第2章

第44話 お前、この世界にいたのか



 快晴の空、強く照り付ける太陽。そして白い砂が広がる砂浜。

 砂浜では水着を着た人たちが楽しそうに泳いでいたり、砂浜で体を焼いていたりしている。


「海ってやっぱりいいよね」


「まあ、開放的ではあるよね」


 俺やサナたち4人は街の海岸に来ていた。これから海を楽しむために。



 話は昨日の夕方にさかのぼる。


 郊外のジャングルでコボルトたちと1戦交えた後のことだ。



 時折旅人を襲っているということでコボルトと一戦交えた俺たち。その状況と彼らの言い分をブルルさんに報告する。


「なるほど、コボルトたちのテリトリーで密猟いる人がいる~。それで食料が足りなくなって人を襲っていると~」


「はい、ですのでまず密猟者を捕まえることを優先したほうがよろしいかと」


「了解です~。このことはぜひ政府に伝えておきますね~」


 独特なしゃべり方、相変わらずだ。

 ブルルさんに現状報告を終えた俺。すると、サナが話しかけてくる。


「ねーねー、明日海に行かない?」


「と、どうしたのさ急に!」


 サナのテンションがいつもより高い。好奇心でワクワクしているといった感じだ。


「ほかの魔法少女から聞いたの。今の季節温かいでしょう。最近、海に店ができて水着っていうのを売っているんだって!!」


「それで、水着で遊ぶのがはやりになっているみたいなの。ほかの魔法少女に見せてもらったけどかわいくて、私も着てみたい。アグナムさんもとっても似合うと思うよ」


 リヒレの言葉に俺の脳裏に疑問がわいた。なぜこの時代に水着というものができていたのか。


「私もあなたの水着姿がみt──、じゃなかった。興味あるから行ってみたいわ」


 レテフも首を縦に振る。なんか本音が混じっていたようだが今はそれどころではない。


 特に予定はないし、なぜ水着があるのかも気になる。ちょっと行ってみるか。


「わかった。俺も行ってみたい」



 そして俺たちは明日砂浜へ行くこととなったのだ。



 翌日。

 そして冒頭に戻る

 俺たちは街のはずれにある海岸。



 照り付ける太陽に綺麗で真っ青な海。


 砂浜には確かに水着で砂浜で遊んでいる人が大勢いた。


 ビキニやスクール水着、海パンなど。元の世界みたいに。

 そしてそれを見たレテフとサナ、リヒレのテンションがぐっと高くなる。


「あれが水着? すっごいかわいい~~」


「うん。かわいいね、私も来てみたい!」


「あんなセクシーな服。私のアグナムが着るのを想像するだけで──、うっ鼻血が!」

 レテフが鼻血を出してしまい、慌てて止血。ちょっとこいつには刺激的過ぎたか──。



 しかし時代的に中世のヨーロッパみたいな文明レベルと考えていたが、この世界に水着なんてあるのか。


 そして俺は通りがかった海パンのお兄さんの肩をたたき、その場所を聞いてみる。


「そこの店で売ってるよ。最近できた店で、海の家っていうんだって」


「あ、ありがとうございます」


 そしてお礼をした後その場所へ。こんなこと考えたのは誰なのか早くしりたい、つい早足になりサナたちと海の家に入る。


 海の家の中、木でできた簡素な中、机やイス、木でできた仮眠をとる場所があり、食事をしていたり、休養を取ったりしている人がいるのがわかる。


 そして奥にあるカウンターへ。受付のおじさんに話しかける。


「へいいらっしゃい!」


「ちょっと聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」


 そういって一瞬俺は後ろに目を向け、質問する。


「この水着っていうの。誰が考えたかわかる?」


「ああ、あの人だよ」


 店員が顔を後ろに向ける。その人物に俺は納得した。


 あいつ、ここに来ていたのか──。


 175㎝位の長身、金髪の肩くらいまでかかったロングヘア。濃い目の化粧。ヒョウ柄のシャツにタンクトップの派手な服装。年は30代半ばくらいか。

 間違いない、ミュクシーだ。あいつも来ていたのか


 するとあいつもそれに気づいたのかこっちに視線を向け、目が合った状態になってしまう。


「あ、アグナムじゃないか」


「覚えていたのか……」


 頭を抱える俺。やっぱり知っているのか。


「あの人、知ってるの?」


 サナの質問に俺は頭を抱えながら言葉を返す。


「ああ、めっちゃくちゃ強い魔法少女だ。以上」


 あいつも相当な魔法少女だった。対戦でも相手の考えていることが、すべてわかるんじゃないかってくらい動きの読みに強くて、伝説になっていたほどだ。


 最強の魔法少女は? という問いにあいつが1番だと答えるやつは多い。

 確かマスケット銃型の武器を使っていたんだっけ。



「すいません。私達にも水着を売ってください」


 サナの意気揚々とした問いに、ミュクシーはカウンターの下から1枚の紙を取り出す。


「とりあえず、この値段だけどいいかい?」


「ええっ? これちょっと高いよ~~」


 俺も横からその紙を見てみる。金貨5枚? 俺たちの1週間分の稼ぎじゃないか!


「材料の都合上、その値段なんだ。だからお金持ちの富裕層しか買えなくてね」


 さすがのサナとレテフも腕を組んで悩んでしまう。そりゃいくら楽しそうでも、そんな高価なもの、おいそれと買うわけにもいかないしな……。


 するとミュクシーはにっこりと笑みを浮かべ、話しかける。


「しょうがないな。半額で売ってもいいが、条件がある」


「条件って何?」


 サナがその言葉に食いつく。


「もう少ししたら、ここで水着コンテストを行う。それに参加してほしい」

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