第24話 優しく、暖かい力

「信一君。後ろ!」


 メルアが俺の肩をたたき叫ぶ。

 背後には大量の雑魚的。「デュラハン」の姿。


「2正面作戦だ。さあ、どうやって戦う?」


 流石に後方にいる「デュラハン」まで同時に戦うとなるときつい。……だったらこの作戦で行こう。


「ダルク、聞きたいことがある」


「なんだよ。告白か?」

「違う。あそこにいるデュラハンの群れ。一人で退治することって可能か?



 遠距離戦を中心に戦うメルアは、ヒュドラ、ゾドム戦に当てた方がいい。そして俺が以前の様に組んで戦う。


 しかし、ダルクはその言葉に、胸を躍らせ始める


「やったぜ。あの「デュラハン」達。全部倒しちまって構わないのか?」


「いいけど、不吉なフラグを立てるのはやめようぜ?」


 ノリノリなダルク。そしてダルクは勢いをつけてデュラハンたちに突っ込んでいった。

 まあ、彼女も実力はあるし、なんとかするだろう。





「久しぶりだなヒュドラ。また負けに来たのか?」



 俺は挑発じみた言葉で話しかける。

 ヒュドラは微動だにしない。


「前回は不意を突かれたが、今回は負けるつもりはない」


 まあ、そうだろうな。何より前回は3対1、今は2対2。数的有利はない分厳しい戦いになる。


 それでも、メルアのために、村のために絶対に負けるわけにはいかない。

 そして俺たちの戦いが始まる。


 まず相手、前方にヒュドラ。後方にゾドム。

 恐らくヒュドラが前線で戦い、ゾドムが後方で攻撃を繰り出すという作戦なのだろう。


「いっけぇぇぇ!」


 まずは後方にいるメルアが、ヒュドラ目掛けて、遠距離砲を10発ほど繰り出し、そのまま打ち込む。


 かなり強い魔力の力を感じる。メルアの本気度が、良く伝わってくる攻撃だ。

 しかし──。


「ほらよ!」


 が、ゾドムが後方から真っ黒い魔力球を数発こっちに向かって発射。

 双方の遠距離砲が俺たちの頭上で衝突。大爆発を起こし、相殺。


 攻撃は失敗に終わる。けど、俺にはその真意がわかる。


 メルアのしてやったりな表情。あれは、作戦が失敗したときの表情ではない。相手が術にはまったと、確信してきたときの表情だ。


「なんだ? これは!」


 ヒュドラの顔に驚愕の色が浮かび、足元に魔法陣が浮かびだしたのである。


「おとりってことだろ。私の力、たっぷり味わってね!」


 ヒュドラが逃げ出そうとするが、間に合わない。

 そしてメルアが弓を天に向かって上げる。すると──。



 ドォォォォォォォォォォォォン!!


 魔法陣が出現したが所が大爆発を起こす。

 鼓膜が破れるような轟音。周囲一帯を包み込むような規模の大きさ。この場一帯を炙るような熱風。大嵐のような爆風。


 俺もここまで強いのは見たことがない。見守っている冒険者たちも、その威力の大きさに驚いているようだ。


「さて、こいつらにどれくらい効いたかな?」



 爆発の煙が晴れていく。すると──。


「大した威力を持ってるな。ほめたたえてやるよ。まあそれでも、俺たちには通らないんだけどな」


 ヒュドラは余裕の表情で言葉を返す。


「やはり幹部。このくらいじゃあ攻撃は通らないか」


「う、ウソでしょ……」


「2人とも、次はこっちの番だぜ」


 ゾドムが杖をこっちに向ける。その杖には、今までにないくらい強大な魔力が存在しているのがわかる。まずい、あんなのくらったら、下手をすれば──死ぬぞ。


「私が、みんなを守る!」


 するとメルアが俺の目の前に強大な障壁を出現させる。そこから生じている魔力から、メルアが障壁にかなりの魔力をつぎ込んでいるのがわかる。


「強そうな障壁だな。だが、それしきのおもちゃで防げると思うなよ!」


 ゾドムの強気な言葉と同時に、彼の遠距離攻撃が俺たちに炸裂する。

 その攻撃は、メルアが作り出した強固な障壁を一瞬で打ち砕いた。まるでその障壁がガラス細工だったかのように。


 そして俺やメルアにその攻撃が直撃。


 俺とメルアは体を後方に吹き飛ばされる。そのまま壁に激突。


「おいおい、大丈夫かよ。死んじゃったんじゃねぇのか?」


「それに、あの魔王軍強すぎだろ。勝てるわけないじゃん!」


 周囲の冒険者は、ある者は動揺し、ある者はこの場から逃げ出し統率不能のパニック状態になっている。

 もし、俺たちがここから逃げだしたら、魔王軍と戦うものはいなくなり、この村はこいつらの手に落ちてしまうだろう。


 村人たちは、魔王軍の奴隷となるか、難民となってしまうだろう。当然教会の子供たちも。



「まあ、素質のある若者だったよ。太刀筋もいいし、技術もある50点といった所か」

 


「まあ、魔王軍なら、そこそこ活躍できそうな器ですわな」


 誰が、魔王軍なんて入るか。俺は、この村を、教会を、メルアを絶対に救うんだ!

 ボロボロの中に話しかける。


「メルア? まだ戦えるか──ってその足!」


 俺はメルアの状態を見て絶望する。彼女の右足から出血していた。


 それだけでなく、足をくじいてしまったのだ。この状況で、死線に放り込むわけにはいかない。


「ご、ごめん。魔力はあるんだけどね──」


 申し訳なさそうに、目に涙を浮かべながら頭を下げるメルア。

 そしてその様子は、ヒュドラにも伝わり……。


「おやおや、嬢ちゃんは脱落みたいだねぇ。兄ちゃん一人で本当に戦うつもりかい?」


 確かにそうなってしまう。──がメルアの援護があっても圧倒されていた俺に、果たしてこいつら2人を倒す力があるのか? それ以上にまともな勝負になるのか?


 勝算は、限りなく薄い。それでも、あきらめるわけにはいかない。

 俺がそんな覚悟を決めたその時──。


 なんだ? この力は。

 優しく、暖かい何かに包まれているようなこの力。


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