第7話 俺、調査を開始する
どうすっかな……。
俺は貞代達の前で迷っていた。
なにせ貞代たちが嘘をついているようには見えないし、彼女たちが犯人を捕まえて欲しいのも本当なんだろう。ただ悪霊ならまだしも人間だとぶん殴れからなぁ。
物的証拠も掴んでないのにこいつが殺人犯ですって殴り倒したら間違いなく俺が捕まるだろう。俺にとっては人間より悪霊の問題の方が解決しやすいのだ。
かといって見捨てるのも寝覚めが悪い。
酷い生活環境にいた奈々を救おうとした生前の貞代の行動は間違いなく善行だ。
俺の田舎は変態ばかりだが、一部の善良な人に支えられたおかげで今の俺がある。
彼女らを今見捨てたら、幽霊なんか見える俺を救ってくれた恩人に顔向けできない。
「分かったよ。なんとかしてみるよ」
「えっ!? ほ、本当に?」
俺の返答に貞代は驚いた表情を浮かべる。
自分から頼んでおいて引き受けてくれるとは思ってなかったのか、貞代は驚いた表情を浮かべた。
「ああ、乗りかかった船だし、お前さんたちがいたらAV見れないし」
貞代と佳代は顔を見合わせると嬉しそうな笑顔を見せる。
『変態さん、ありがとうございます!』
『感謝……変態に圧倒的感謝……』
『ありがとうなの! 変態童貞野郎』
貞代たちは満面の笑みでお礼を言ってくる。顔は笑っているが、僅かに軽蔑の視線が混じった絶妙な笑みだ。
やっぱ助けるのやめようかな……。
俺はさっそく自分の行いを後悔した。
◆
貞代の願いを聞いた俺達は早速、現場検証をすることにした。
まずは死体が埋まっているであろう場所を探さなければならない。この部屋で見つかったのが貞代の大量の血痕のみで、本体は別の場所に埋められたからだ。
貞代から聞いた情報によると、一階の管理人室のそばに床蓋があり、そこを降りた先が遺体の埋められた場所らしい。
マンションに地下なんてないと思う人が多いだろうが、マンションの地下には、『地下ピット』という空間がある。簡単に言うと、排水管などを修理・交換するための作業スペースだ。
ピット内は頻繁には入らないスペースのため人が長時間滞在することは想定されておらず、換気扇・換気口などがないとのこと。
おまけに人体に良くないガスなどが発生していることもあるため、住民が立ち入れないように専用工具を使わないとフタが開けられないようになっているらしい。
地下ピットでの作業は危険を伴うため、ちゃんと資格を持った者でなければ立ち入り不可能。なら話は簡単だ。
地下ピットに入った連中を調べれば一発で犯人は分かる。問題はどう伝えるかだ。
幽霊にここに死体が埋まってます、犯人はあの中に入れる人ですー、なんて警察に伝えてみたらどうなるか?
100%俺が疑われるに決まってる。これは実体験だからよく分かるのだ。
田舎にいた時、幽霊から話を聞いて警察に連絡し、犯人扱いされまくったからよく分かる。
あいつら人の話を聞きやしない。税金泥棒……国家権力の犬めが!
まぁ、霊能力ない人からすれば仕方ないことかもしれないがな。中学時代の登下校で警察にずっと尾行されるのは精神的にきつかったなぁ……。
幽霊の存在を証明できない限り警察は信じてくれないだろう。ゆえに物的証拠とかを集めるべきなんだけど、俺こういう捜査っぽいのしたことないんだよな。
だって今まで悪霊とかってみんな拳で殴って力技で解決してたし。
さて、どうするか。
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