第199話 さてと、今日はひたすら燃やして砕くだけの作業です。

前回のあらすじ:危うく大惨事になるところでした。



 地下十階において、ホネホネさん(中位、食べられない)をグダグダになりながらも倒して、その先にある地下十一階への下り階段を降りた。


 このダンジョンでは基本五階層毎に魔物の種類が変わっているようだから、恐らくこの階層から別の魔物が増えるのだろう。ゾンビやグールとはおさらばしたい今日この頃である。まさかあそこまで匂いがきついとは思わなかったのだ。


 地下十一階に到達した。降りた感想だけど、一言で言うと「広い」、これだけです。今までの階層だと、通路があってそこを進んでいく感じだったけど、ここでは降りた途端めちゃくちゃ広い空間が広がっていた。どの位広いかというと、フロストの町にあるアマデウス教会の大会議室と同じ位広いのである。


 話は逸れるけど、あの大会議室は実を言うと、トリトン帝国の帝都にある宮殿の謁見の間よりも広い。現時点では、トリトン帝国においては大会議室より広い場所は、フロストの町にある訓練所や酒蔵くらいのものである。ってか、何故帝都を差し置いてフロストの町に一番広い場所が存在しているのか不思議である。まぁ、フロストの町って本当に何もないところから作り上げた町であるから、好きに拡げられるというのもあるんだよね。実際、規模を拡げやすいように城壁とか作ってないし、、、。防衛上おかしいけど、それは戦力でカバーしている、というより過剰戦力でカバーできているようなものだ。


 ちなみに、天井については、こっちの方が高いので、厳密には大会議室より広いということになるけどね。とにかくこの部屋の広さを見て、マーブル達は一瞬唖然としたけど、3人でうなずき合ったと思ったら、周りを走り出していた。一瞬であんなに遠くまで、、、。なるほど、普段はかなり加減をしていたんだね、それでここぞとばかりに思いっきり走り回ろう、と、そういう訳なんだね。


 では、私は少しのんびりさせてもらいますかね。速すぎて目で追うのが精一杯だし、マーブル達が凄いのは横だけではなく縦でも思う存分その広さを堪能していることである。だから余計に目で追うだけしかできないのだ。一々首を動かしていたら、こっちの首がおかしくなってしまう、、、。


 まだ終わりそうもないが、楽しそうにしているのに水を差すのもどうかと思い、目で追うのもやめて、自分の作業を行うことにした。私がやることといえば、料理関係になってしまうけどね。今からやろうとしているのは、オーガジャーキーをもう少し簡単にできないか、ということである。というのも、オーガジャーキーは完成までに丸一日という時間がかかってしまうのだ。ジャーキーを作るのに大切なのはしっかりと乾燥させることなんだけど、今回は、その乾燥させる作業を思いっきり時短しようという試みだ。


 ということで、これから行うのは、オーガの肉を水術で水分を取り去ってカラカラにし、それをタレに漬け込んで、タレに馴染んだら、また水術で水分を取り去る作業である。まぁ、これはあくまで試作だから、少量で十分だろう。最低限私もそうだけど、マーブル達も味見できる程度の量かな。水術で作業するからもちろん大量に作ることは可能だけど、仮に美味しくなかったら嫌だから。上手くできてから大量生産すれば良いだけの話だしね。


 ジャーキー用に細長く切った肉を数本取りだし、水術で水分を取り去りカピカピにする。うん、良い感じである。次は、漬けダレを用意してその中に先程のカピカピオーガ肉を放り込んで待つことしばし。一応数分ごとに引き上げて様子を見てみるが、最初の5分こそもの凄い勢いで漬けダレを吸っていたようだけど、何か違う感じがしたので、一旦戻す。次の5分では最初ほど吸ってはいなかったけど、少しは吸っていることがわかったので、どれだけ吸うかを確認するため戻し。


 それを繰り返すこと数回、とりあえずこんな感じでということで、一旦取り出すが、漬けダレをダンジョンに落とさないように漬けダレの真上で作業をすることにした。だって、漬けダレって結構作るの苦労したから勿体ないんだよね。こういうところはケチっていかないと。


 漬け込んだオーガ肉を乾燥させてみると、見た目は良い感じでオーガジャーキーだった。お、これはいけるのでは? と思って試しに囓ってみた。・・・結果は散々であった、、、。ということで、大失敗に終わった今回だけど、原因は漬けダレを吸い込ませすぎた点にあると思う。基本、オーガジャーキーに限らず、その他の肉で作ったジャーキーにしても、漬けダレの味がメインであることは間違いないのだけど、これは漬けダレの味そのもの、いや、カル○スで例えると、原液そのままを口にするようなものであったのだ。


