキ相手に平然と笑っていられんだからな。普通ならキレて暴れてるよ。


「まあ、造るつっても先は長い。十年はかかるだろうがな」


 建設機械がある訳じゃねーしな、人力ではそんくらいかかるだろうさ。


「なるほど。道理で隠居と居候が出てくるはずだわ。王都との先にそんなものができたら喉元にナイフを突きつけられたようなもの。対等な商売なんてできなくなるわな」


 あー、確かにそんなこともなくはないな。全然思いつかなかったわ。やっぱ本職には勝てんな。


「まあ、その辺は親父さんに任すわ。オレは必要なときに必要なだけ使わしてもらえばイイだけだからな」


 統治もしなけりゃ管理もしない。んなメンドクセーことしてたら人生が終わっちまうよ。あるものを利用させてもらう。それがスローライフを楽しく送るコツさ。


「……神に愛されてんな、お前は……」


「さて。これを愛されてると言うのか、ただ厄介事を押しつけられているだけか、まさに神のみぞ知る、だな」


 八割近く後者だと思うがな。オレの周りに転生者が多いし、なんか面倒見させられてるって感がヒシヒシ感じるぜ……。


「フフ。そうだな。神はなにも語らない。ただ、在るだけ。人の世は人が決めていく、だな」


「なら、好きに生きろだ」

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