第80話 アルマンド・フルンゼ

「一緒にシャワー浴びない?」


「……えっ!!」


 その言葉に思わず顔を赤らめてしまう。


「青葉ちゃんハレンチすぎだよ!! 幸君もエッチな目線で見ない!!」


 するとイレーナは慌てて顔を膨らませ顔を赤らめて反論する。


「えっ、最初からそんなことしてないよ!!」


 手をあわあわと振って弁解する幸一。そして自分は最後にシャワーを浴びることを伝える。

 そして全員がシャワーを浴びると就寝時間となるのだが……。


 布団の配置はダブルベッドが二つという構成になっている。つまり──。


「幸君は誰と一緒のベットで寝たいの? 私?」


 青葉の問い詰める言葉に幸一は動揺しながら言葉を返す。


「ごめん、今日はイレーナと寝たい。明日に備えて少しでも魔力を回復したいからさ」


 その言葉に赤面するイレーナ。

 それでも少し魔力を消費してしまったのでイレーナの手を握りながら寝たいと言う意味で言ったのだが……。


「あっそっか~~幸君イレーナちゃんとベットで二人っきりがいいんだ~~ナニをするのかなぁ?」


 挑発じみた物言いとニヤニヤとした表情をする青葉。



「えええっ? 幸君そんなこと考えてたの? 最低!!」


「ご、誤解だよ! そんなこと考えてないって」


 握りこぶしをして反論するイレーナに幸一は動揺しながらも言い返す。


「いいのよ~~、私の体でその欲望を満たしちゃっても?」


 青葉が肩を寄せながら


「幸君駄目だよ、そんな欲望にまかせてHなことしたら絶対後悔するよ!! 私だってそんな簡単にそ、そ、そ、そんなことしたくないし!!」


 サラも完全に取り乱しあたふたする。旅の疲れもありもう言い争う気力もない幸一はうなだれながら一言。


「やめて、俺はそんなことしないし、じゃあ寝るから。イレーナ、手よろしくね」


 この後も青葉は強い交渉を行い結局三人一緒のベッドで寝る事となった。


 左にはイレーナ、右には青葉、サラは一人で隣のベッドに寝る事となった。問題になったのはその体制だったのだが。


(うぅ~~)


 二人とも幸一の腕に身体をぎゅっとくっつけて熟睡している。小さくてさらさらした肌の感触が幸一の理性を奪っていく。特にイレーナは胸が大きくその柔らかい感触が左腕にストレートに伝わってしまっている。

 さらに寝間着からは綺麗な白い肌と肌着を押し上げて主張する胸が見える。


 寝顔が無垢でかわいらしい寝顔。


 青葉はオレンジなどの柑橘系の、イレーナは甘いフローラルの香水の香りがしてそれが鼻腔を刺激する。

 赤面しドキドキしながら何とか寝付こうとする幸一。だがその色気に背徳的な興奮を覚えてしまう。


(どうしよう──)


 あまりのドキドキに結局幸一はあまり寝付くことができなかった。












 朝。


 少しばかり寝不足で目をこすりながら幸一は起きる。


 トーストとミルクティー、サラダの食事をゆっくりと食べ終えると、早速行動を開始した。


 外へ出て移動を開始する幸一達。

 長引く内乱の影響で建物は薄汚れていて浮浪者の人が所々道端に座り込んでいる。


 しかし愚痴を言ってばかりではいられない。

 どんな状況でも少しずつ、一歩ずつ変えていく


 幸一達がここに来る前の移動中、青葉がこれから会う人物ついて会話をしていた。


「アルマンドさんね、子供のころは外国で留学していたというのよ」


 アルマンド・フルンゼとはこれから幸一達がこれから交渉事をしようとしている人物のことである。

 実質的な国家元首で軍部の親玉のクラスノフ・フルンゼの息子であり、父親から防衛大臣に任命されている人物である。

 彼は幼少のころは軍人としてエリート教育を行うため国外へ留学経験があることもわかっている。そして最近青葉と面会の経験もある。



 そして彼が留学した国は複数ありその国はどれも政情が安定していてまともに国家機能が機能しているところばかりであった。


「彼なら話が通じるかもしれないってことか?」


「ええそうよ、おまけにここのトップのクラスノフの息子。私たちが直接言っても反発されるかもしれない。けど息子が言うならいくらかは受け入れてくれる可能性があるわ、」


 これから行うのは軍部への根回しである。根回しと言うと悪いイメージがあるかもしれない。

 しかしいくらこっちが正しいと言っても相手に対してただ正論を押しつければいいというものではない。相手も人間であり変に感情的になってこじらせることになると解決は難しくなってしまう。

 出来るだけ魔獣たちと戦う際余計な混乱を生みたくはない。冒険者達が戦っている時に足を引っ張るようなまねはしたくはない。


 まずは相手の立場を考えどうすればうまくいくかを考えなければならない。そういった相手への根回しは青葉が今までやってきた事でもあって得意技でもあった。


「私は今までこういうことはやってきたわ、一緒に共同作業しましょ!!」


 ウィンクしながら青葉が自信満々に言葉を返す。サラと幸一はそれに安堵する。イレーナはどこか不機嫌な態度をとっていた。



 歩いて30分するとその場所に到着する。



 さびれた街、その中で比較的豪華で衰えを感じさせない建物。そこが今回幸一達が向かう場所であった。


 門に近づく。すると門番の兵士に政府からの使者であるという紙を見せる。兵士はその紙をよく見て彼らの事を理解する。


「んで、俺には何をくれるのかい? 状況次第ではあんたをこの施設に入れないという判断を下してもいいんだがね~~」


 ニヤニヤと邪険な笑みを浮かべながらその門番は言い放つ。


 不当にわいろを要求し渡さなければ要求をのまないという統制が効かない無法地帯ではよくある事態だ。



「ちょっと、ひどいよ」


 憤慨してプンスカ起こるイレーナ。すると幸一が落ち着くよう促す。


「まかせて、こういうことは俺がやる」


 そう言って幸一が前に出て兵士に話しかける。


「わかりました、それではとっておきの物を用意しますよ──」



 不自然なまでのにっこりとした笑顔、やけに優しい物言い、青葉が彼の作戦を察して苦笑いをする。


(まっ、話が通じない奴には多少は仕方がないわね……)


「わかりました、ではいいアイデアがあります。ちょっといいですか──」


 そう囁き幸一は兵士に急接近、そして──。



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