 これ、どうしようかな、、、。捨てるのは肉となってくれたオーガや、漬けダレの材料となった者達に申し訳が立たないから却下。では、料理に使うのは? これも厳しい。というのも、ジャーキーの漬けダレはそれ自体で独立しており、その他と合わせて使うのはあまりオススメできない。塩漬け肉ならともかく、いろんなものを混ぜて作り上げたタレであるので、味に融通が利かないのである。・・・仕方がない、後日ジャーキーを食べるときにふりかけとして使いますかね。


 多少ションボリしていたところで、マーブル達が戻ってきた。思いっきり遊べたようで何よりです。満足そうにしていたマーブル達を見て、何とか気を持ち直した私だった。マーブル達に何をしていたか聞かれたので、ジャーキーの時短ができないか試してみたが失敗したと言うと、そのジャーキーの味がどうなったか気になると言うことだったので、正直、こんな失敗作を食べさせるのは嫌であったが、仕方なく食べさせることにした。ついでに細かく切ってもらいますかね。


 食べてもらう前に細かくしてもらい、その細かくした1欠片をそれぞれ渡したのだけど、あまりの少なさに多少ガッカリしていたようだけど、口に含んでからは、私がそれっぽっちしか渡さなかった意味を理解したようだ。


「ミャ、ミャァ、、、。」


「アイスさん、、、。渡されたのが少ないと少し不満に思ったですが、その意味がわかりましたです。」


 そう言った後、私に飛びついてきたので、思う存分モフって心のダメージを回復させていた時に、気配探知から魔物と思われる反応を確認した。この空間が広い理由を改めて知った気がする。いや、何となくそうなんじゃないかなとは思っていたけど。数は、と、15くらいか。足取り的には、ホネホネさんとゾンビタイプのやつが、デカいホネホネさんはともかく、デカいゾンビはマジ勘弁してくれ、、、。


「みんな、魔物がこちらに近づいています。数は15ですが、内訳はわかりませんが、ホネホネタイプとゾンビタイプがいますね。流石に巨大種だからゾンビタイプは少なそうだけどね。ということで、ゾンビタイプはマーブルに任せます。」


「ミャア!!」


「ジェミニとライムはホネホネさんだね。それでは張り切って参りましょう。」


「了解です!」「やるぞー!」


 マーブル達は敬礼して戦闘態勢に入った。私も戦闘準備にはいる。オニジョロウを右手に持って、左手には矢を水術で作り出したけど、今回は貫く、というよりも破壊することを優先したため、鋭さよりも衝撃を重視したもののしてある。


 魔物の気配が近づいてきたので、鑑定をかけてみると、ホネホネの方は「ボーンラプトル」となっており、ゾンビの方は「ラプトルゾンビ」と出ていた。出ていた、というのは、食べられないことにより、アマさんが投げやりな鑑定結果を出したからである。こちらとしても食べられないのであれば、いい加減な鑑定で構わないと最近は思うようになった。


 アンデッドのラプトル集団が部屋に入ってくると、一旦止まって周りを確認している。しばらく探っていたようだったが、ようやくこちらに気付いたらしく、こちらに向かって来た。先頭にいたのはゾンビタイプのやつであったが、予想以上に速く動いたのは少しビックリした。


 そのゾンビラプトル達は、ある程度の距離まで近づいてきたと思ったら、一斉に口を大きく開けた。これは間違いなくブレスである。多分毒ガスか酸のどっちかだろうな。言うまでもなくブレスを吐くまで待つほどこちらもお人好しではないぞ、と。マーブルが「ミャッ!!」と可愛い声を出すと、火がいくつか出てきて、それぞれのゾンビラプトルの口の中に入り込み、その1秒後にはそれぞれ爆発していた。まさしく汚い花火以外の何者でもなかった。


 また、その爆発に巻き込まれて2体ほどホネホネラプトルがバラバラになったあと、何かを落とした。


 さて、残りは9体か。ということは3体ずつだね、ということで私達も攻撃開始。顔を一気に潰すのもつまらないので、先程の八つ当たりではないけど、ムシャクシャしているのも事実だから、ということで、足などの機動力を潰してから各場所を潰していき、最後に頭を潰して終了、という形にもっていった。


 いつもの矢であれば、しっかり狙わないと当たらないけど、今回は潰すのが目的だから、鏃ではなく氷の塊をそのまま棒に突き刺したような形をした矢を作り出して、それを放っていた。私の弓は和弓タイプだから長射程が可能だけど、基本長距離では投擲を使っているので、弓矢は大抵近距離か、2、30mくらいの中距離で放っているため、その分威力が増している上に氷の塊だから、面白いように潰れていく。


 ちなみに、ジェミニも後ろ足を使って潰しまくっていた。ライムはというと、魔法すら使わずに自分の体を硬化させて体当たりで破壊しまくっていた。


 こんな感じであっさりと殲滅完了して、この集団からはホネホネタイプからは劣化魔石が、ゾンビタイプからは魔石が落ちていたのでサクッと回収、先へと足を進めた。


 広い空間を出ると、次の部屋はというと、これまた同じように広い空間であった。今度は魔物達が待ち受けていたようで、私達が部屋に入ると襲ってきたが、魔物の内訳は変わらなかったので、先程と同じような感じで殲滅、回収という流れで完了。さぁ、次だ次。


