【完結】暴力系幼馴染と異世界に転生したら、幼馴染が魔王軍に裏切るとか言ったから、そのクソみたいな面を思いっきりぶん殴って、別のヒロインと付き合ってみた。

静内

第1話 むかつく暴力系幼馴染の顔面をぶん殴ってやった。やったぜ








「信一君、何あの女。私という女がついていながら何様のつもり?」


 その少女は俺をじっと睨みつけながら俺によって来る。


「べ、別にさっきまで郊外でクエストをしてきて帰ってきただけだ」


 サラサラの金髪ヘア、透き通った瞳、柔らかくきれいなほっぺ。

 まるで小動物のような小柄な体系。外見だけであれば男子のだれもが憧れの的にあるであろう。

 どれだけ人ごみにまぎれていても、彼女は埋もれることなくその美しさは存在感を放っている。


 彼女が道を歩くと、すれ違う男子たちは大半がその容姿に見とれてしまう。

 それほどに、文香は人々の美しい異性という理想を、そのまま具現化したような容姿をしているのだ。


「ふ~ん……」


「な、なんだよ文香」


 そしてその少女は、あろうことかこの俺を好きでいてくれている。これだけ見れば俺は、物語の主人公のようなモテモテで幸せ者のように思える。


「豚! 頭おかしいじゃないの? そっか、私という世界一の美少女に好かれちゃったせいで勘違いしちゃったんだよね、自分がモテモテだって──」


 彼女の名前は文香。


 俺への罵倒によって本性をさらけ出した文香は、俺を思いっきり突き飛ばす。小柄な体なのだが意外と力は強く、俺は後ろに倒れこんでしまう。


 そして立ち上がろうとするが、頭の上に重しのようなものがのっかっていて頭を上げることができない。


「ちょっとは身の程をわきまえたら? あんたなんて私がいなかったら、彼女なんて都市伝説でしかないオタクで、3か月で嫁を変えるだけの存在なの」


 そう、文香はなんと右足で俺の頭をぐりぐりとこねくり回しているのだ。人の頭をサッカーボールかなにかと勘違いしているのではないだろうか。


「大体ねぇ。かわいさであればこんな一般人とは比べ物にならないほど私は美しく、優れているの!」


 グリグリ! グリグリ! そして俺の体を何度も蹴飛ばす。


「そんなこの私が、何のとりえもない、イケメンでも何でもない、平凡でどこにでもいる普通の高校生のあんたを好きって言ってやるんだから、地面に顔がめり込むまで感謝しなさい!」


