第20話 貞代
◇side貞代
私は今、飛行機に乗っています! 人生初の飛行機、しかもビジネスクラスです!!玲也さんの家で話し合って決めたんですが、最初の目的地は満場一致で沖縄に決まりました。奈々ちゃんは東京でしたが、私と佳代ちゃんは東北出身で雪国しか知りません。そのせいか南国に一度でいいから言ってみたかったんですよね。
取り合えず沖縄から九州に渡って、日本を南から北へ縦断することになりました。
うーん、初めての沖縄ってドキドキしますね!
しかもシーズンオフでビジネスクラスのせいかお客さんもあまりいないので、堂々と座席を使えます。
ふと物音を感じて窓の景色から視線を外すと、佳代ちゃんがガイドブックにひたすら書き込みをしているのが見えます。意外と几帳面な佳代ちゃんはきっちりと旅行スケジュールを立ててくれて助かってます。
何でもいずれ友達が出来たら旅行したいと妄想していたらしく、佳代ちゃんは交通機関の時刻表を完全に覚えているとか。悲しい特技です。
……うん、その辺りの事は考えるのやめましょう。
私も上京してから全然友達出来ませんでしたし、思い出すだけで苦しくなります。
いけませんね、心が乱れています。
私は何度か深呼吸して落ちつきを取り戻すと、隣に座っている奈々ちゃんの様子を確認します。うん、問題ありませんね。静かに寝息を立てている奈々ちゃんは天使みたいに可愛いです。幽霊だって寝るんですよ?
もちろん普段は寝ませんけど、力を使いすぎると強い眠気を感じるんです。
奈々ちゃんは空港でフリーWi-Fiとかいうので霊力を使い過ぎたようですね。
鳥塚さんのおかげで色々と吹っ切れたのか、奈々ちゃんは自分を虐待していた父親に執拗にネット攻撃して遊んでいました。
あんなに生き生きとしている奈々ちゃんは久しぶりですね!
さすがに力を使いすぎて寝ちゃいましたけど。
……あぁ、幸せですね。
こうして友達と一緒に旅行に行く日が来るなんて。
なにせ生前に友達なんて一人もいなかったですし。そもそも知り合いすらいなかった気が……。
ずっと孤独で寂しかった。だけど今は違う。私の側には二人がいる!
あぁ、なんて幸せなんだろう……。
これから成仏するまでの間、楽しい思い出をたくさん作っていこうと思います。
沖縄に着いたらまずはどこから見て回ろうかな? 楽しみだな。
そうだ! 明日はみんなで海に行きましょう!
水着……は着れないので海中散歩を楽しみましょう。観光が終わったら一度秋田にある実家に寄ってみようかな?
そういえばお姉ちゃんの娘、今何歳なんだろう? 大きくなったかなぁ?
飛行機の窓から、暖かな日差しを受けて輝く雲の上を見ながら未来に想いを馳せました。私たちが成仏するまであとどれだけの時間が残っているのか分かりません。
でもきっと素敵な時間を過ごすことが出来るでしょう。
そう、絶対に。
だって私には退治なお友達が出来たんですから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます