第205話 さてと、攻略を進めますよ。

前回のあらすじ:ウナギの蒲焼き最高。



 テシテシ、テシテシ、ポンポン。おはようございます! さぁ、今日も張り切って参りますよ! マーブル達もいつも以上に元気いっぱいです。流石はウナギの蒲焼きと思いましたね。って、これじゃあ、匂い消してもバレるって、、、。・・・っと我に返って平常運転に戻りましたよ。


 顔を洗ってサッパリしてから朝食の支度をしております。しておりますが、何故かお客さんが6人ほど、ええ、いつもの食いしん坊のメンバーです。怪訝な顔をしながらアンジェリカさんが聞いてくるわけですよ。


「アイスさん? アイスさんもそうですが、マーブルちゃん達も心なしかいつも以上に色つやがいいと思うのは気のせいですの?」


「・・・ええ、気のせいです。もしかしたら、水脈の目処が付きそうなので、それで心なしかテンションが上がっているのかもしれませんね。」


「アイスさん、、、。ええ、まぁ、いいでしょう、、、。今はそういうことにしておきましょう。」


 納得しているような納得していないようなそんな表情で私達を見ているお客様達、、、。ひょっとして、もうバレている!? いや、そんなことは無いだろう、、、。ねぐらで調理したから匂いとかそういったものはしっかりと証拠隠滅してきたはずなのに、まさか、体の色つやで判断されるとは、マジで盲点だった。


「そういえばフロスト侯爵、水源については目処がつきそうなのか?」


「はい。地下十六階層から水路が見つかりましたし、その水路はしっかりと水が流れておりますが、下に降りれば降りるほどその水量は多くなってきております。その分魔物も強くなってきてはいますので、そのうち最下層、あるいはダンジョンマスターにも辿り着けるでしょう。」


「そうか。流石は侯爵ですな。予想以上に早い。こちらの工事が間に合わなくなるかもしれんな、、、。」


「水を汲み上げる魔導具がまだですので、そこまで慌てることはないかと。」


「そういえば、そっちも必要だったな。とはいえ、それほどその魔導具は作成が難航しているのか?」


「いえ、作成は短期間で可能かと思われますが、現地でどうなっているのかを確認する必要があるとラヒラスは言っていましたね。」


「なるほど、確かにダンジョンだからな。できるだけ対応できるようにする必要があるか。」


「そういうことです。ところで、森の異常について何か進展がありましたか?」


 森の異常が気になったのでそれを聞いてみると、リトン公爵ではなくアンジェリカさんが代わって答えてくれた。


「今のところはオークなどの食べられる魔物が多少減少している程度ですわ。ただ、、、。」


「ただ、どうしました?」


「減った分ですが、ゴブリンが増えてきておりますの。しかも何か心なしか通常のゴブリンよりも黒い感じがするのです。本当に誤差でしかありませんが、、、。」


「心なしか黒い、ですか、、、。そういった直感は非常に大事だと思います。カムドさんとかのゴブリン族の人に伝えておいた方がいいかもしれませんね。」


「そう思って、カムド様に伝えてありますわ。」


「そうでしたか、流石です。今後も多少の違和感を感じましたら、しっかりと報告をしておいてください。被害が出るよりも徒労に終わってくれたほうが断然いいので。」


 と、こんな感じで話をしながらも朝食自体は和気あいあいとしたものだった。ちなみに今日の朝食だけど、定番の押し麦ご飯とワイルドボアを薄く切ったものを使った目玉焼きに味噌汁である。ワイルドボアは昨日ねぐらから持ってきたやつである。フロスト領には在庫無いからね、、、。しばらくオーク肉ばっかりだったから、久しぶりに食べたくなったのである。ってか、ワイルドボアってこの森だとあまり獲れないからねぇ。


 6人のお客さんが領主館を送り出したので、私はこれから帝都のダンジョンへと赴く。今日は地下十七階の下り階段からスタートである。戻ってモートイールを狩ろうかとも思ったけど、先に進むことにした。まずは攻略を優先させたい。


 地下十八階に下りたが、やはりここもそれほど変わることはなかったが、川幅は広がっており、心なしかさらに深くなっている気がする。探知範囲を絞りに絞って川を探知にかけると、深くなっているのは気のせいではなかった。広くて深くなっている、ということは、さらに大型の水生の魔物が出てくるということである。


 とはいえ、やることは変わらないので、下り階段を目指すことにする。ここのダンジョンは幸いなことにそれほど分かれ道はない。全く無いわけではないけど、少ないのはありがたい。いや、正解のルートを探るだけであれば、マーブル達がどうにかしてくれるけど、今回は調査も加わっているから基本は虱潰しとなっている、とはいえ、地下十一階以降は一本道なんだけどね。その分魔物との戦闘を余儀なくされるけど。


