古代語を作る
〈古代語を作る意味〉
古代語を作っておくと何かと物語を刺激する良いスパイスになってくれます。もちろんそれが必要だと感じていない場合はいらないものですが、それでも古代語という要素があるということを、一つ頭の中に入れておいても損はありません。
具体的に古代語が何に役立つかと言いますと、やはり古代文明――今は無き技術やあるいは魔法体系を現代によみがえらせることでしょう。また、もし「古代の魔法学の方が現代よりも最先端を行っている」という設定であれば、古代語を習得したほうがより強力な魔法を用いることができますし、あるいはもっと幻想的な想像では、「その古代語と言うものだけが魔法につながる言葉で、あらゆる呪文は古代語によって成り立っている」とかもありですね。魔法専用の言語とするのです。
〈古代語の特徴〉
では古代語はどんな特徴があればそれらしく聞こえるかということですが、一つは以前提示した「曲用」でしょう。古代ギリシャやラテン語などをやった人がいれば共感してくれるでしょうけれど、とにかく英語は言語的に簡単でした。そう思える理由は、一つ、動詞の活用変化が限りなく少ないからです。日本語は動詞、形容詞、形容動詞、助動詞などまあまあ活用する品詞が多いので、英語よりは少し難しいと思います。
話がそれましたが、曲用と言うのは名詞や形容詞の変化を言うんでしたよね。一つの語が格、性、数によって変わっていくので慣れないうちは非常に記憶の負担になります。ただこの記憶の負担になるとか難しいというのが古代語らしい点ですね。言語は時代と共に合理化、簡略化されて行きますから、その逆を考えれば、当然古代語の方が難しい特徴があるのです。
もう一つ言うと、曲用の条件に「性」がありましたが、これもいい例です。フランス語やドイツ語などには今も名詞にそれぞれ男性とか女性とか、中性という属性が割り振られていて、それによって冠詞が変化したりします。複雑さを増幅させるにはこちらも効果的です。
〈古代語を作る〉
今回は古代語として、架空のドラゴン語(古竜語)を作ってみましょう。古竜語の特徴は
①屈折語
②強弱アクセント
③七つの格、三つの数と五つの属性(性別みたいなもの)がある
④母音は細かく分けて三十、子音が二十種類。子音には人間が発音しにくい声門音もある
⑤独自の音節文字によって表記されている
⑥時制は現在と「非現在」の二つのみ
の六つがあるとします。③の属性と言うのは名詞それぞれに「地、日、水、空、金」の属性が付与されていて、それによって名詞や形容詞が曲用します。この属性がそのまま魔法に影響するというのも面白そうですね。
④声門音というのは聞きなれない言葉かもしれませんが、実は私たち日本人にも一つだけ馴染みある子音があります。それはハ行です。またここでややこしいのが、ハ行全てと言うわけではなくて、「は、へ、ほ」のみです。これらを発音すると、例えば「ひ、ふ」とは全く違って、喉の奥を狭めて発音していますよね。これが声門音です。ドラゴンと言えばがあがあ鳴くので、ちょうどいいかなと。
⑥も少しこだわりポイントです。言語規則は時が経つにつれて単純になると言いましたが、逆に複雑になる場合もあります。時制なんかは、英語を例にとればまさに昔は二つ三つだったのに、今は現在、過去、過去完了、現在完了、未来完了etcと様々な時制が発生していますね。これはより厳密に時間を指定する必要性が、たくさん話しているうちに出てきたためでしょう。
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