 暴力的な態度で俺を支配する文香。

 こんな風に、彼女はいつも俺に暴力で支配し続ける暴力女だったのだ。




 どうしてこんなことになったかというと──。


 まず1つ、俺と文香は異世界転移をしたのだ。

 ある日俺は文香に暴力を受けつつも、なんとか平和に暮らしていると、白い天使のような服装をした女神が現れる。


 そして俺と文香には強い魔力が眠っている。良い条件を付けるから、村を救ってほしいと。


 俺は突然の言葉に戸惑ったが、文香は俺の意見を聞かずに「楽しそう」という一言で一緒にこの世界に来る羽目になった。

 こいつはいつも、俺の意見なんて聞かない。


 村では、女神より別世界から来た勇者としてたたえられ、魔王軍の部下や、村を襲う動物と戦いながら教会で暮らすことになったのだ






「あ~あ、疲れた疲れた」


 日は暮れ始め、夕暮れ時。

 郊外のジャングルでコボルトたちと小競り合いがあったので、それに加勢。苦戦はしたが何とか戦いを終えた帰り道。


 10人くらいの冒険者とともに村へ帰還。

 斧を持った筋肉質な中年のおっさんが話しかけてくる。


「いやあ信一君。あんたが来てくれたおかげで村は大助かりだよ」


「ありがとうございます」


 気さくな性格、冒険者のまとめ役といった感じの人物だ。


 この村は貧しく、生活も大変だったりして苦労も多い。

 しかし楽なことだってある。


 元の世界では、平和であったがゆえにコミュニケーションが取れないと、それだけでひどい扱いを受けたり、ハブかれたりしていた。


 しかしここでは魔王軍や、動物たちとの戦い多い。ゆえに、村人たちと協力して戦って入れさえいれば、悪い扱いを受けることはない。


 こんな俺でも、十分に彼らの輪に入っていける。


「じゃあ、またなんかあったらよろしくな」


「わかりました」


 そして村人たちは俺と別れ1人、1人と自分の家へと帰っていく。


 斧を持った冒険者と別れ1人になった時。


「あ、信一君? まって~~」


 後ろから元気な声で誰かが呼んでくる。


 その声色を聞いて思わず俺は後ろを振り向く。

 俺と同じくらいの身長。エルムズ・メルアだ。

 茶髪の、さらさらした髪を、中央で結んでいて、セミロングの長さが特徴。



 いつも元気で明るいムードメーカーのような女の子。

 誰にでも好かれるタイプ。

 手を後ろに組み、屈託のない笑顔を見せる。にっこりとした笑顔は、彼女は持つ明るさと優しさを全面的に醸し出している。


「お仕事お疲れ様、今日は疲れたね~~」


「ま、まあね」


 メルアが、明るく元気に笑う。その後も2人で明るく世間話。クエストの事とか、生活で困ったこととか。


「うん、けど、最近香辛料とか不足気味で困っちゃってね──」


 何気ない日常会話がとても楽しい。


 文香との会話とは全然違う。


 言葉尻を捕らえて地雷を踏んで怒りを買ったり、破天荒なことに突き合わされたり、そんなことは全くない。


 本音で語れる、腹を割って話せる相手。この子が幼馴染だったらと、たまに思ったりする。


 他人との会話が苦手な俺でも、このままもっと話してみたいと考させられる相手だ。


 このままも彼女と一緒にいたい。そんな会話をしていたが、現実は残酷だ。




 村の中心部にある、そこそこ大きな建物。建物のてっぺんには十字架。入口の壁には女神さまが祈りをささげているポーズの壁画。

 俺たちが住んでいる場所。街の教会だ。


「あっ、信一君。お帰りなさい」


 教会の扉がゆっくりと開かれる。



 本当に現実に戻されたんだと痛感し、肩を落とす。

 文香だ、他人がいる前では、本性を現さずかわいくて性格の良い女の子。本当にあざとい。


 ピョンと俺の隣にジャンプしてくっつく。そしてギュッと腕を組み始めた。


「クエストはどうだった? 疲れたんだしゆっくり休みなさい」


「2人とも、お幸せそうだねぇ……。こりゃ私は邪魔みたいだね」


 メルアがわずかに顔を引きつらせつぶやく。そして苦笑いをしながらこの場所を去っていった。


「じゃあ私、夕飯の買い出しとかあるから帰るね」


 そういって彼女はこの場を後にする。ああ……、帰っちゃった。まあ、日も傾いてきたし、俺もそろそろ夕飯の支度をしないと。


 そして冒頭に戻る。



 文香がようやく本性を現す。ギッと目を細めて俺をにらみつけてくる。


「次からあんなクソ女とベタベタするのはやめなさい。あなたにはね、私がいれば十分なの。私があなたの嫁になるの」


「ちが──」


「命令よ。いいわね!」


 俺の言葉を遮り、容赦なく罵声。聞く耳なんてない。ため息をつきながら立ち上がる。




 そして俺と文香は教会のドアを開ける。


「「信一君。お帰りなさい」」


 その瞬間、待ってましたと言わんばかりに子供たちが叫ぶ。





 俺たちは女神からの条件として、戦いによって両親を失った子供たち10人ほどと一緒に暮らしていた。



 文香が教会にいるのも、子供たちを守るために、どちらかが教会にいてほしいという取り決めがあり、留守場という楽な方を文香が選んでいるからだ。


 おかげで、その時間は文香と過ごす必要がなくて俺としては心の底から嬉しいのだが。


 そして俺は夕飯の準備をする。文香も子供たちの前では猫を被り、かわいい女の子になっている。俺の前でもそうしてくれれば幸せなのだが──。


 そして夕食。鍋いっぱいに作ったカレーを10人ほどの子供たちがよそる。

 その後、俺と文香の分をよそったら食事開始。


「信一君。あ~ん」


 何といきなり文香が自分のスプーンによそったカレーライスを俺の口の中に半ば強引に押し込んでくる。

 抵抗することもできず、それを飲み込む俺。


「信一と文香ちゃんラブラブだ~~」


 はやし立てる子供たち。それに対して文香は顔を真っ赤にして作り笑いを浮かべながら。


「もぉ~~、ぼくぅ? からかわないの!」


 たしなめるように優しく注意する。もはや2重人格を疑うレベルだ。こいつには両親というものがないのか?



 食事が終わり、文香が子供たちと戯れている中、俺はふろの支度や皿洗い、家事などをする。

 文香に家事をするという思考回路なんてない。




 そして子供たちや文香を入浴させた後、俺は1人でゆっくりと風呂につかる。


 ガラガラガラガラ──。


 タオルもまかずに全裸のまま両手を腰に当てている。すべて見えてしまっている格好だ。

 絹のような肌、ほど良く引き締まった身体、外見だけは理想の異性というにふさわしいものがある。


「何じろじろ見ているのよ変態。一緒に入るわよ」


 腕を組み、身体を密着させたまま風呂につかる俺。そんな中で俺は文香に振り回され続けた人生を思い出す。


 子供おころから毎日のように俺に罵声を浴びせ続け、自分に非があっても謝るそぶりすらせず、開き直り一歩的に責任を擦り付けてくる。



 中学生くらいの時になると、俺と文香との体格差は明確になり、強引に抵抗すればこいつと別れられると思って強く出てみたのだが──。


「ふ~ん。ちょっと大きくなったからっていい気になっているじゃない。いいわ、暴力を振ってきたら、周囲やあなたの両親に泣きついて訴えるから。私あなたから暴力を受けてきました、DVの被害を受けてきましたって」


「ふざけるな! そんな事実はないだろ。いい加減にしろ」


「けど、周りはどっちを信じるかしらね? わたし、周囲から優等生として見られているから教師たちの信頼も厚いし。あんたに犯罪者にして、人生をめちゃくちゃにしてやるわ!」



女ということを逆手にとり、この有り様。

 さすがにこの俺も、人生を壊されたくはない。


 文香の奴、外見はいいうえに俺意外には絶対に本性を見せない。それゆえ周囲からは容姿端麗で、性格も素晴らしい優等生として認識されている。


「それでも俺はやっていない」──と説明しても、誰も信じてはくれないだろう。


 俺も幼馴染というだけで、絶世の美少女と付き合っている幸せ者という人物と思われてしまう始末。


 だからたとえ相談しても、「リア充」とか、「幸せ者」だとか言われるだけなのがオチだろう。


 俺はこのままこいつに振り回される人生を送ることになるのだろうか。


「あと、子供たち、寝かしつけたら話があるから礼拝室に来て。大事な話があるから」


「はいはい」


 ゴン!


 文香が肘で俺の耳のあたりをどつく。いたたた……。本当に人の痛みというものを理解できないやつだ。


「はいは1回でいいのよ。そんなこともわからないのクズ!」


「す、すいませんでした」


 慌てて頭を下げる。どつかれたところがひりひりと痛む。


 そして湯舟から出る。残りの家事を終え、子供たちを寝かしつけた。

 ちなみに教会の支配者は、遠く離れた大きな街にいる。何でも大元の法皇様の元で会議があるらしい。





 そして深夜、明かりもないまま窓から見える星々だけが証明となっている礼拝室。


 キィィィ。


 子供が起きないようゆっくりと扉を開ける。いつもは女神を礼拝したり、神父の言葉を聞いたりしている木製のベンチ。



 その前方、女神の銅像がある上座の場所に文香はいた。


「話ってなんだ、文香」


 すると文香はこっちを振り向き、何食わぬ顔でこう言った。


「魔王軍に寝返る」


「は?」


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