 ここの階層も一本道であり、途中で部屋みたいな場所に魔物が控えている形だ。たまに通路でも遭遇するけど、ライムの光魔法で勝手に劣化魔石に変化しているので戦っていないも同然である。しかもその劣化魔石が小さいこと小さいこと。おかげで劣化魔石とか気付かずにスルーしているものも結構あると思う。まぁ部屋に出現する魔物が強いらしく、普通に魔石が手に入ることもあるし、仮に劣化魔石だとしても「大」とかであるので、「微」とかのサイズはスルーしても問題無い。


 ちなみに、ここで出現した魔物だけど、予想ではモートイールが更に大きくなったものを中心とした編成と思っていたのだけど、大きく裏切られました。ってか、こんなのアリ? とか思いましたよ、ええ。ということで、その紹介をば。


 まずは、ウォーターゾンビです。よく言う「土左衛門」という奴です。幸いなことに上層部のゾンビとは異なり匂いがありません。水分無くしたらどうなるかわからないけどね。もちろんそんなことする度胸は全く無いです。


 次はウォーターウルフ。水を纏ったウルフ種です。水だから火に強いのかな? といった程度で基本はウルフでございます。


 その次は、ジャイアントバス。バスはもちろん乗り物のバスではなく、釣ったりするあのバスの方です。


 紹介が簡単だったのは、それほど苦労することなく倒すことができたのと、何より食べられません。もちろん鑑定でも食えないだの食えないこともない、かも、とかそんな結果です。私だってゾンビとか食べたくないですよ、ええ。


 かろうじて食べられそうなのがバスですかね。ただ、それ以前にこいつら倒しても肉とか食べられる物は一切出てこなかったね。ジャイアントバスなんかは、モートイールみたいに、魚で何匹か出てくるかな、とか思ったけど、それすら無かったしね。あ、魔石は落としましたよ、劣化だけどな!


 今紹介したのは、いわゆる雑魚ってやつで、もちろん大物もいた。大物も何種類かいたのでついでに紹介しておく。先に言っておくと、手に入ったのは魔石「中」だった。同じ魔石「中」でも結構大きさにばらつきがあるんだと今回の件で理解した。


 最初の大物はエルダースケルトンとかいう巨大なホネホネさんであった。デカい上に川の領域が広がっているこの階層では1体しか現れなかった。狭いので速さで翻弄する戦術が採れないけど、そもそも私は速さで翻弄するタイプの戦い方ではないので、普通に肉弾戦である。ローキックで足を潰して体勢を崩したところで頭部、ならびに胸部を破壊して終了。残念ながらこいつ相手にマーブル達の出番はなかった。


 次の大物はジャイアントゾンビだ。流石にゾンビなだけあって非常に匂いがキツかったので、マーブルの火魔法で燃やし尽くした上に、匂いを充満させないように風魔法で私達を覆って呼吸を確保しての勝利。このレベルのゾンビとなると自己回復を持っているらしいけど、マーブルの火魔法がそれを上回っていただけの話である。


 続いての大物はウォーターゴーレムだ。水でできているので、攻撃が通りづらい上、火はもちろん、蒸留水でできているみたいで、電撃が効かないやっかいな相手だ。普通ならばね。ライムが対応して水を吸収しまくり、あっさりと終了。コロンと核が落ちたと思ったらボンッと魔石「中」が現れていた。結構シュールだったよ、、、。


 最後の大物だけど、ジャングルケルプという何だか矛盾したような名前の魔物だったよ。ケルプという名が示すとおり、海藻の魔物だったよ。ってか、ここって川じゃなかったっけ? 何で川に海藻がいるのか全く理解できないけど、これがダンジョンというものなのだろう。海藻の魔物らしく、四方八方から蔓が飛んできて巻き付こうとしてきたみたいだけど、ジェミニがそれらを通常作業のごとく切り裂いていき、何かツブツブが密集している感じのものが出てきた。恐らくそれが本体かな? その本体をあっさりと切り裂いてこいつも終了。海藻の化け物だったけど、ここでは魔石しかドロップしなかった。・・・チッ、しけてやがんな。


 こんな感じで進んでいき、地下十九階に到達。地下十九階については、地下十八階とあまり変化はなく、川の割合が増えていた程度で、魔物についても雑魚敵こそ数が増えていたけど、大物については相変わらずだったので、サクッと倒して進んで行った。


 道中についても、何か有用なものが存在するわけでもなく、宝箱すら存在しない、そんな感じのダンジョンであった。まぁ、魔石がメインだろうから仕方ないのか。唯一といってもいい収穫はウナギであるけど、あれだって、しっかりと捌かないと美味しくないしねぇ、、、。


 ウナギを知っていた私ならともかく、私達以外の探索者だと国単位でなければそれほど旨味がないダンジョンともいえる。魔石だって、上層部は劣化魔石だから、合成して魔石にする技術が無ければ、ただのアンデッドがはびこる嫌がらせのダンジョンでしかないしね。まともな魔石が手に入りそうな階層へは、フロストの町の住人ならともかく、上位ランク冒険者が私と戦姫の3人しかいないこの国の冒険者では厳しいだろうな。