 先に進んでいくと、同じような感じだったので、やはり同じように倒して回収して進んで行き、ようやく下り階段を見つけたので、さっさと降りて地下十二階へ。


 地下十二階は地下十一階と同じような感じだったが、魔物に関しては同じ種類だった。いや、もちろん地下十一階に比べると一回りくらい大きくなっていたので、恐らくその分強くなっているのだろうが、全く問題にならずに倒していった。やはりドロップ品は劣化魔石がメインだったけど。


 地下十二階だけでなく、十三階、十四階と進んで行ったが、ただ大きくなるだけで大して強くは無い相手だったので、倒しては魔石類を集めるという退屈な作業に没頭する形となってしまった。多少飽きてきたし、そろそろいい時間になってきているということで、今日は地下十五階のボスを倒してフロストの町へと戻ることにした。


 やはり地下十五階はボスの出現する感じの階層となっていた。どうせボスはまたホネホネさんなんだろうと9割方諦めが入っていた。残りの1割はというと、今度のホネホネさんは( )内にどんな言葉が入っているのが少し気になっていたことだ。


 さて、どんなホネホネさんかな、と思いながらボス部屋に入ると、確かにホネホネさんではあったが、今までのホネホネさんは、人型だ。しかし、今回は空を飛んでいるホネホネさんであったのだ。しかもデカかったので、恐竜タイプのホネホネさんか!? とか思って鑑定をかける。


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「スカルワイバーン」・・・ワイバーンのスケルトンタイプじゃ。空を飛んでいる分攻撃は当てづらいが、生きているやつと比べると耐久力は弱いから、少しは倒しやすいと思うぞい。あ、もし可能であれば、光魔法を使わずに物理で倒してみると面白いかもしれんぞい。

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 ほう、今回は解説付き、しかも物理で倒せとあるな。これは試してみる価値がありそうだな。


「みなさん、こいつらはワイバーンのホネホネタイプです。アマさんが物理で倒してみろと言っているので試してみたいと思います。ということで、マーブル隊員は私と一緒にあのホネホネさんを撃ち落とす任務です。ジェミニ隊員とライム隊員は撃ち落としたホネホネさんのトドメをさす任務をお願いします。」


 3人の了解を示す可愛らしい敬礼の返事をもらい戦闘開始です。


 ホネホネのワイバーンはしばらく上空を漂っていたけど、私達が前に進むと一斉に襲いかかってきた。数は10ちょいといったところかな。私は矢を爆破タイプのものに切り替えて射撃していく。もちろん翼の部分を狙う。下手に肉が付いているより狙いやすいのは嬉しい誤算だった。襲いかかってくるワイバーンに対してカウンター気味に矢を当てていくと、これまた面白いように撃ち落とされていくワイバーン達。


 マーブルはというと、こちらに近づかずに様子を見ているワイバーンを狙って風魔法を放っていく。マーブルのエグいところは、風魔法に闇魔法を紛れ込ませて見えないように放っているところだ。そのせいで様子見のワイバーン達はどこから攻撃を受けたのかを理解することなく次々と撃ち落とされていった。


 ワイバーンの落ちた先にはさらなる地獄が待ち受けていた。そう、殲滅部隊のジェミニとライムである。次々と頭部を破壊されて消滅していくワイバーン達。ここでも大した苦労をすることなくボスの討伐が完了した。


 さぁ、アマさん、物理で仕留めましたよ、何ですかね、面白いことって。


 ワイバーン達が倒された跡には、魔石と骨の塊が残されていた。面白いものって、この骨のことなのだろうか? これって面白いのか!? そんなことを思いつつ鑑定してみる。


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「スカルワイバーンの骨」・・・おお、しっかりと物理で倒したようじゃな。骨ということで少しガッカリしたかもしれんが、実は、この骨、美味い出汁が採れるんじゃよ。試しにこれを煮込んでみるとよい。

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 ・・・なるほど、出汁として煮込め、そして、完成品をよこせ! ということですね、わかります。


 このことをマーブル達に伝えると、マーブル達は大喜び。早く戻って夕食にしようとせっつかれてしまった。まぁ、嬉しそうなのはいいことだし、ここまで期待されているのであればそれに応えるのも親の仕事でしょう。


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アンジェリーナ「!!」

セイラ「王女殿下、どうされました!?」

アンジェリーナ「いえ、なんでもありませんわ、ただ、、、。」

セイラ「ただ、何でしょうか?」

アンジェリーナ「今日の夕食は、アイスさんと一緒のほうが良さそうな気がしますわ。」

セイラ「・・・そうですか、料理長にその旨伝えておきます。」

アンジェリーナ「ええ、頼みましたわよ。」


ルカ「・・・王女殿下、最近、トリトン陛下に似てきた気がする、、、。」

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