第75話 大切なことなので二度言いました
「……なにをしてるの……?」
「へ?」
なにかゾッとする声に振り返ると、なんかとってもイイ笑顔をしたアリテラがいた。
もちろん、その背後には三人のねーちゃんらもいる。
「……え、えーと、どったの?」
そう聞いたらなぜかアリテラの笑顔が三割増しになったよう気がして、なぜか背中に冷たいものが流れた。
「死ぬわね」
「可哀想に」
「ガンバレ!」
え? はぁ? なに言っての、ねーちゃんら? なんなの、いったい? なんなのっ?!
なにかモノスゴク失敗した感で、股間がキュッと締め付けられるのだが、なにがどうなってどうしているのかがわからない。誰か、説明ぷりーず!
「なにしてるの?」
アリテラが笑顔のまま近寄ってくる。
その速度に合わせてオレは後退する。
「なにしてるの?」
「……え、えーと、その、なんつーか、その、あの、アレがアレでして、アレなわけで……」
「ふ~ん、そうなの」
「はい、そーなんですよ」
な、なんだろう。たまに言ってはならぬキーワードを思ったときに感じる殺気がアリテラから発せられている。なんでぇぇぇっ!!
「死ぬわね」
「可哀想に」
「ガンバレ!」
なぜ同じセリフを言うっ!
「ふふ」
なぜかアリテラさんが笑いました。
はい、逃げました(恐怖から)。
追いかけられました(超怖かった)。
捕まりました(死を感じた)。
正座させられました(なんでかはこっちが聞きてーよ!)。
説教されました(なぜに?)。
土下座しました(生き残るために)。
そして、泣かれました(どうしろと?)。
前世ではそれなりに経験はあるが、本気で泣く女をどうにかできるほど女慣れしてねーよ。泣く女に対抗できるヤツは勇者だ。それかゲス野郎かだ。はい、オレはヘタレですがなにか?
ねーちゃんらの慰めで漸くアリテラが泣き止んだ。
その間正座とか、ほんと、異世界きてやるとは思わんかったよ。どこの国の文化だよ! って、後に聞いたらエルフの文化だってよ。それも拷問の。意味わからんわっ!
んで、やっと許してもらえました。なにをかは知らんがな……。
「それで、オーガ出たと言われてきたのだけれど、そのオーガはどこに?」
さすがリーダー。冷静な質問をしてきた。
「ん? ほれ、そこにいるだろう」
アゴで腰に拳を当てて鉄人立ちする相棒を差した。
「……鎧、ね……」
「鎧だわ」
「うん、鎧だね」
なんつーか、ねーちゃんら、ノリイイよね。
「なぜ、鎧を纏ってるの?」
「趣味です!」
そこはキッパリと言い切る。言い切っての趣味だ。
「バカね」
「バカだわ」
「バカがいるよ」
ふっ。そー褒めんなよ。テレるじゃねーかよ。
「……それで、なにしてる?」
アリテラさんの冷たい声に、また股間がキュッとする。
「……えーと、ですね。鉄──じゃなくて、オーガを捕まえたので、ちょっと遊──有効利用しようと思いまして、木を伐ってましたです、ハイ」
「伐る、ね」
「折れてるわよ」
「って言うか、粉砕?」
いや、もーイイよ、ねーちゃんら。黙っててくれよ。アリテラさんの目が険しくなるからさぁ。
「いやまあ、オーガ、丈夫だから殴った方が早いかな、と思いまして。あ、鉄〇28号、木を集めろ」
コントローラを操り(雰囲気を貫くのも男だ)、転がる木を山小屋の横にある割り場に集めた。
「突っ込んだら負けね」
「考えても負けだわ」
「無心よ、無心」
なんてねーちゃんらの呟きが聞こえたが、操るのが忙しいのでスルーしました。
「ふ~。終わった終わった」
割り場に積まれた木を見て息を吐いた。
しかし、コントローラを操りながらの結界操作は疲れるぜ(じゃあ、やんなよとの突っ込みはノーサンキュー。貫ぬいてこその男だぜい)。
「ご苦労さん、相棒」
「いや、オーガでしょう」
オレの愛情に突っ込む斥候系ねーちゃん。そりゃそーだ。
「で、このオーガ、どうするの?」
「んー、そーだな。どーすっかな?」
まあ一応、山の中にある養豚場(仮)に入れるかリリースするかは考えていたが、使っているうちに情が湧いてきたからな、リリースはしたくねーな。でも、排泄掃除とかなんかヤだし、どうすっか──あ、ここに基地を作ればいっか。
で、作りました。鉄〇28号の基地(土蔵?)。
「鉄〇28号、ハウス!」
基地(土蔵?)へと入れ、鎧を土に戻した。
「鉄〇28号、食料と水は置いとくから勝手に食えよ。あと、排泄はそこな。ベッド派かゴザ派かはわからんから長椅子にしておくな。明日くるから大人しくしてろよ」
なんか、気分は捨て犬を拾って神社の下で飼ってるみたいだな。
「じゃあ、ねーちゃんたち、帰るか」
「だ、大丈夫なの、ここに置いてって?」
「なに、見た目はアレだが、強度はあるよ。まあ、破られたら破られたで構わんさ。いろいろ施してあるからな」
パチンと指を鳴らすと、美丈夫なオーガに張っていた従属の結界が解除された。
直後、凄まじい咆哮が上がりましたが、もうそんなのには慣れました。
「ヌハハハ! よくなく豚だ」
「いや、オーガは鬼でしょう」
もぉう、突っ込みはノーサンキュー。
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