過去からの追撃 その4
話を聞いた少将閣下は、あきれ顔で俺をしばらく眺めた後、相好を崩し。
「悪党のくせに欲が無いな、少しは自分の懐にねじ込めばよかった良かったろうに」
「後に成ってそうすりゃよかったと気づきましたよ」
閣下は、空になった俺の盃に火酒を注ぎ、そして自らの盃も満たすと。
「やはり私の目に狂いは無かったな。貴様の様な人材こそが私の考える新しい戦争には必要だ。ならば益々貴様を守ってやる必要がある。月桃館には私の部隊を私服で派遣しよう」
俺は頭を振った。
「それには及びません。事が片付くまで月桃館には戻らないつもりです。ユイレンさんにこれ以上迷惑はかけたくないし、今日以降殺し屋の正体を掴むために色々動くつもりなんで」
「えらく気を使っているな。まぁ、たしかに彼女は男どもにそう思わせる様な人だ。で、明日以降の具体的な動きはどう考えている?」
おっしゃる通り、同じ麗人でも閣下とは全然質が違いますなぁ。と、腹の中で思いつつ。
「奴は腕扱きの殺し屋です。それなりの筋から斡旋されたと考えるべきでしょう。と、言う事でその筋を当たります」
「解った。支援が居る時はここに直接電話しろ、武器が必要なら武器科に申し出るがいい準備させよう。とりあえず今日は司令部に泊れ、士官用の宿直室をつかえ」
そして、二人示し合わせたように盃を干すと。
「色々お気遣い賜り、申し訳ありません」
「気にするな、何れ働きで返してもらう」
一番貸しを作っちゃダメな人に、貸を作ったようだ。
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