 魔物を倒しーの、マッピングしーので地下十九階も踏破完了し、地下二十階へ到着。地下二十階では雰囲気がガラッと変わったものとなっていた。迷宮ではなく、どこかの教会の一室といった感じである。


 ちなみにフロストの町にあるアマデウス教会では、こんな小洒落た空間は存在しない、というか必要がないので作っていない。あそこはアマデウス教会と銘打ってはあるけど、基本どの宗教を信じていても問題無く利用できるようにしてあるので、特定の宗教が影響するような物は極力作りたくなかったからだ。


 はい、嘘言いました、本当は面倒だから作りたくなかったのです。あの建物でも作りはしっかりしているし、何よりアマさん本人がそれでいいとおっしゃっているのだから全く問題は無い。あ、話は少し逸れるけど、トリトン陛下が「俺を信奉してくれている者が1人もいない」と愚痴っていたことがあったけど、アンタ、私達以外では神って知られてないからね。それ以前に、ここ海ないじゃん、、、。海の存在を知らない住民だっているんだよ? それをどうやって信奉させろというのだろうか、、、。


 素直に自分が神だって言ってしまう? ・・・多分誰も信じてくれないだろうなぁ、、、。恐らく住民からは食いしん坊のおっさん程度にしか思われてないだろうし、多分本人もそんな扱いに満足しているみたいだしなぁ、、、。この前なんか、屋台のおっちゃん達と肩を組んで飲み歩いていたし、、、。


 さて、気を取り直して地下二十階を進む。まぁ、進むと言っても教会みたいな部屋の先に何かもったいつけた感じに扉があった。恐らくボス部屋なんだろうな。時間的には昼食を少し過ぎた辺りかな。食べられるものが手に入らなかった上に一本道だったからもの凄くサクサク進んだんだよね。ここで取るべき行動は2つほどあるから多数決かな。もちろんマーブル達のね。私の意見? そんなものはありません。可愛いうちの猫(こ)達の意見が最優先ですよ。


「みなさん、お疲れ様でした。恐らくこの先にボスがいると思います。そこで私達の取るべき行動は2つあります。」


「ミャア!」


「ですね、マーブル殿。アイスさん! 食事前にボスを倒すか、食事後にボスを倒すかですね?」


「流石君達、わかっていらっしゃるね。というわけでそれぞれ意見を聞きたいと思いますが。」


「ミャア!」


 なるほど、マーブルはボスを倒した後ね。ジェミニとライムはどうかな?


「私もボスを倒した後ですね。」


「てきをたおしてからごはんー!」


「3:0でボスを倒した後に昼食、と。了解。では、ボスを倒しに行きましょうか。」


 満場一致でボスを倒した後に昼食を摂ることが決まった。ちなみに、私もボスを倒してから昼食を摂る方の意見でした。2択とはいえ、同じ気持ちだったのは嬉しいね。まぁ、先に食べたいと言ったのならそれに従ったのは言うまでもないだろう。


 ボス部屋に突入する、ということで、マーブル達が私の定位置に乗ってきた。うん、左右をモフモフに挟まれ、頭はヒンヤリというある種の極楽状態になりつつもボス部屋の扉を開ける。ちなみに、ボス前で私の定位置に乗るのは、入場制限があると困るから。触れた途端に離ればなれになるのは勘弁してもらいたい。身の安全ではなく、純粋にマーブル達と離れる、ということを防ぐためだ。


 さっさと倒してご飯にしよう、ということで、特にそれ以外の気持ちも出ずに淡々と扉を開けて部屋の中に入る。


 部屋の中は巨大なプールのようになっていた。大きさ的には25メートルプールといったところか。以前いた世界と違ったのは、25メートルの正方形となっていることくらいで、他は普通にプールサイドという名の足場もあった。あ、消毒層とシャワーがなかったな。まぁ実際にはプールじゃないからね。


 さて、水はどうなっているかというと、何か暗ぼったい感じかな、ただ単に汚れているのか、プール内を照らすほど明るくないのか、その辺はわからないけど、水の中は見えない感じであった。かろうじて見えたのがプール内を泳ぐ魚のシルエットだった。


 見た感じだと、大きいのが1つ、小さい、いや、あの大きいのがいるから小さく見えるだけで、小さいのも結構デカいな。でも面倒だから小さいので統一しておく。その小さいのが無数にいる感じだね。となると、あの大きいのがボスかな? いや、あの大きいのはボスに見えるだけで実際には小さい奴の1つがボスかもしれない。まぁ、その辺はいいか、どうせ全部倒すし。


 さて、戦闘準備は整えたものの、プールからは一向にこちらを攻撃してくる気配がなかった。まさか、こちらから攻撃しないと対応しないやつ? だとしたら面倒だな、、、。

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