いつか,その日まで

一色 舞雪

第1話

「若い子居ますよ!今なら乾杯付きで…」


「三名様ご来店でーす!!」

様々なドレスで着飾ったキャスト達が立ち上がり

「いらっしゃいませ」

と,頭を下げ尚且つ客層をさり気なく見る。この子達は自分を売るため付きたい客には物凄い笑顔とハンターさながらの隠れた空気を出す。

まぁ…おれは声掛けだけだから後は正直「おまかせ」

バックにいる人間がスっと出て来て女の子を選び席に付かせる。呼び込めばそれだけでおれは仕事完了。また寒空の下,外に出て気持ち良くなってる人間を誘い込めばいいだけ


(キャスト足りないからヘルプ頼む)


あー…またか。居るだろ?足りないって何でだ?

売り上げはこっちの店の方がいってる…

だからか,女の子が少なきゃ売り上げ取られる。結局は客が入ってる方に女の子が居なきゃこの店おろか全体の売り上げが上がらないんだな…

(誰が来ようが合う合わないはあんのにね)

そう思いながらインカムが入ると外をドレスで歩いて来る人が一人居た。

俯いてまるで覇気が無い。

しかも真っ黒で今時珍しいロングドレス。下を向いてるから顔までは分からない。

「…マユちゃん?」

「はい」

今時「はい」なんて言う子はほぼ居ない。大抵「うん。」とか「だるっ!」が最初に出る。

ここは雪国もあって高いヒールがシャリシャリに水を含んだ雪にくい込んでいく。


目の前に氷の様に固まったのがあったからおれは思いっ切り蹴り上げマユを見た。

じーっと見ていたマユは少し笑ったように見え

「えいっ」

と,高いヒールでその砕け損ねた氷の玉を蹴り上げた。

痛くなかっただろうか?おれは革靴は履かないからスニーカーだけどまだ守るところの少ないヒールよりは頑丈だ。

だが彼女は思いっ切り笑って

「これくらいしなきゃ!」

と,まっさらな笑顔を向けて楽しんでいた

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